第29話

 全員が机に集まって紙切れを覗き込む。

『すからういあま……』(順・1文字)

『すつうをやとば……』(順・2文字)

『ぐさしばやちや……』(逆・1文字)

『ぐこばとやいの……』(逆・2文字)

 やはり金太と同じようにパソコンで拵えたものを印刷してあった。

「鏡文字はまったく切り離してよかと思う。ここにかいてあるんは、飛ばし文字の順読みと逆読みをまとめてみたんやだけど、まったくなんのことかわからんけん、違う方法ば考えたほうがよか」

 これまでの真剣に取り組んで来たのだろう、言葉に自信が漲っていた。

「几帳面ね。ノッポらしいわ。ねえ、ねえ、そこまでやったんだったら、アルファベットも試した?」

「いや、それはやっとらん」

「だったらここでやってみましょうよ。だって思いついた方法すべてを試みて、順次消去していかないと正解に辿り着けないでしょ」

 確かに正論だ。事件の捜査と同じで、消去法によって余分なものを排除したあとに真犯人が浮かび上がるのだ。

『SIAUADRI……』(順・1文字)

『SKUNDOMI……』(順・2文字)

『GWASKSUA……』(逆・1文字)

『GAKIAYOI……』(逆・2文字)

「やっぱり無理みたい。ということはこの方法じゃなくて、別の方法を探さないと……」

 アイコはコメカミに拳を当てて懊悩する。

「オレが書いた漢字に変えたのはどう?」金太がいう。

「あのさあ、カタカナを漢字に変換させただけでしょ。もしそれで解読できるんだったら、カタカナにした意味がないじゃない」

 アイコの言葉に遠慮というものがなかった。

「あッそうか、そういわれりゃそうだよな。全然気がつかなかった。失敗、失敗」

 金太は照れ臭そうに頭を掻いた。

「金太らしいわ、ふ、ふ、ふ」

 口もとに手を当ててアイコは笑った。

「金太、この最後にある1.0CMっていうのは?」とノッポ。

「いや、メインの文章に気を取られて、それどころじゃなかった」

「ひょっとしてこれが重要な鍵になるかもしれん」

 ノッポは険しい顔になって天井を見上げた。

 夏の陽射しが薄っぺらな屋根を焼きつけて来る。さっきよりはずいぶん室内の温度が上がっているみたいだ。

「ちょっとここでティーブレイクとしようか」

 そういうと、金太は空になったコーラのボトルを集めて小屋を出て行った。

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