第42話
『スイカツラノウレイヲアヤマチトヤメバウシ コサワグ』
「金太はパソコンに入力するとき、爺ちゃんのとまったく同じやってゆうとったけど、よお見るとこの部分だけほかの部分と文字の間隔が違うやろ。これは、同じ間隔だとすぐに解読されてしまうから、爺ちゃんはあえてここだけ文字数を変えてイレギュラーにしたんや。そやけん逆読みしてもわけのわからん文章になったト」
暗号が解けただけでは気のすまなかったノッポは、ようやく笑顔を見せた。
「とにかく暗号は解読できたわけだから、さっそくお爺ちゃんに電話しよう」
すると、ノッポがスマホを金太の前に差し出した。すでにそこには保存してある爺ちゃんの家の電話番号が表示されてあった。
金太は通じることを願いながら呼出し音を聞いている。なかなか出る気配がしない。諦めて耳から話そうとしたとき、声が聞こえた。君代さんの声だった。
金太は事情を説明してお爺ちゃんに代わってもらった。
「山井金太です。この前もかけたんですが誰も出ませんでした。門のところに置いてあった暗号ですが、解読できました。いえ、ぼくひとりでやったわけじゃありません。友だちと4人で力を合わせて解きました。はい。はい。わかりました。そのときに友だちも一緒じゃだめですか? ありがとうございます。じゃあ、日曜の11時に行きます。はい。さようなら」
スマホを耳から離した金太は、
「みんな、今度の日曜に河合のお爺ちゃんの家に招待された。一緒に行くよな?」
「もちろん行くさ。暗号の答えをお爺ちゃんの口から聞かんといかんけん」
ノッポは胸を張っているように見えた。
「そんな大きな家はこのチャンス逃したらなかなか見られないから、なにがなんでも参加する」
ヘアーゴムでとめた髪を引っ張りながらアイコはいった。
「みんなが行くっていうのに、ぼくだけ不参加というわけにいかないからね」
ネズミは勿体ぶったような言い方をした。
「いや、ネズミは勉強が忙しいからそんなに無理しなくていいよ」
金太は残念そうな顔でいう。
「うそ、うそ。本当はぼくもみんなと一緒にどんな家なのか見に行きたい」
「はっはっは。冗談だよ。みんな一緒に行くに決まってるだろ。ちょっとからかっただけだよ」
金太はいい残して部屋を出て行くと、コーラの入ったグラスを4つ運んで来た。
「さあ、これで無事暗号が解読できた乾杯をしよう。まあ、ほとんどノッポの功績大だけどな」
銘々グラスを持つと、金太の音頭で乾杯をした。強烈な炭酸の刺激は咽喉の奥で踊った。まるで夏が弾けたようだった。
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