第12話
4
河合老人の家に招かれてから1週間が経った。
待ちに待った夏休みだ。午前中で終業式がすんだ金太は急いで家に帰って来た。
だが、すぐに河合老人の家に訪ねるわけではない。適切なアドバイスを受けるには、まずこちらのいいたいこと、悩んでいることを整理して相手にわかりやすいようにまとめ上げなければならない。とりあえず納得できるようにレポート用紙に箇条書きを拵えた。びっくりするくらい汚い字だった。
① 自分の進む道をいまから決めておかなければならないのか。
② どうしたら苦手な教科を克服できるか。
③ 最短の時間でみんなに追いつくにはどうしたらいいのか。
そして最後にこんな質問を付け足した。
④ これまで仲良しだった友だちは受験勉強を境に離れ離れになってしまうのか。
なんとか訊いてみたいことをそこまで書いたとき、急にノッポやアイコの顔が浮かんで来た。そういえばふたりの顔をしばらく見たことがない。そのうちに夏休みに入ってしまった。連絡を取るのはきょうぐらいしかないと考え、もう一度メーラーを立ち上げた。
ノッポへ
お久しぶり。ずっと顔を見てないけど元気ですか。
ノッポのことだから毎日コツコツを勉強してるんだろうね。
ぼくのほうは相変わらず学校の成績はわるいし、これからどうするか悩んでる 最中。
2年前みんなで「ロビン秘密結社」の秘密基地で遊んだのが懐かしいよ。
もう一度あの頃に戻れたら楽しいだろうな。
ところで、今年の夏はなにかイベントがあるのかい? それともやっぱり勉強 漬けの夏休みなのかな?
時間があるようだったら、たまには会いたいです。
金太
ノッポにメールを送った金太は、少し胸のなかのモヤモヤが霧消したような気がして、机から離れると窓際で大きく深呼吸したあと、ベッドにごろりと寝転がった。
しばらく瞑目したり、天井の小さな染みを凝視したりしていたとき、メールの着信音が聞こえた。
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