16話〜動き出す歯車〜王の魂〜
ここはシェイナルズ城内にあるクライスの書斎。神ダライアスはクライスの元に訪れていた。
“クライス。マグドの事なのだが、このままあれを王とし据え置くのは、この国の為にならぬ。”
(確かにそうかもしれません。私はマグド様が王になる事を反対しておりました。昔の様に城を抜け出し旅に出てしまわれるのではと思うと。いえ、事実心配していた通りマグド様は城を抜け出し何処かに行かれてしまわれた。)
“うむ、そうであったな。我も、第一王子のマグドではなく、第二王子のフラムをと思っておった。だが、前王ラトスと英雄王となったガルドが、後押しをした事により、あれが王となってしまった。”
(ダライアス様。ふと思ったのですが、この機にフラム様を王の座に据えては如何かと。)
“なるほど、それは名案かもしれんが。ただ、フラムを王にするとしても、マグドはまだ自分から王の座から降りてはおらん。そうなると皆を納得させる説明が必要になる。”
(確かに、そうなのですが。このまま王が不在となれば……ああ、この国の行く末が心配でなりません。)
“ああ、そうだな。うむ、それはそうとクライス。あの洞窟の様子はどうだ?”
(はい、現在かなりの数の者達の犠牲のお陰で魔力が蓄えられている様でございます。)
“やはり思った通りだった。あれは魔力の貯蔵庫の様なもの。人の生命力を異空間に閉じ込め、その生命力を魔力に変え、そして、異空間にそれを貯蔵し洞窟は大きく成長し増え続ける。だが、ガルドはそれを知ってか知らずか分からんが特殊な方法で封印をした。あの洞窟は上手く使えば兵器になると言うのにな。”
(ダライアス様。ですが、これ以上の人々の犠牲が、本当に必要なのでしょうか?もうそろそろいいのではと思うのですが。)
“まだだ、まだ足りぬ。前王の時に、あの忌々しいシャインスプラウトにしてやられ。過去にも初代王にことごとく打ちのめされた。……クッ、それにまさかあの忌々しい王の魂が……。”
(ダライアス様。急にどうされましたか?)
“いや、何でもない。それよりも、マグドが不在の今、これから、この国をどうするのかを考えねばな。”
そう言うとダライアスとクライスは今後の事を相談していた。
ここはクレアノヴァ城。フェリアは話し合いが終わった後、ふとブラットの夢の中の事を思い出し、ガルドに声をかけレオルドの寝室に来ていた。
「フェリア様、話とは何でしょうか?」
「レオルドにガルド。話とはブラットの事なのですが。先程、ブラットの夢の中の神々が話していた事で、思い出し気になった事があるのです。」
「ん?それはどういう事だ?」
「ガルド、それは先程話した事の他に、神々が赤子のブラットから立ち去る間際、微かな声で“忌々しい王の魂……”と、聞こえた様な気がしました。」
「……フェリア様。今何と言われました?」
「フェリア、どういう事だ!忌々しい王の魂、って事は、ブラットが誰かの生まれ変わりって事なのか?」
「そうかもしれません。恐らく、この事を神王様とグランワルズは知っているのではと思うのですが。そういえば、ブラットの名はグランワルズが付けたのですよね?」
「ああ、そうだが。それと何か関係があるのか?」
「ブラットの名……ガルド様はグランワルズ様からは、この名前の由来の事は聞いていないのですね。」
「ああ。だが、以前世話になった国の英雄と言われた初代王の名がブラットだったはずだ。グランワルズはその名前を付けただけだと思ってたんだが。まさかな。」
「なるほど。シャインスプラウトの王は、この事をどこまで知っているのでしょう。」
「レオルド、どうしたのですか?」
「フェリア様、ガルド様。これは後に話そうと思っていたのですが。今話した方が良さそうですね。」
そう言うとレオルドはガルドとフェリアにスカイネーブルからシェイナルズに来るまでの間、何があったのかと色々な事を話し出した。
そして……何かを物語っているかの様に、天空の遥か彼方で歯車がすれ合う微かな金属音がした。
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