第41話

「まず金太、マーカーペンをセロテープで長く繋いでくれんネ」

 部屋に戻るなりノッポは金太に頼む。

「OK。これでいいか」

「いいか、みんな。いまからこの長い紙を巻きつけるけん、ようく見んしゃい」

 細長い紙を慎重に巻きはじめる。3人はノッポの指先に釘づけだった。

「やっぱ思ったとおりやった」ノッポは仮説として頭のなかにあったものが、いま実験をしてみてようやく確信を得た。そこには9つの文字が並んでいた。

『スツウヲマヤウコグ』

「これって暗号なの?」

 ネズミは、ちんぷんかんぷんな文章に頭がおかしくなりそうだった。

「いや、ずいぶん答えに近づいたと思うんやけど、まだ解読できたわけじゃなか。そやけんみんなで解読しょ」

 ノッポの瞳はすべてが映り込んでいるように耀いている。

「そうね。このまま読んでも意味不明だから、反対から読んだらどうなる?」と、アイコ。

「『グコウヤマヲウツス』となるよな」

 金太もネズミと同じような顔でいう。

「おい、ちょっと、これ見てみんね」

 スマホで文字を入力したノッポがみんなに見えるよう画面を立てる。

 文字を打ち込んだ瞬間に、『愚公山を移す』ということわざが表示されたのだ。

「これだ、これだ、これに間違いない」

 金太はすべてが解決したかのような喜びようだ。

「なるほど、このことわざにはそういう意味が含まれとったト」ノッポは自分ひとりで感心したあと、「なあみんな、これは、愚公という老人が目障りだといって山の土を崩し、別の場所に移したという話で、中国の毛沢東が演説のなかで引用らしい。つまり、こつこつと努力をしたらいつかは必ず実を結ぶという例えだ」

「なるほど。ありがと、ノッポ。おまえは本当に頭がいいよな。オレにはどう考えてもわからなかった暗号を、ちょっとしたヒントで解読してしまうんだから」

「そういうことだったんや」

 ノッポはお爺ちゃんが金太に遺した細長い紙をしげしげと見ながらいった。

「どうかしたの」

 不満げなノッポを見て、マーカーペンのキャップを回しながらアイコが訊く。

「やっぱりそうや。ここんとこ見てみんね」ノッポは指を指した。

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