第19話 第2章 遺されたメモ

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 早いもので夏休みも10日が過ぎた――。

 河合老人のアドバイスのお陰でこのところ1日2時間集中して勉強机に向かっている。たった2時間と思われるかもしれないが、これまでまともに勉強したことのない金太にしてみれば気の遠くなる時間の長さだった。これは自分自身でも愕いている。

 これまでずっと悩んできた勉強のことを見事に解決してくれたそんな河合老人のことが好きだった。いまでは老人に足を向けて寝れないくらい感謝している。

 あれから2度ほど河合老人のところに顔を出している。その度に勉強する時間を少しずつ長くしていることを河合老人に報告すると、老人は金太が自分の孫でもあるかのように相好を崩した。

 金太は気持が憩まることで友が淵公園の釣り場が好きだったが、河合邸のリビングも好きな場所のひとつだった。飾り棚にも興味を惹かれたが、あの部屋の空気感がなんとなく肌に合っているような気がした。

 ある日、いつものように午前中に釣りに出かけた金太だったが、ヘラブナより期待していた河合老人が姿を見せなかった。なにかあったのだろうか、と訝りながらその日は真っ直ぐ家に帰った。

 昼食をすませて自室に閉じこもった金太は、勉強をするつもりで国語の参考書を開いてみたものの、河合老人のことが気になって同じところを堂々巡りするばかりで、まったく問題が頭に入って来なかった。最近こんなことはなかった金太だったが、机から離れるとベッドに背中から倒れ込んだ。

(まあ、明日また会えるかもしれない)

 金太は自分に言い聞かせると、いつの間にか濃緑のゆっくりと渦を巻く水のなかに引き込まれ、それと同時に徐々に意識が手の届かない場所に逃げて行くのだった。

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