5話〜不満爆発

 ここはクレアロゼ地方の北東の海岸沿い。そこにレヴィとルルーシアはいた。


 レヴィとルルーシアはテレポートでクレイデイルの元に行くはずだったが、何故かここに来ていた。


 レヴィとルルーシアは海を見ながら話をしていた。


「……変ですね?何故ここに出てしまったのでしょう?」


「それは私が聞きたいのですが?でも、レヴィはクレイデイル様の事をイメージして、テレポートを使ったのですよね?」


「ああ、そうなのですが?何故ここに出たのかが不思議なのです。」


 ルルーシアは辺りを見渡してみた。


「……辺りには、クレイデイル様は居ないようだけど……もしかしたら、さっきまではここに居たのかもしれないわね。」


「そうですね。クレイデイル様は、まだその辺に居るのでしょうか?」


「そうね……恐らくまだ遠くには行ってないと思うのだけど。レヴィ、もう一度テレポートできるかな?」


「多分まだ大丈夫だとは思いますが。」


「じゃ、手取り早くクレイデイル様の所に飛べば早く会えるんじゃないかな?」


「確かにそうですね。いつまでも、ここで海を眺めていても仕方ないですしね。」


 レヴィは、クレイデイルをイメージし、指を鳴らすと、テレポートを使いルルーシアを連れ、クレイデイルの元に飛んだ。



 場所は移り、ここはクレアロゼ地方の北部に位置する草原。


 クレイデイルは海を眺めたあと、ブラットとスプリガンが戦うこの草原を見に来ていた。


 辺りには彩どりの草花が咲き誇り、周りには所々に木が生えている。


 クレイデイルは歩き疲れたため、大きな木の木陰で休む事にした。


(休み休み歩いてはきたが、流石にこの距離は疲れた。だが、あと少しで着くとは思うが、城の場所があやふやで、探すだけでもかなり時間を費やした。さて、城はどこにある?聞いた話ではこの地より南のはずだから。うむ、俺は今北を向いている。という事は俺の後ろが南側となるな。)


 クレイデイルは後ろを向き軽く息を吐くと、


「そろそろ行くか。あまり休んでもいられんしな。」


 クレイデイルは前を向き立ち上がると、目の前にレヴィとルルーシアが現れ驚き尻もちをついた。


「ヒャッ!」


 レヴィは慌ててクレイデイルに手を差し伸べ、


「あっ!クレイデイル様、ここにいらしたのですね。尻もちなどつかれてどうしたのですか?」


 クレイデイルはレヴィの手を取り立ち上がった。


「レヴィ……お前がいきなり俺の前に現れたせいだ!」


「クレイデイル様、お久しぶりでございます。ルルーシアです。でも、相変わらずお変わりないようで良かったです。」


「ルルーシア……って、あのルルなのか?」


 クレイデイルはルルから少し後退りした。


「そうですが……何故、後退りされているのですか?」


(ま、まさか、何故ここにルルがいる?それも、レヴィと一緒とは……何も起きなければよいが。)


「あっ、いや、まさかここまで女らしくなるとは思っていなかったのでな。」


「はあ?私が女らしいとは相変わらず口がお上手ですね。クレイデイル様は……。」


 ルルーシアは照れながらクレイデイルをみた。


「あーいや、まあいい。それよりも、何故ここにテレポートして来た?」


「それは、いち早くルルと共に、クレイデイル様に会いたかったからです。」


「私は、クレイデイル様がこちらにお見えになられると聞き早くご挨拶しなければと思いまして。ですが、ここで何をされているのですか?もう既に城に向かわれていると思っていましたが?」


「そ、それは……な、なかなかな、外に出る機会もない。だから、ゆっくりと景色を堪能していただけだ!」


(流石に、疲れてしばらく動けずにいたなど絶対に言えぬ。更に、道に迷っていたなんてな!)


「どうなされました?クレイデイル様、お顔の色があまり優れないようですが?」


「ん?レヴィ。な、何でもない、大丈夫だ!さて、2人も来てくれたし、そろそろ城に向かわねばな!」


 クレイデイルは立ち上がり南の方角をみた。


「クレイデイル様、徒歩で行かれるのですか?右足が腫れているように見えますが?気のせいでしょうか?もし、気のせいで無ければ、私のテレポートで城までお連れしたいと思いますが。」


(クレイデイル様は、相変わらず人に弱い所を見せずに無理をなさる。)


 レヴィがそう言うと、ルルーシアは慌ててクレイデイルの右足首をみた。


「クレイデイル様、これは気づかず申し訳ございませんでした。こんなに腫れてては歩くのに困難ではありませんでしたか?」


「いや、大した事はない。それよりも早く向かわねばならないだろう。」


「それは、そうなのですが、待ってて下さい。何か応急処置が出来る物があるかバッグの中を探して見ますね。」


 ルルーシアはバッグの中に応急処置が出来る物がないか調べてみた。


 レヴィはそれを見て、バッグの中に何か入ってないか調べてみた。


「クレイデイル様、少しお待ち下さいませ。」


「おい!無いなら無いでいい!俺は早く城に行きたいんだが?」


「ちょっと待ってて下さいね。今探してますから……。」


「変ですね。応急処置用に準備しておいたはずなんですが?確か城を出た時にはあった筈なのですが。」


 クレイデイルは、2人のやり取りを見ていてイライラしていた。


「レヴィ。いつもお前がちゃんと準備をまともにしている所など見た事がないが?」


「クレイデイル様!そ、それは……。」


「それに、今まで言わないでおこうと思っていたが、ルルがまともな道具やアイテムを持っている所を見た事がないのだが。それとも昔よりはまともになったのか?」


 クレイデイルはあまりにもイライラしていた為、暴言を吐き始めた。


 クレイデイルは今まで2人に対し言えずにいた事を洗いざらい口にした。


 レヴィとルルーシアは、クレイデイルの話を正座をしながら聞いていた。


(クレイデイル様が、ここまで私の事を見ていてくれていたのですね。それならば、言われた事を直さなければ……。)


 レヴィはクレイデイルの説教を喜び聞いていた。


(なるほどですね。しばらく会っていなかったにもかかわらず、クレイデイル様は私の事を覚えていてくれた。それに、ここまで私の欠点が分かるなんて流石ですわ。)


 ルルーシアはクレイデイルに熱い眼差しを送っていた。


 そして、クレイデイルは、今までの2人への不満が蓄積していた為、しばらく暴言と説教が続いたのだった…。

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