1話〜城に辿り着き

 ここはシェイナルズより遥か南東に位置するクレアロゼ地方。


 遥か昔、ここにはかつてクレアロゼと言う国があった。


 シェイナルズとの戦争に負け国は滅んだ。


 しかし、その数年後このクレアロゼの者の中から英雄と呼ばれる者が現れた。


 その者は自分の国を作りピースバーグと名付け、シェイナルズ国に復讐を果たした。


 その頃、魔族と人間の間に争いが絶えず、それを防ぐためお互いの同意の元、人間領土と魔族領土に分け境界線を敷き、大規模な範囲に関所を設けた。


 その後、その英雄はこのクレアロゼには誰も寄せ付けないようにする為、この土地をクレアロゼ地方と名付け、ピースバーグ国の領土とした。


 そして現在も、ここはピースバーグ国の領土として扱われてはいるが、その詳細を知る者は居ない。



 ブラット達は城の近くまで来ていた。


「まだ歩くのか?」


「ブラット、もうへばったのか?」


「さっき休んだ筈だが?」


「うんうん、まだ休むには早いと思うんだけど?」


「ブラット、どんだけ体力ないのよ!」


「確かに、まだ休むには早すぎますね。それに、早く城に向かわなければ暗くなってしまいますし、お腹も空いてしまいますしね。」

 

「あー 、えっと、そうだなぁ。」


 ブラットは苦笑した。


「えっとね。前から聞こうと思ってたんだけど。フェリアって女神様なんだよね?」


「はい、そうですが、いきなりどうしたのですか?」


「んー、会った時から思ってたんだけどね。女神様でも寝たり食べたりするんだなぁって。」


「それはですね。普通の女神ならそれは無いのですが。私は今は人間の姿をしているからという事にしておいて下さい。」


「ふ〜ん、そっかそれならそれでいいけど。」


 コトネは何となくそれ以上突っ込まない方がいいと思い言うのをやめた。


 そしてブラット達はひたすら歩き数時間が過ぎ目的の城に辿り着いた。



 ……この城は8角の形をしていて、三階建ての煉瓦造り、四隅には塔が立っている。


 屋上にはテラスがあり、くつろげる空間になっている。


 城内に小さな中庭があり、天井はドーム状の特殊なガラス張りで開閉式だ。


 四隅の塔は見晴らし台になっており、その内3ヶ所の塔は6階まである。


 だが城の入口から向かって左奥の塔のみ、10階以上はあるであろうほどに高く、ひときわ目立っていた。


 そして、この城の地下には研究施設がある。



「ふぅ、やっとついたな!」


「ええ、ここがブラットの為に作られた城なのですね。」


「ブラットには、何か勿体ないような城だね。」


「確かにな。ん?そういえばブラットはどこだ?」


「あれ?そういえばアイツいないね。」


 サアヤ達は辺りを見渡し後ろを振り向いて見ると、ブラットは約30メートル離れたところでうつ伏せで倒れていた。


「……って、まさか!?」


 フリックは呆れながらブラットの側に近づいていった。


 フェリア達もその後を追った。


 フリックはブラットの側に来ると片膝をつき覗き込み、


「ブラット、もうへばったのか?」


 ブラットは横になりながら半目でフリックを見ると、


「はぁはぁ、そんな事言っても、もう無理歩けないぃ……少し休ませてぇ……。」


 サアヤはブラットの側に来るなり、


「ブラット、城は直ぐそこだ!こんな所でへばってどうする?さあ、行くぞ!!」


 サアヤはブラットを無理矢理立たせると、腕を掴みそのまま城まで引きずって行った。


「ちょ、ちょっと、い、痛いってば……。」


 ブラットは引きずられ、痛さで半泣きしていた。


 フェリア達はその光景を見て呆れながら後を追ったのだった…。

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