第2章〜動き出す運命という名の試練

17話〜回想〜レオルドの過去〜

 ここはクレアノヴァ城のレオルドの寝室。レオルドはガルドとフェリアにスカイネーブルから逃走後、何処で何をしていたのかを話していた。


「私はスカイネーブルから逃走し密かに身を隠しながら船でこの大陸のリバーウッズに着きました。そして……。」



 レオルドはリバーウッズの街でしばらく素性を隠し身を潜めながら、魔法の本などを読み研究を続け暮していた。そして、名前をリカルドと偽り冒険者ギルドに登録し簡単な仕事をしていた。


 そんなある日、街の者から錬金術の事を聞き興味を持ち調べ始めた。このピースバーグ国の首都シャインスプラウトに行けば、錬金術の事について詳しく知る事ができ、学ぶ事も出来ると分かり向かう事にした。


 レオルドは、シャインスプラウトに着くと、しばらくはここで研究をする事になるだろうと思い貯めた金で家を購入する事にし住む場所を探した。


 そして、運良く売りに出されていた空き家があり購入した。その家は小さいながらもレオルドが1人で住むには充分過ぎるくらいだった。


 部屋は各部屋小さいながら、寝室兼くつろげるスペースと研究する部屋に分かれ、シャワー室、キッチン等が備えつけられていた。


 レオルドは素性を隠し、そこで魔法と錬金術の研究を並行して行っていた。


 ある日この国の大臣クラウド=スタインはリカルド(レオルド)の存在を知り、ある事を頼みたく屋敷に呼んだ。


 そうこの時、この国の王オルフェ=P=ホルスはまだ30歳で若かったが病で床に伏せていた。数ヶ月前から、急に体調が優れなくなり倒れたのだ。


 そして腕の良い医師に診てもらうも、その病の事について誰も何も分からず、どうしたら良いのかと手をこまねいていた。


 そんな時リカルドレオルドが、シャインスプラウトの城下街で街の者達の簡単な病を治しながら、何か研究をしている事を聞きつけ、この事について何か分かるのではないかと屋敷に呼んだのだ。そしてリカルドレオルドに訳を話した。


 リカルドレオルドは、今すぐ王に会わせて欲しいと言った。


 クラウドはリカルドレオルドを連れ王の寝室へと向かった。


 そして、リカルドレオルドはオルフェの身体を良く見ると、首筋に小さな術式が刻まれている事に気付きそれをクラウドに見せながら説明した。


『これは、術式を使い呪いを掛け、病に見せかけ殺そうと何者かが仕組んだモノです。』


『リカルド。では、オルフェ様は何者かに命を狙われたという事か。』


『ええ、そうなります。クラウド様、陛下の命を狙う者が誰か存じませんでしょうか?』


『うむ、心あたりはあるが、オルフェ様の弟君のルシファ様を推していた者達の仕業かもしれぬ。でも、何故今になってこんな事を?』


『もしそうであれば、恐らくその可能性は大いにあります。それに、怪しまれずに術をかける為、わざと期間を開け行った可能性は高いですね。』


『リカルド、なるほどな。それで、この術は解けるのか?』


『術式を調べ読み解きましたが、今私が持ってる魔法道具では解く事は出来ません。ですが数日、時間を頂ければ、この術を解く為の魔法道具を作ってきます。その間、この術の呪いが進まないように進行を弱めておきたいと思います。』


 そう言うとリカルドレオルドは、右手の人差し指と中指を、オルフェの首筋の術式に添え呪文を唱えた。


 すると術式の文字に被さる様に新たな術式が刻まれた。


 そしてリカルドレオルドは、数日かけ魔法道具を完成させた。その魔法道具は小さく茶色い木箱に管が設置され錬金術と魔法の原理に基づき作られた物だった。


 その木箱の中にはエーテルと聖水と緑石のマナストーンを、錬金術により合成させた特殊な緑石のマナストーンが入っている。


 元々緑石のマナストーンには、呪いなどを防ぐ効果があり、懐などに入れお守りにしている者もいる。


 この特殊な緑石のマナストーンには、オルフェの呪いを解く為の魔法も特別に施されている。


 レオルドの解除魔法は、術式に直接触れ治す力であるが、呪いを解く際に解除魔法が術式に直接触れてはいけない理由があった。このオルフェに掛けられた呪い自体、直接術式に触れ解除すると、別の呪いが発動するような術式が組み込まれていたからだ。


 リカルドレオルドは、クラウドを通しオルフェの元へと赴いた。


 リカルドレオルドは、オルフェの首筋の術式に魔法道具の管の部分を左手で持ちながらあてがい、木箱の先端に右手の人差し指と中指を添えると、呪文を唱えた。


 そして、数日後オルフェは全快した。その後リカルドレオルドは、オルフェに呼ばれ感謝され王室に仕えないかと誘われるも断った。


 だが、この時ブルーノアは、レオルドが素性を隠しこのまま身を隠していては、前に進む事が出来ないと思った。


 ブルーノアはレオルドにオルフェに自分の素性と何故名前を偽り身を隠していたのかを話すように言った。そして、レオルドはオルフェにその事を話した。


 そして、その話を聞き何か力になれないかと思いオルフェは研究の手助けになればと考え、城の一角のあまり人の寄り付かないような所に部屋を設けレオルドを招き入れた。


 レオルドはしばらくそこで研究に明け暮れる日々が続いた。オルフェが用意してくれた部屋は、研究するにはかなり良い環境であり、レオルドは少しずつではあるが、確実に賢者としての力をつけていた。


 そんなある日、ブルーノアはいつものように、レオルドの研究に助言していた。レオルドはブルーノアに感謝の一言では表せない感情を抱いていた。


『いつもありがとうございます。ブルーノア様。』


 そう呟いたレオルドの言葉が、ようやくブルーノアに届いた。


 “レオルドよ、貴方の想いは今、私に届きました。”


『ブルーノア様、私の言葉が聞こえておられるのですか?』


 “聞こえていますよ。レオルド、貴方の想いと努力が認められ、私と話す事が可能になったのでしょう。”


 レオルドはブルーノアと色々と話した後、この先どう行動していけば良いか相談した。するとブルーノアはオルフェにブラットの事を話し協力を求めた方がいいと言った。


 レオルドはその話をオルフェに話すと、城の賢者を交え3人で話し合おうと言った。


 そして、出た結論はレオルドはシェイナルズに向かいブラットの事を探しだす事。オルフェはその後の事を考え、今管理下にあるクレアロゼに城を築きその援助をすると言った。


 レオルドは何故そこまでするのか疑問に思い聞いた。するとオルフェと城に使える賢者は、初代王の名がブラットと同じ名前という事と、本当に新たな国の王となる者であるならば後々の事を考え、交流を深めておいた方がいいと思い援助をするとの事だった。



 ……だが、この時既にオルフェは何かを目論んでいた。



「……その後、私はシェイナルズに赴き、マグドと会い何故か城に招かれ、今に至ります。」


 レオルドが話し終えると、ガルドは過去の事を思い出し深く溜息をつき考えていた。

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