2話~謎の神と皇帝マグド
ここはクレアロゼのブラットの城付近。
マグドはブラット達の後をつけ城に辿り着き、岩陰から眺めていた。
(さて、どうする?城に来たは良いが、中の様子が気になる。しかし、どうしたものか?)
“マグド、聞こえているか?”
マグドは問いかけられ目を閉じた。
(……何の用だ?)
“貴様、神である私の忠告を無視するとは、どういう了見だ?何故、我の忠告を無視し城を出た!?”
(私はもう誰の言葉も信じない。それがたとえ神の言葉だとしてもだ。私は私がこの目で見た事だけを信じると決めたのだ。)
“貴様は、神である私の言葉を信用出来ぬというわけだな。それならば、我にも考えがある。”
謎の神はマグドを操る為に術をかけた。
するとマグドは急に頭を抱え苦しみ出した。
(クッ、またか、止めろ!?もう沢山だ!! グワァ、はぁはぁ、私はもうこれ以上、神に協力するつもりはない。)
“やはり、ガルドが術から解かれた影響のせいか、術がさほど効かなくなっている。クッ、シグムラカンめぇ、余計な事を!それならば更に強い術を使うまでだ!! ”
謎の神は新たに違う術をマグドに掛けようとした。
その瞬間、マグド目掛け聖水の入った瓶が投げつけられ頭から聖水を被った。
マグドは聖水をかけられ、一瞬何が起きたのか分からずにいたが、聖水の瓶が投げつけられた方をみた。
そこにはガルドがいた。
“ま、まさか、不味い事になる前に退散した方が良さそうだな。”
ガルドはその場で目を閉じ、
(おい、待て!! てめぇマグドに何をしやがった!?それにお前は確か……。)
しかし、その言葉を無視し謎の神は姿を隠した。
(クッ、逃げやがったか。だが、あの神は確か上位の神の1人……でも、何でマグドにこんな事しやがる?)
ガルドはマグドの側に来ると、
「おい!何でお前がここにいる?」
「やあ!ガルド。さぁ何でだろうな。それはそうと、すまない助かった。」
「ふぅ、まあだいたいは察しはつくが。そういえばお前、昔みたいに抜け出して来たのか?」
「ああ、あそこにいると自分が自分じゃなくなりそうで怖くてな。」
「ん?それだけじゃねぇだろう。お前の事だ、何らかの方法で、この城の事を知り興味本意で見に来たんじゃねぇのか?」
「……ガルド、ああそうだ。急に昔のような気持ちが湧いて来て、抜け出しあの空き家に行ってみた。」
「なるほどな。そこで俺達の話をこっそりと聞いていたってわけか。」
「そういう事だ。」
「それはまぁいいが、お前いつから神と話せるようになった?」
「それなんだがな。ふぅ、ガルドここじゃなく別の所で話さないか?」
「それは構わねぇが。」
カトレア達が後から来て、
「あら、お久しぶりですわね。んー、今日はどちらの名前でお呼びしたら良いのかしら?」
「おお、カトレアじゃないかぁ。久しぶりだな。カトレアと会うのは、最後のあの時以来か。しかし…昔も今もカトレアの美しさは変わらないようだな。まさかカトレアもここに来ているとは思わなかったがな。」
マグドはカトレアに見惚れていた。
「おい!それでどっちで呼べばいいんだ!?」
「あー、そうだった。そうだな……素性を知ってる者はここに数名いるが、グドルフの方が良いかもしれんな。」
「グドルフという事は以前のように、お忍びという事になりますわね。」
「ああ、そうなるな。」
ヴィオレッタは
「私は、ヴィオレッタ=アッズィロと申します。先程から、話を聞いていたのですが?グドルフさんって何処かでお会いした事があるような気がするのですが?」
「……恐らくは、初めてだと思うが。アッズィロと言うとレックス様のご息女様ですかな?」
(アッズィロだと!何故レックスの娘がこんな所に?だが、今の所は気づいていないらしい。多分バレても問題ないとは思うが、確かヴィオレッタは父親であるレックスをかなり嫌っているという、噂を耳にしているしな。)
「ええ、そうですが、お父様の事を知っていますの?」
「良く存じ上げております。昔、かなり世話になりましたので。」
「そうなのですのね。」
(んー、何処なのでしょう?やっぱり何処かでお会いしているような気がするのだけど。)
「ガルド、そういえばビスカはどうしたのだ?確か一緒にいたと思ったのだが?」
「あー、ビスカか。アイツならブラットの幼馴染のグレンと後から来る筈だが。」
「おい!ビスカに何かあったのではないだろうな?」
「ビスカは、大丈夫なのですが。グレンが魔物と戦いその時に足に軽傷を負い歩けない為、ビスカと共に近くの村で休んでいます。その時ちょうどレヴィとルルーシアは、お兄様に会いに先にこの城に行ってしまいましたので。」
「あっ、そうでしたの。急いで城に行かないと行けませんの。」
「ああ、そうだったな。グドルフ、お前はどうするんだ?城の中を見たいんじゃねぇのか?」
「ああ、だが良いのか?」
「さっきの事もあるしな。お前をここに1人置き去りにする訳にもいかねぇだろう。」
そして、ガルド達は城の中に入って行ったのだった…。
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