第36話 繋がる指輪
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――わたしとお友達になってくれるのー?
――なに言ってるのー。私達、もうとっくに友達でしょ!
――やったやったー! じゃあさ、お友達のお姉ちゃんに、ひとつだけお願いごとをしてもいいー?
――お願い?
――うん! あのね……
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あれから、自分がどうやって家に帰ったのか、凪咲はよく憶えていなかった。
ただ、家に着くなり、緊張の糸が解けたように泣き崩れた凪咲を、夏澄と玲夏が部屋まで連れ行ってくれたことは憶えていた。
知らぬ間に浴衣からルームウェア用のティーシャツとショートパンツに着替えてベッドに横になっていた。
意識はあるけど、身体中から力が抜けたように指一本動かない。
分かっているのは、空に想いが届かなかったことだけだった。
――ごめん……凪咲の気持ちには、応えられない
――この、指輪があるからだ
――俺は、幸せになることに、向いていないんだ
彼の言葉達が甦ってくる。
目の前で力なく横たわっている左手の中で、ゆらりと指輪が光る。
これまでなんとなくお互いに口には出してこなかった指輪のことを、彼ははじめて口にした。
彼の言葉の意味は分からなかったけど、考えるだけの余裕が、今の凪咲には無かっ
た。
だが、意図せずその意味はすぐに分かることになる。
凪咲が深い眠りに入ると同時に、左手の薬指から、凪咲の中に溶け込むように誰かの心の声と映像が流れてきた。
これは、これまで見てきた彼の景色。
即ち、彼の痛み――――
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