20話〜オルフェの眼力

 ここはシャインスプラウト城。あれからガルド達は街中を見て歩きながら城へと辿りついていた。


 そして城の中に入ると、ガルド達は既に用意されていた部屋へと案内され待機していた。


「……ブラット、今の内にお前に言っておきたい事がある。」


「ん?親父改まってどうしたんだ。」


「ここにくる前に、ハングには話しておいたんだが。お前にも話しておいた方がいいだろう。」


 そう言うとガルドはこの後オルフェと会いその時の行動を指示した。


「……ふ〜ん、そっか。よくは分からないけど、親父がそうした方がいいって言うならそうする。」


「ガルド様、なるほど。私は何となくですが、分かった様な気がします。」


「私は余り良いとは思えませんが。でも、相手の動きや思惑を知るにはその方がいいかもしれませんね。」


「……俺は何となく嫌なんだけどな。でも、本当にそう上手くいくのか?」


「フッ、大丈夫だろう。向こうは顔を知らねぇ。ましてやブラットは何故か俺に似てねぇ。多分カトレアの家系に似たんだと思うんだがな。それに騙す訳じゃねぇしな。」


 ガルドがそう言うとブラット達は頷きある程度の口裏を合わせどう対応するかを話した。



 一方オルフェは、到着したと聞き準備を整えると、侍女を呼びガルド達を謁見の間に連れてくる様に言い、クラウドと共に謁見の間に向かった。



 そしてここは謁見の間。ガルド達はその後、侍女が呼びにきてここに案内された。


 ガルド達はオルフェが来るのを待っていた。するとクラウドと共にオルフェが謁見の間に入ってきた。


 そして、オルフェは玉座に座り、クラウドは玉座の左側に立ちガルド達をみた。


「私はクラウド=スタイン。この城の大臣を務めております。」


(なるほど。恐らくあの方がブラット様……。)


 オルフェはガルド達を見渡した後、


「私がこの国の王、オルフェ=P=ホルスだ。皆よく来てくれた。」


「お久しぶりでございます。元気そうで何よりです。」


「うむ、レオルドお前も元気そうで何より。」


「……私はフェリアと申します。」


「なるほどフェリアか、これは稀に見ぬ美しさ。ガルドお前の新しい彼女か?」


「オルフェ……お前なぁ。どう見たらそう見える?てか、ノリが軽いのは相変わらずみてぇだな。」


「そういうお前は、相変わらずガサツだな。どうにかならないのか、その話し方は?」


「はぁ?何でお前に、そんな事を言われなきゃならねぇんだ!」


「それはこっちのセリフだ!初めに言ってきたのはガルドの方だ!」


 いきなりオルフェとガルドのくだらない言い合いが始まり、ブラット達とクラウドはどうしていいか分からなくなってしまった。


 そしてブラットはその様子を見ていて、このままでは話が前に進まないのではと思い話し掛けた。


「……あの〜、2人とも仲が悪いのは分かったけど。今、喧嘩してたら話が前に進まないんじゃないのかな。」


「確かにお前の言う通りそうかもしれねぇな。」


「……うむ、確かにそうかもしれんな。」


(うむ、そういえば後の2人の名を聞いてはいなかったが、どちらがブラットなのだ?ガルドの子供であるなら似ている方だと思うが。ただ何故か分からんのだが、今発言した者の方が気になる。この中で浮いているせいなのか?いや、何か分からんが今の発言は何気ない言葉だった。だが、何故かその言葉を納得してしまった。この者はいったい?)


「貴方は面白い方ですね。ガルド様やオルフェ様の喧嘩をあっさりとお止めになるとは。」


(この者はいったい?まさかとは思うが、こっちがブラット様……いや、しかし。ん?そういえば、どうして2人ともに名乗らない?)


「ん?そうかなぁ。」


 そう言うとブラットは微笑んだ。


「それはそうと、そちらの方と貴方の名を聞いていませんが?」


「クラウド、余程ブラットがどっちか気になる様だな。まぁ言っておくがどっちも俺のガキだがな。」


「なるほど。どちらもガルド様のお子様なのですね。」


「ガルド、そういう事か。わざわざ2人連れて来たという事は、私の目を欺こうとしていた訳だな。だが、悪いが私は馬鹿ではないつもりだ。まぁ、危うく騙されそうにはなったがな。」


「オルフェ。フッ、本当に分かったのか?ならどっちがブラットだ?」


「オルフェ様。本当にお分かりになったのですか?」


「ああ、クラウド。お前は気付かなかったのか?」


「何をでしょうか?」


「私は気付いたがな。何故、私が気付いたか。それを言う前にいくつか皆に質問したい。」


「オルフェ、何を考えている?」


「ガルド、大した質問じゃない。何故私が気付いたか……まぁそこに答えがある、それだけだ。」


 オルフェは少し間をおき、


「では皆に聞くが。側に困っている者がいたとする。だが、自分は急ぎの用があり行かねばならない。皆はどちらを優先する?」


「そうですね。優先するのであるならば、困っている者を助けるのが普通だと思いますが。」


「確かにレオルドの言う通り、私もそう思いますが。」


 フェリアがそう言うと、ハングは少し考えた後、


「俺も2人の意見と同じだけど。」


 そう言うとブラットは少し首を傾げ、


「ん〜、そうだなぁ。俺だったらどっちを優先するかなぁ。確かに困っている人を見過ごす事は出来ないと思うけど。自分の急ぎの用が重要な事だったら、多分俺はそっちを優先すると思う。」


 ブラットのその発言を聞きオルフェは確信し下を向きニヤッと笑った。


「オルフェ。何を考えているか分からねぇが。俺ならどちらも優先するつもりはねぇ。まぁ言える事は、どちらもその場にいねぇと分らねぇって事だ。」


「なるほど。クラウド、今の皆の発言を聞きお前はどう思った?」


「オルフェ様。そういう事なのですね。私も今ので確信いたしました。どちらがブラット様なのかを。」


「それじゃ、どっちがブラットなんだ?」


「ガルド。勿論お前に似ていない黒髪の子の方だが、違ったかな?」


「……はぁ、よく分かったな。だが、何故分かった?」


「だから、先程も言ったが。ガルドお前は気付かなかったのか?ブラットが言った言葉を、自分の子供なら分かってもいいはずだがな。」


「なるほどそういう事か。確かにブラットはちゃんと筋道を通して理由を述べた。だが、ハングの方はそれをしなかった。そういう事か?」


「ああ、そういう事だ。だが、それだけではないがな。先程お前と私の喧嘩を止めたのはブラットだけだった。他の者はそれをしようとしなかった。」


(流石は親子。顔は似てはいないが性格は似ている。それに王の器であるならば、質問に対しそれなりの対応が出来るはずだからな。)


「ああ、負けた。流石だ、相変わらず人の良し悪しの見極めは衰えてねぇみてぇだな。」


「さぁどうなのかな。まぁその話はもうこのくらいにしようか。それでガルド、話があってわざとブラットを連れて来たのだろう?」


 オルフェがそう言うとガルドは話し出した。

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