14話〜歪みの洞窟

 マグドは歪みの洞窟について話し出した。


「何から話せば良いか。……あれは一年前ぐらいだったか。私は、大臣のクライスに昔の事を聞かれた。その時に歪みの洞窟の事を話した。」


「マグド!何故その事を話した?あの洞窟の事は誰にも言わないと言う約束だったはずだ。」


「ああ、ガルド、そうなのだがな。私も何故その事をクライスに話してしまったのかと思っている。ただ、言えるのは、あの時何かに操られているかのように口が勝手に動いたように感じた。」


「口が勝手に動いた。……そんな事があり得るの?」


 マリアンヌが不思議に思い聞くとレオルドが話し出した。


「……なるほど。恐らくは、ダライアス様の仕業と考えた方がいいでしょう。クライスを通しマグドに術を掛けたのかもしれませんね。」


「レオルド。何故ダライアスがその様な事をする?それに、そうだとして何故直接、私に術を掛けなかったんだ?」


「それは多分、私とブルーノア様を警戒していたからだと思います。」


「それで、マグド!まさかと思うが、そのクライスがお前の名前を勝手に使い、歪みの洞窟の封印を解いたって事なのか?」


「ああ、そうなるな。自分でも不甲斐ないと思っている。それが、神に操られていたとしても、あの洞窟を復活させてしまった。あの洞窟の恐ろしさを私は身を持って知っていると言うのにな。」


「マグド。どうするつもりだ?お前が直接命令してないにしろ。お前の命令で、あの洞窟で被害者が続々出ていると言われている。」


「ガルド確かにな。だが、新たに封印をするにしても封印石が無ければ、封印は出来ない。」


「ガルド様、お話を聞いていて気になったのですが。歪みの洞窟とは本来なんなのですか?」


「サアヤ。あの洞窟の詳しい事は良く分からねぇが、別名人喰い洞窟と昔は言われていた。そういや、マグドお前ならあの洞窟について少しは分かるんじゃねぇのか?」


「ああ。ただ、あまり思い出したくはないがな。」


「それはどういう事なのでしょうか?」


「レオルド。それは私があの洞窟に喰われそうになったからな。」


 そう言うとその場にいたその事を知らない者達は驚いた。


 そして、マグドはその事について話し出した。


「これは、ガルドとカトレアとビスカとルルーシアと旅をしていた時に起きた事なんだがな。……。」



 数十年前、ガルド達が船でこの大陸から、数十キロ離れた大陸に降り立ち、鉱山が辺りに密集したプレシャスマインと言う街に赴いた時の事。


 この街の近隣の洞窟で人が行方不明になるという事件が起こっていた。


 その事を聞いたガルド達はその洞窟の事が気になり調べ始めた。


 だが、カトレアはその洞窟とは関わらない方がいいと止めた。そうカトレアはこの洞窟の恐ろしさを知っていた。


 カトレアはその洞窟の本質は知らなかったが、その洞窟が魔族領土エクスダールにもあり、人喰い洞窟と言われ魔族の間でも恐れられていたからだ。


 だが、ガルドはこのままにしておく訳にはいかないといい、危険がない程度に調べようという事になった。


 そして、とりあえずガルドとマグドが洞窟の内部を探る事になった。


 2人が洞窟の内部を探っているといつの間にか、マグドが居なくなりガルドは慌てて探した。


 その頃マグドは洞窟に呑まれ不思議な空間を彷徨っていた。


 そうそこは異空間だった。


 マグドは何故ここに迷い込んだのか不思議だった。洞窟を歩いていたが、たまたまよろけ、洞窟の岩壁に触った途端意識が飛びいつの間にかこの異空間にいた。そして、ここをどう脱出するかと考えていた。


 その頃、ガルドと契約をしていた神グランワルズが、マグドの危機を察知しガルドに知らせた。


 ガルドはどうマグドを助けたら良いかとグランワルズにその方法を聞き教えてもらいマグドを助けた。


 この時、あと数時間遅かったら、マグドの身体は異空間に呑まれ姿形がなくなっていた。後にそれを聞いたマグドの顔は青ざめた。


 そしてグランワルズに聞き、その洞窟の仕組みが分かったガルド達は、封印石で封印する他に手はないと分かり、特別な封印石を作る為、錬金術の国であるシャインスプラウトに向かいその作り方を教わった。


 その後、封印石を探す為、シェイナルズの洞窟などを探し封印石を集めた。


 そしてまたシャインスプラウトに戻り、プレシャスマイン以外にも洞窟が存在するとカトレアに聞いていた為、特別な封印石を数十個作っておいた。


 そして、ガルド達は各地を旅しグランワルズに助言をもらいながら、歪みの洞窟を封印していった。



「……という事だ。あの時は死ぬという思いはなく、ただ不思議な感覚だけが残っている。その後、この事を聞いた時、私は一瞬背筋がゾッとし、顔が青ざめ腰を抜かした。」


「そうなると、確かにその洞窟をこのままにしておく訳にはいきませんね。でもその歪みの洞窟とはそもそもなんなのでしょうか?」


「レオルド。確かにそうだな。グランワルズの話では、あの洞窟は本来この地にあってはならないものらしい。それと、歪みの洞窟は、黒石のマナストーンの原石が採取出来る洞窟のみで発生していた。そこに何者かの魔法により、異空間の歪みが生じたらしい。」


「なるほど。そうなのですね。これは確認しなければ分かりませんが、ブルーノア様は空間を操る事ができます。その歪みの洞窟を元に戻す事が出来るかもしれません。」


「それが可能なら好都合だが。後は、あの洞窟に人を寄せ付けないようにしないとならねぇ。マグドがまたあの城に戻り命令する方がいいんだろうが。だが、お前が戻るのは危険かもしれねぇ。」


「ガルド。確かに私があの城に戻れば、確実にダライアス様に操られかねない。でなければ何らかの方法で追い込まれるかもしれぬ。」


「ああ、そうなるだろうな。だが、このままでは被害者が増える一方だ!それに現在、封印石はシェイナルズでは手に入らない。あるとすれば、魔族領土エクスダールの何処かの洞窟にある。もしレオルドがいうようにブルーノアが歪みの洞窟をどうにかしてくれるのであれば助かる。」


「……そうですね。今その事で、シグムラカン様が話されていたのですが。現在封印が解かれ現れている歪みの洞窟は1ヶ所。そこに神1人と話せる者が赴きマグドの名前を出し警備兵を退け見張る。ブルーノアとレオルドは歪みの洞窟に付いて排除可能か調べ。そして、念の為、他の数名の者がエクスダールに赴き、封印石を大量に取ってくる。という話をされていました。」


「フェリア、なるほどな。昨日も封印石の事で話したが。レオルド昨日の話じゃ、確かこの城に封印石を探すのにいい道具があるって言ってたな。」


「はい、ガルド様。この城の地下の研究施設にあります。そうなりますと、それを実行するには、この中で神と話せる者と言われますと、ガルド様とドルマノフ様とマグドと私と……ん?そう言えばブラットはフェリアと契約していたはずですが。神とは話された事はないのですか?」


「ん?……そう言えばフェリア以外話した事がなかったけど。どうなのかな?」


「そう言えば、ブラットは話された事がありませんでしたね。多分話せるとは思いますが念の為、後で話せるか試してみましょう。」


「そうですね。その方がよろしいでしょう。では、歪みの洞窟についての話はこのくらいにして、後で一部の人だけで、この事を実行し誰がそこに赴くかを話し決めたいと思います。では、次はスプリガンの事について話を進めたいと思います。」


 レオルドはそう言うと、ある本を取り出し目の前においた。

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