6話〜疑念と思惑

 ここはクレアロゼ地方の名も無き城付近。


 ネリウスの配下の賢者ティナ=ストラルーデはレオルドを監視する為に後をつけて来ていた。



 このティナは30歳ではあるが、見た目は20代前半で、賢者とは思えないほどの厚化粧。


 髪は黄緑色で長さは耳ぐらいまであり、前髪は長くカチューシャであげている。


 ネリウスの配下の者にしては珍しく柔軟な頭をしている。仕事とプライベートは別と考えていて、仕事はちゃんとこなすが、プライベートではほぼダラダラと過ごし遊んでいる事が多い。



 そして、ティナは名も無き城の周りを調べていた……いや、監視だけでは退屈だった為、城の中の者達に気づかれない程度にブラブラと城を見ながら散歩をしているだけだった。


(あ〜あ、退屈な仕事だなぁ〜。レオルドの監視って……でも、ネリウス様からレオルドの事を聞いた時は驚いたけどね。何故今頃になって、仲間を裏切りスカイネーブルを追放され追われていたはずのレオルドの監視をするのかってね。まぁいつもの堅苦しい聖衣を着ないで済むだけいいかぁ。)


 ティナは大きな木をみつけ、木陰で休む事にした。


 今日のティナはいつもの着ている黄色の聖衣ではなく、白の長袖のブラウスの上に麻のベストと、膝上の皮のスカートと、皮のブーツを履いている。


(それにしても、未だに腑に落ちないのよね。レオルドが私達を裏切った事、ネリウス様に逆らった事、セレネアの事もだけど……何故レオルドがそんな事をしたのか、アイツの性格からしてそんな事が出来るとは思えないんだけどね。でも、現にそれが行われた……あ〜、もう。考えてたら頭が痛くなってきた。疲れたし周りに結界張って、少し仮眠しようかなぁ。)


 ティナは結界を張り木陰で仮眠を取ることにし眠りについた。



 その頃、マリアンヌは城の中を歩き周り、勝手に通信用と監視用の水晶を各部屋に置いていた。


(いつ何があるか分かりませんし。用心の為、このぐらいしておかなくてはね。)


 マリアンヌは全部屋に各水晶をおき終え、下の階に降りてくると、階段の下の段の辺りでガルド達が座り休んでいるのをみつけ声をかけた。


「あら、今着いた所なのかしら?疲れているのですね。ですが、ここで何をされているのですか?」


 マリアンヌの声がした為、ガルド達は後ろを振り向いた。


 マグドは慌てて帽子を深々と被り顔を隠した。


「……マリアンヌ!さっき着いた所なんだがな。何処に行けば良いか分からねぇで、探し歩いていたんだが。こいつらが疲れたみてぇだから、ここで休んでた。」


「そうなのですね。ん?えっと、知らない顔が2人と、もう1人は何故私の顔を見ずに帽子を深々と被っているのかしら?それに、その格好昔何処かで見た記憶があるのですが……クスクス……そうそう、グドルフ!そうですわよね?」


 マリアンヌは意地悪気味に言い笑みを浮かべ、マグドをみた。


「流石だな。マリアンヌ……俺の事を覚えていたとはな。」


「ええ、忘れる訳がないじゃないですか、かつての仲間の事を……だけど、よく屋敷を出て来れましたわね?」


「ああ、昔のように抜け出してきた。」


「そうなのですね。まぁ色々と話を聞きたい所ですが?後の2人の方々は……。」


 マリアンヌはカトレアとヴィオレッタをみると、カトレアが会釈をし、


「はじめまして、私は、カトレア=ミュー=キリアと申します。」


「なるほど。貴方がカトレア……確かに魔族とは思えないほどにお美しいですわね。」


 マリアンヌはカトレアに冷たい視線を送った。


「あら、ありがとうございます。マリアンヌさんもお美しい方ですわね。ガルドとは旅のお仲間だった方でしょうか?」


 カトレアはマリアンヌを見ると冷たく微笑し、ガルドに視線を送った。


 ガルドはその意味が分からず、その光景を見ていた。


「あっ!そうそう……今やっと貴方の事を思い出しましたわ。」


 マリアンヌはそう言うとヴィオレッタをみて、


「何処かで見かけたと思っていましたが、貴方はヴィオレッタでしたわね?レックスの娘の。でも何故ここにいるのですか?」


「……それは私が聞きたい事ですわ。何故貴方がここにいるのですの?お父様と何を企んでいますの?」


「マリアンヌ?それはどういう事だ!今の話は本当なのか?」


「グドルフ。その事について詳しく話をしたいのですが、その前にヴィオレッタ。私は貴方にかなり誤解されているみたいですね。」


「誤解とはどういう事ですの?私はあの日聞いてしまいました。お父様と貴方が話をしている所を……危険だと判断したらブラットを殺すって言ってましたわよね?」


「マリアンヌ!?それはどういう事だ!!話によっちゃ俺は……。」


「ええ、それは否定するつもりはありません。ですが、それはあくまでも危険な存在と判断した時のみであり。それに私はレックスの前ではそういいましたが、本心ではありません……そうですね。その事も踏まえ、皆の前で詳しく話をしたいと思います。」


「分かりましたの……。」


「ああ、そうだな。」


 そして、ガルド達はマリアンヌに案内され、各自部屋に向かったのだった…。

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