19話〜思惑と兄弟と

 ここはシャインスプラウト城。オルフェは書斎で書類に目を通しながら考えていた。


(レオルドが言っていたブラットが神と契約した。それに、まさかガルドの子供だったとはな。運命か……。偶然とはいえ縁とは分からぬものだな。)


 オルフェはそう考えながらお茶を口にした。


(フゥ、……それならば尚更、血縁関係はしっかりしている。だが、ガルドは過去の事もあり、ブラットが私の後継者となる事を拒むだろう。さて、どうする?)


 オルフェは席を立ち考えながらウロウロし始めた。


(そう言えば、ガルドは確かカトレアと結ばれたはず。そうなるとブラットは魔族の血も受け継いでいるという事になるな。それはそれで別に構わないのだが。噂では魔族の王クレイデイルも、確か結婚もせず子もいなかったはず。)


 オルフェは椅子の背もたれの上に手をおいた。


(そうなると、主導権はあちらが上となる。このままでは、魔族側にブラットを持っていかれてしまう。何か手を打たねばならぬな。)


 オルフェは席につき、


(うむ、早速手を打つとするか。)



 ……そして翌朝。



 場所は移り、ここはクレアノヴァ城。ガルドとレオルドとフェリアは昨日話した事を手分けし皆に話した。


 そして、食事を済ませ支度をした後、シャインスプラウト城に行く事になった。行くメンバーはガルドとフェリアとレオルドとブラットだけのはずだったが、何故かハングも行くと言いだした。


 ガルドはハングがいた方が却って都合がいいかもしれないと言い行く事になった。その時、クレイデイルは嫌な予感がし自分も行くと言い出したが、カトレアに止められた。


 そしてシャインスプラウトに向かう数分前の事。ガルドはハングの部屋にいた。


「ハング、お前がシャインスプラウトに行くと言った時は少し驚いたが。」


「そ、そうか。でも……。」


「……それとお前に謝らないとならない事がある。」


「俺に謝る?」


「ああ。ユリィナとマリアンヌが隠していたとしても、すまない……俺はお前の事を今まで……。」


「だろうな……。でも、俺は別に謝って欲しい訳じゃない。それに、知らなかった理由も理解してるつもりだ。……多分。」


「そうか。それならそれで良いが。」


「話はそれだけなのか?」


「いや、それだけじゃねぇ。ちょっとお前に相談があってな。」


「ん?俺に相談……。」


「ああ。……。」


 そう言うとガルドはハングにシャインスプラウトに赴いた際の行動を伝えた。するとハングは少し不思議に思ったが、何か考えがあるのだろうと思い引き受けた。


 そして、そうこう各々やり取りをしている間、レオルドはオルフェに、ブラットを連れガルド達と今からシャインスプラウト城に向かうと、通信用の水晶を使い連絡した。


 そしてブラット達は、支度を済ませるとフェリアのテレポーターでシャインスプラウトの城下街に向かった。



 そして、ここはシャインスプラウト城の王の書斎。オルフェはレオルドから連絡を受けた後、直ぐに大臣のクラウド=スタインを呼んでいた。


 クラウドはオルフェに呼ばれ、急ぎ街中を馬車を走らせ城につきオルフェの待つ王の書斎へときた。


「陛下、先程話していた事は本当なのですか?」


「クラウド、ブラットはガルドの子供だった。それにガルドは、レオルドの話を聞き私に会いに来るらしい。それだけではない。ブラットも連れて来ると言っていた。だが、これをどう思う?」


「確かに、気になりますね。ガルドは過去の事もあり、今までこの城に寄り付こうともしなかった。ですが、ブラット様をここにお連れになる為とはいえ何を考えておられるのでしょう?」


「うむ、レオルドも一緒らしい。その他にも2人来ると言っていたが。」


「レオルドは何と言っていたのですか?」


「レオルドの話では、挨拶に来ると言っていたが。」


「なるほど。ですが、恐らくそれだけではないと思いますが。」


「多分そうだろう。まぁどんな形であれ、久しぶりに会えるのだから喜ぶべきなのだろう。」


「確かにあれ以来、ここにお呼びしても断られ続けましたので。」


「ああ、そうだな。私も余りあの時の事は思い出したくはない。それにガルドに何と詫びたら良いのか未だに分からない。恐らくまだ怒っているのだろうな。」


 オルフェは何かを思い遥か遠くを見つめていた。


「陛下……。」


 クラウドはオルフェの気持ちを察しそれ以上何も言わなかった。



 一方ブラット達は、フェリアのテレポーターでシャインスプラウトの城下街にきていた。


 そしてブラット達は話しながら城を目指し歩いていた。


「……何で直接、城の前に出ないんだ?流石にこの距離歩くの疲れるんだけど。」


「ブラット。城の前に出なかった訳は、城の者達に怪しまれない為なのです。それに私が城下街をみて歩いて見たかったのもあるのですが。」


「フェリアの言う通りだ。一部ちょっと違う部分もあるがな。だが、ブラット。前から思っていたが、ここまで足腰が弱いとは思わなかった。まぁ、これで俺がお前に、シェイナルズの城下街に買い物を頼んだ時に帰りが遅かった理由が良く分かった。」


 ガルドにそう言われブラットは苦笑した。


「はぁ、ブラット。もう少し足腰鍛えないとな。俺がとことん死ぬまで鍛えてやるがどうだ?」


「ハング。そ、それは……。あっ、そう言えば昨日、聞こうと思ってたんだけど。昨日城に着くまでの間ヴィオレが話してくれるはずだったんだけど。やっぱり本人に聞いた方がいいって言われて……。」


 そう言われハングはブラットから目を逸らし黙ってしまった。


 ガルドはそれをみてブラットが言おうとしてる事が分かり、この事は自分が話さなければいけないと思い話し出した。


「ハング、ブラット。その事について、今ここでちゃんと話しておいた方が良さそうだな。」


 そう言うとハングとブラットはガルドをみた。


「ハングと親父って?」


「ブラット、何となくお前も薄々気付いてるとは思うが。……ハングはお前の腹違いの兄だ。」


「……なるほど。やっぱりそうだったのか。何か話し易かったし、どことなく親父に似てたから、もしかしてって思ってたけど。」


「話し易い?俺と?……はぁ、俺はどちらかと言えばお前と腹違いとはいえ兄弟だと思いたくない!」


「クスクス、やはり兄弟ですね。何でも言い合えるという事は仲がいい証拠です。」


 フェリアがそう言うと、レオルドは笑みを浮かべながら、


「フェリア様、確かに私もそう思います。」


 そう言われハングは何も言えなくなった。


 ブラットはハングをみて笑みを浮かべていた。


「てか、ブラット。お前が薄々気付いてたとはな。観察力はあるようだな。」


 ガルドがそう言うとブラットは苦笑した。


 そしてブラット達は、色々話しながらシャインスプラウト城を目指した。

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