9話〜人間と魔族
ここは名も無き城の外。ティナは結界を張り木の木陰で寝ていたが、城に結界が張られた事に気づき慌てて目を覚ました。
(これは……何故城に結界が張られたと言うの?そういえば、この城にレオルド以外の人達も集まって来ていたけど。)
ティナは結界が張られ城に近づけなくなりどうしようかと考えながらうろうろしていた。
(今からこの城で何が起ころうとしているの?何か気になるのだけど。仕方ないかどのみち考えてても結界が城全体に張られたんじゃ打つ手ないしね。)
ティナは木の木陰から城の方を向き休みながら結界が解けるのを待つ事にした。
一方、城内の広間ではブラット達が話し合いをしていた。
「それでは、これからブラットに関する事と一連の出来事、そしてこれからの事を話し合いたいと思います。ここには、知っている者と知らない者がいると思いますので、自己紹介をしながら話を進めて行きたいと思います。では、私から自己紹介をさせて頂きます。」
マリアンヌは皆を時計回りに見ると、
「私はマリアンヌ=ルーチェといい、かつてガルドと旅を共にした者です。そして、今日ここに来た訳はブラットの力の事を知る為、そして、ブラット自身の本当の姿を知る為に。」
「本当の姿って……マリアンヌ!ブラットがまるで今の姿が本当のブラットじゃないと言いたいみてぇだな!?」
「ガルド……そうは言ってはいません。ただ、人柄や本当に信頼できる者なのかを知りたいだけなのです。」
「私はカトレア=ミュー=キリアと申します。マリアンヌさん。貴方が言いたいのはブラットには、魔族の血が混ざっているからという事なのでしょうか?」
「はい。否定するつもりはありません。私は元々魔族が嫌いですので。特に貴方のような人をたぶらかすような方が1番嫌いなのです。」
「それはどういう意味なのでしょうか?まるで私がガルドをたぶらかし結ばれたような言い方ですわよね。」
「あら。私はそこまでは言ってませんが、事実だったのでしょうか?」
「事実ではありませんが、貴方の言い方がそう聞こえましたので!ですが、未だに人間と魔族の間にはこんなにも溝が深いなんて……。」
カトレアは下を向き左手を机につき右手で頭を抱え涙を浮かべていた。
クレイデイルはカトレアの肩に左手を軽く乗せ、マリアンヌを見ると、
「すまない割って入るようだが。俺はカトレアの兄、クレイデイル=ミュー=キリアだ。そして魔族の王でもある!今の話を聞いていたが、確かに人間からすれば魔族は脅威なのだろう。しかし、魔族から見る人間もまた脅威なのだ。それに、魔族の者の中にも人間に興味を持ち仲良くなりたいと思っている者もいる。」
「俺はハング=モルグ。魔族が人間を脅威に思っているって?信じられないね。ましてや、仲良くなりたいだと。そんなのどう信じろって言うんだ!」
「ワシはドルマノフ=マードレアじゃが。相変わらず、人間と魔族との間にはまだ深い溝があるようじゃな。ワシはかつて魔族の賢者と結ばれ1人の娘を授かった。人間であればもういい歳なのだろうがハーフな為かは分からんが、未だに若いつもりで子供っぽい服などを着ているがな。」
「お父様それは……あーえっと、私はビスカ=マードレアです。マリアンヌ、前にも言った事があるよね。私は人間だとか魔族だとか関係無いってさ!私はね。未だに何でそんな差別が人間の間にあるのかの方が不思議なんだけど?」
「ビスカ。確かに貴女は人間と魔族の間に生まれた者かもしれません。しかし、貴女の事はかつて旅を共にし知っていますので信じています。」
「私はレヴィ=エンリケ。クレイデイル様にお仕えしている者です。今の話を聞いていましたが、何故それほどまでに、魔族を嫌うのか?いえ、確かに魔族の者の中には未だに人間を襲う者がいる。しかし、人間も同じ、何もしていないというのに……魔族を嫌い魔族と言うだけで襲い殺され迫害を受けている者もいるのです!」
「確かにそうですね。昔ほど酷くはありませんが。あっ!私は、ティールの街の冒険者ギルドでギルドマスターをさせて頂いております。ルルーシア=レオと申します。私は昔ガルド様と少しの間旅した折、色々な方々を見て来ました。そこでは人間の醜い姿も、魔族でも心がある方々もいらっしゃいました。」
レオルドは余りにも話がこじれそうだったので、敢えて話に割って入った。
「ゴホン!ああ、申し訳ありません。まだ身体の調子が良くなく……私はレオルド=ミストと申します。その話も重要かもしれませんが、申し訳ありませんが、出来れば後にして頂きたいのですが、話が前に進みませんので。」
「そうですわね。今はこんな話をしている時ではありませんでしたわ。」
「では、話を進めて行きたいと思います。今回ここで議論する事は、ブラットの力の事とこの城の事と今後どうするか等を話し合って行こうと思います。」
そして、レオルドがブラットの方を見ると皆もブラットをみた。
ブラットは一瞬どうしていいか分からなくなりたじろいだ。
「あ、あ〜、ええっと……俺はブラット=フレイです。今の話を聞いていたけど、自分は何なんだろうって思えてきた。本当に王になる資格があるのか?この世界を元に戻す事が出来るのか?あの力は何なのか?それにこの杖は何で俺にしか使えないのかとか色々他にもあるけど。ここに来れば少しは何か分かるかと思ったけど。やっぱり、まだ何も分からない……。」
すると、ハングはブラットを半目でじっとみた後、
「ふん、なるほどな。ここまで気が小さいとはな。これが英雄王と言われたガルドの息子なのか?お前はどんだけ恵まれて育って来たと思っているんだ!?」
そしてハングは、机を思いっきりドンっと叩きブラットを睨み付けていたのだった…。
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