7話〜怒りと仲間と友情と

 ここはクレアロゼの名も無き城。ガルドはレオルドの寝室の前に来ていた。


 ガルドは扉を開け中に入ると辺りを見渡した。


(ん?レオルドは奥の方で寝てるみてぇだな。)


 ガルドはレオルドが寝ているベッドの方に向かっていった。



 一方その時ジェシカとレフィカルは、近づいてくるガルドに怯えていた。


 ジェシカとレフィカルはレオルドが寝ているベッドと壁の間に隠れていた。


 ジェシカは小声でレオルドに話しかけた。


「レオルドお願い!ガルドに、私達がここに隠れているって事と、この城に居るって事は内緒にして欲しいんだけど。」


「はぁ、それは構いませんが。ですが、既に手遅れなのでは?」


 レオルドは上体を起こし指を差した。


 ジェシカとレフィカルは、レオルドが何故上体を起こし指を差しているのか分からなかった。


 レオルドは何かの後を追うように指を差していて、それが段々自分達の前に近づいてきていたので不思議に思い、恐る恐るその方向をみた。


 するとそこには、腕を組んでジェシカとレフィカルを睨み付けているガルドがいた。


 それを、見たジェシカとレフィカルは、


「あーえっと、ガルド昨日以来かな?ははは……。」


「ガ、ガルド……あっ、あのなこれには……。」


 2人は隅の方で抱き合い震えていた。


「おい!何でお前らがここにいやがる?それは、まぁいいとしてだが。昨日の事はじっくり話さねぇとな。お前ら覚悟は出来てるんだろうな!?」


 ガルドは手を組み指を鳴らしジェシカとレフィカルを更に睨み付けた。


 ジェシカとレフィカルはそれを見て、更に怯え震え両手で頭を覆っていた。


「ガルド様。それについては私も関与していた事、申し訳無いと思っております。それにこのお二方も反省しているようですし、この場はどうか穏便に済ませて頂けないでしょうか?」


「レオルド。悪いが、俺が怒っているのはな!ブラットをどうのって事よりも、俺と正々堂々とやりあい、ブラットを連れて行くなら構わねぇが、俺の目を盗みコソコソとブラットをさらった事に対し俺はな、怒ってるんだ!」


「あのね。ガルド……貴方とやって私達が敵う訳が無いと思うんだけど。」


 ジェシカはビクビクしながら言った。


「……だからなんだ!!そもそも、俺の目を盗みそんな事をしなきゃ良かったんじゃねぇのか?まぁ、お前達を許しても良いが、ただ許す訳にはいかねぇ。殴ってからじゃねぇとな!」


 ガルドは怯えるジェシカとレフィカルの側にくると、ジェシカを殴ろうとしたが拳を顔の前で寸止めし部屋の真ん中まで投げ飛ばした後、レフィカルの顔を思いっきり殴った。


 ジェシカは拳を顔の前で寸止めされ既に気絶していたが、投げ飛ばされ床で伸びていた。


 レフィカルは殴られ気絶していた。


「ふぅ。さて、レオルド。お前にも、と言いてぇ所だが、まぁブラットをさらったのは、この2人の咄嗟の判断だろう。余りにも作戦がずさん過ぎるしな。」


「はぁ、確かにそうですが……それはそうと、私に何か用があり来られたのでは無いのですか?」


 レオルドはそう言うとガルドに殴られ気絶しているレフィカルをみた後、投げ飛ばされ気絶しているジェシカをみた。


「ああ、すまねぇそうだった。コイツらの顔を見たらついな……。」


 ガルドはレオルドにブラットの幼馴染のグレンが怪我をし動けず、ビスカと共にリロ村にいる事を話した。


「……なるほど。では、どなたかがそこにいき治療をするか、又はここまでテレポートで連れて来なくてはいけませんね。」


「ああ、レヴィが先に来てると思って探してみたんだが、いねぇみてぇでな。一緒に来てる筈のルルもいねぇ。それでどうしようかとな。」


「そうですね。私はまだ傷の方が本当ではありませんので…………今ブルーノア様から聞いたのですが、フェリア様ならテレポートやテレポーターが使えるはずと言っておりました。それに簡単な治療なら出来たはずとも。」


「なるほどな。そうなると、フェリアに頼むしかねぇな。」


 ガルドはそう言うとレフィカルを担ぎ、ジェシカの側に来るとその場に並べて寝かせ、タンスから手頃な大きなタオルをみつけ、2人にかけると何事もなかったように部屋から出ていった。


「なるほど、流石はガルド様です。2人の罪は消えないでしょうが、友情と言うのでしょうか。だからこそ、怒られたのでしょう。でも、それは今ので帳消しと言う事なのでしょうね。この行動を見れば分かる気がします。」


 そして、レオルドはまた横になり眠る事にしたのだった…。

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