第46話
デザートのアイスクリームを食べ終えた4人は、ふたたびリビングに戻った。
「あのう、お願いがあります」
両の拳を膝の上に置いて河合老人を見る。
「なんだね?」
「みんなにあのガラスの飾り棚を見せたいんですが、だめですか?」
金太はどうしてもみんなに飾り棚のなかの宝物を見せたかった。
「あんなものが見たいのかね? 構わんよ。金太くん、みんなを連れてってあげなさい。扉に鍵はかかってないから、好きに見ていいよ」
「ほんとですか、おいみんなすごいもん見せてやるから、ついて来いよ」
金太は、跳ねるようにソファーから立ち上がると部屋の隅に向かった。
ほかの3人は、なにがあるのか知らされないまま怪訝な顔で金太のあとについた。
4人はガラスの飾り棚を囲むと、まるで水族館の水槽を覗き込むように神妙な顔を見せている。
ノッポは外国のコインに、ネズミは懐中時計に興味を示した。アイコはイギリス製の陶器の人形から目を離さなかった。
河合老人からお許しが出ていたこともあって、4人は目につくものを片っ端から手に取った。
「秘密基地にある宝箱とはずいぶん違うなァ」
ネズミがポツリと洩らした。
秘密基地に置いてある金属製の菓子箱には、壊れかけのほとんど役に立たないものばかりで、いまでは誰も開けようとしない。
「でも、あれはあれでぼくらの宝物だ」
金太はたしなめるようにいった。
高価な宝物を充分に楽しんだ4人は河合老人のところに戻った。
「満足したかね? 見たかったらいつでもおいで。10月になったら孫も帰ってくるから、そしたらまたみんなで遊べばいい」
「ありがとうございます。そのときにはまたこのメンバーで遊びに来ます」
金太がソファーから立ち上がってお礼をいい、帰ろうとしたときだった。
「ちょっと待ちなさい」河合老人はリビングの隣りの部屋に入ると、すぐと白いビニール袋を提げて戻って来た。「これを君たちにあげよう」といいながら袋を覗き込んだ。
なかから出て来たのは、星条旗模様のボールペンと鮮やかな鳥の羽根のついたドリームキャッチャーだった。
「たいしたもんじゃないけど、暗号メッセージを解読できたご褒美だよ」
河合老人はひとりひとりに手渡した。
金太はお土産をもらって嬉しい顔を見せたものの、正直いってドリームキャッチャーというものをどういうものか知らなかった。
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