11話〜助言と解明と帽子の男
ここはクレアノヴァ城の広間の特設会議場。レオルドは目を閉じブルーノアにどう答えていいかを聞いた。
(ブルーノア様。どう答えたらいいのでしょうか?)
"そうですね。確かに今のブラットでは、そう思われても仕方がない事なのですが、このままでは前に進む事は困難です。良い案があればいいのですが。”
(やはり、ブルーノア様でも、今のブラットでは皆を納得させるのは困難と思われるのですね。はぁ、どう答えたら……。)
するとシグムラカンが、レオルドと話がしたいとブルーノアに言うと、
“シグムラカンが、レオルドと話がしたいと言っていますが?”
(シグムラカン様が私とですか?分かりました。)
レオルドはシグムラカンの方に意識を切り替えた。
(シグムラカン様。私に話したい事とは?)
“レオルド。ブラットの事でかなり頭を悩めているようだな。”
(はい、どう答えたら良いかと悩んでおりました。)
“うむ。レオルド聞くが。お前は、ブラットの事をどう思っている?それと、どのようになって欲しいと願っているのだ?”
シグムラカンにそう言われレオルドは考えたあと、ブラットの事をどう思っているのかと、どうなって欲しいのかを話した。
するとシグムラカンはレオルドに、その思いをこの場で話せと言った。そして、シグムラカンはレオルドの意識から遠のいた。
レオルドは目を開けると、今思っている事を話し出した。
「私は、どう答えたら良いか分からなくなり、ブルーノア様とシグムラカン様に相談し助言を頂きました。」
レオルドがそう言うとガルドはレオルドをみて、
「それで、何でブラットじゃなきゃ駄目なんだ?」
「それを話す前に今ここで私が思っている事を全て話したいと思います。」
レオルドは少し間をおき軽く息を吐くと話し出した。
「本音をいえば、先程レフィカルさんやジェシカさんが言われた通り、私もブラットでなければ何故ダメなのかと思っています。私から見ても今のブラットでは、どうしても王になる器には見えません。それに、今のままでは、恐らく世界を救う事は困難でしょう。もし力を解放し強くなる事ができたとしても、今のブラットでは力が暴走するか、若しくはその力に呑まれ耐えきれず自滅してしまうと思うのです。」
「レオルド。お前の言う通り、今のブラットでは到底世界を救うなんて事は難しいだろうな。それなのに、何でブラットじゃなければならねぇんだ?」
「ガルド様、それは……。」
「私は、運命の女神フェリアです。その事については私が話したいと思います。何故ブラットでなければいけないのか、運命が狂わされていなければ本来ならばブラットは魔導師の王となっていたはずなのです。しかし、何者かの手によりブラットの運命は変えられました。」
「俺は、グレン。ブラットとは同じ村で育った。それで、ブラットの運命を変えた奴は分からないのか?」
「ええ、今の所はそれが誰なのか分かりません。ですが、昨日ブラットの意識の中に入った時に、産まれたばかりのブラットに会う事ができました。ブラットが産まれたばかりの頃に熱を出した原因とそれを行った者が誰なのか。全部ではありませんでしたが分かりました。」
「フェリア様。それはどういう事なのですか?熱の原因とブラットの今の現状と何か結び付くというのですか?」
「レオルド。私は詳しく見たわけではありませんが、そのブラットの意識の中で見た内容を、話したいと思います。ブラットが産まれたばかりの頃、ガルドがブラットに名前を付けてしばらくし、そこに数名の神が現れ、ブラットを見下ろしこう言いました。」
フェリアはそう言うと覚えている言葉を話した。
「その言葉とは、“ なるほど。この赤子が、神王様が選んだ新しい国の王となる者という事か。” “そうみたいですね。ですが、やはり我々は、この者を新しい国の王とする事を認めたくはありません。” “確かに我々は魔族が嫌いだ。それなのに何故だ!ガルドは魔族の元女王のカトレアと……。” “そうだな。1番気になるのは、何故側にグランワルズがついていて、これを阻止出来なかったのか。” “本当ですね。さて、どうしましょうか?” “そうだな。我々の手で今のうちに始末といきたいが。流石にそれも出来ない。” “それならば、我々の手を汚さずに、この者に術をかけてはどうでしょう。” “うむ、なるほどな。だが、普通の術では直ぐに気づかれ解かれてしまうが。” “それならば、我らの術を複数とその鍵となる者達にも術をかけてはいかがでしょうか。” “なるほど、それはいい考えだが。我々では近づけない者もいる。そうなるとその親しい者の手を借り事を進めるとするか。”と言っていました。その熱の原因もこの複数の神がブラットに術を掛けた為、それと、これは推測に過ぎませんが、複数の神が掛けた術とブラットの力とが反発し合い、その反動で熱が出たのだと思うのです。」
「何という事だ。この事に神が関与しているとは思っておったが、まさか複数の神が関与しておったとはな。それで、その神が誰か分かったのか?」
ドルマノフが聞くとフェリアは首を横に振り、
「いいえ。それが誰なのか分からないのですが、1人の神の声だけは聞き覚えがあります。ただ、それが誰なのか思い出せないのです。」
「フェリア。その神なんだがな。グドルフお前は知ってるんじゃねぇのか?」
「……。」
グドルフはそう言われ無言で帽子を更に深々と被り下を向いてしまった。
レオルドはその様子を見て不思議に思いグドルフに問いかけた。
「そういえば。貴方はまだどこの誰なのかを話されていませんが。何故ガルド様の問いに答えず下を向いてしまったのですか?それに、ガルド様。今、そのかたがこの件に関与している神を知っていると言われましたがどういう事なのですか?」
レオルドに言われグドルフは何と答えて良いか分からなくなり、更に下を向き悩んでいた。
ガルドは今ここで聞くのはまずかったかと頭を抱え反省していた。
ビスカは心の中を覗き2人の心境を知り、どうこの場を切り抜けるか考えながら、レオルドの心の中も覗いてみた。
すると、レオルドが何を考えているのか分かり、
「ねぇ、レオルド。本当はグドルフが誰なのか知っているんじゃないのかな?それにさぁ。レオルドも、私ほどではなくても、ある程度は心の中を覗けるんじゃないのかな?」
「そ、それは……なるほど。流石はドルマノフ様のお嬢様ですね。私の心の中を読むとは、ビスカさんのいう通りですが、心の中を覗くまでもなく、名前を偽られていても、流石に数年間、側に居ましたので、グドルフさんが誰なのか、ここに入ってきた時から気づいておりました。」
「ふっ、なるほどな。だが、俺が誰か分かっていたなら、何故警戒しない。」
「私は、あの城にいる時に、色々シェイナルズの事や貴方の事。そして、調べている内に貴方には、もう一つの顔がある事に気づきました。」
「もう一つの顔と言うと?」
「グドルフさん。良いのですか?ここでそれを話してしまっても。」
「そ、それは……だが、話さなければ、ガルドに聞かれた事を話せないのも事実だが。」
グドルフは下を向き考え込んだ。
「グドルフ。もう一つの顔って、もしかして、さっき城の外でお前を痛め付けていた神の仕業なのか?」
「ガルド様。今何と言われました?神がグドルフさんを……やはり、そうだったのですね。私が側にいた時から感じていた違和感はその為だったという事。だとすれば、その神が誰なのか知っているのであれば、ここで話して欲しいのですが。」
レオルドがそう言うとグドルフは下を向き考えていたが、帽子を取り前を向き自分が誰なのか正体を明かし話し出した。
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