第31話
しばらくスマホを耳に当てていたが、かぶりを振りながら、
「だめだ、出ない。やっぱ留守にしてるみたいだ」
「やっぱお爺さんの電話番号やったト?」
「わからんけど、おそらく間違いない」
金太は、ほっとしたような未練がましいような複雑な顔をした。
ほかの3人も結論の出ることを期待したのだが、思いどおりに行かなくて気を落としている。
「いま気がついたんやけど、この細長い紙に書いてある暗号の部分が、真ん中より少し右に寄っとるんやけど、これってなんか意味があるんやろか?」
ノッポは難しい顔をして紙から目を離さない。
「ほんとだ気がつかなかったわ。『金太くんへ』と『1.0』は真ん中に書いてあるのにね」
アイコも訝しげな顔でいう。
「なんにしろ、この状態では金太には申し訳なかが、暗号解読には辿り着けそうもなか。こうしたらどげんね。別に期限を切られてるわけじゃなかけん、みんなさえよかったらもうしばらく考えてみんね。ぼくの都合をいうと、8月の13日から3日間九州ば帰るけん、それ以降だったらもう1度集まってもよかよ」
「正直いって、私もちょっと計算式とか英単語は食傷気味だから、気分転換に暗号解読に集中してみてもいいわ」
勉強好きのアイコがこんなことを口にするなんて意外だった。
「カアさんが目を吊り上げて監視してるけど、暗号解読ってスパイみたいで面白そうだから、仲間に入るよ。夏休みくらい勉強から離れたいじゃんね」
ネズミは、丸イスから立ち上がって楽しそうにいった。
「よし、わかった。きょうみんなで相談して、1歩前進したので、今度は違う方向から解読の糸口を探そう。この次集まるときは、この小屋じゃなくてオレの家にしようか。こんな暑いところじゃとてもじゃないけど、名案は浮かばないからさ。それと、もしこの暗号がうまく解読できたら、みんなをあの豪邸に招待するよ」
「そんなに大きい家なの?」と、ネズミ。
「大きいに決まってるじゃん。庭だって広いし、池もある。ネズミがいままで見たことないくらい大きな家だ」
金太は両手を広げていった。その格好を見た3人は、ガラス戸が外れそうな大きな声で笑った。そして4人は集まり、手を重ねると、「オゥ」と掛け声をかけたあと、小屋を出てそれぞれの家に帰って行った。
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