第44話 ジェロンド山
この場所で決定でいいか。」
5人で話し合い、採掘に向かう場所を決めた。
向かう先はジェロンド山。
大きな洞窟が一つあるが入り口までの道は厳しく、入り口に向かうまでにシャールクに襲われるものもいるそう。
危険な分、品質の高い宝石が取れる場所らしい。
カルセベルがあるかどうかはわかっていないが、ジェロンド山にカルセベルがあったとするならかなり高い品質のカルセベルが取れるだろう。
「とにかく行ってみるしかないだろ。」
レオの言うことももっともなので、採掘師を1人連れてジェロンド山に向かうことにした。
ーーー
今回の目的は光のカルセベルの回収。
なぜ闇のカルセベルも一緒に探さないのか聞いたが、闇のカルセベルは特定の条件下でなければ生成すらされないだとか。
ジェロンド山は遠くからでも大きく見えたが、近くに来てみるとさらに大きく見える。
しかし、山に生気は感じられない。
緑は深く、自然は生き生きとしているのに対して生き物が活発に動いている気配はない。
自然を拝みに来るのにはもってこいの山かもしれないが、バードウォッチングには向かないだろう。
「変な山ね……。なんと言うか…山らしくない山だわ。」
「採掘しでも近づきたがらない山だしね。そもそも山の雰囲気も不気味で、いかにも何か出てきそうだからね。」
ソレイユの言葉にキキョウは自分の知っていることや感じたことを言った。
進んで入ろうとは思わないだろうなぁ。
リズは心の中でそう呟いた。
6人は山を登り始めた。
ーーー
「遠くない?」
「まだそんな登ってないぞ?大丈夫か?」
ソレイユは体力がないらしく、そこまで登っていないがもう疲れてしまったらしい。
体力がないのは仕方がないので、レオがソレイユをおぶることになった。
「洞窟の入り口はどこなんだ?」
「だいたい中腹よりしたら変にあるらしいけど、詳しいことは知らない。」
リズは心の中で『そこは調べておこうよ!?』と突っ込んだが、心の中なので誰にも聞こえていない。
調べてみても出てこなかったとキキョウは言った。
大方品質の高い宝石がわんさかあるので秘密にしておきたいんだろう。
キキョウはそう予想した。
「それじゃあ日が暮れても見つからない可能性があるってこと?」
「あ……。まぁ、なんとかなるだろ…。」
目を逸らしながらキキョウは呟いたが、正直心配だ。
探し物ができる魔法なんかがあればいいのだが、そもそもそんな魔法があるかもわからないし、仮にあったとしてもどの属性の魔法なのかもわからない。
「ストック、なんとかならないか?」
「俺の魔法道具を使えば大丈夫だ。」
ストックというフェードはついてきた採掘師だ。
彼は魔法道具を持っているらしく、薄緑のカルセベルらしき宝石のついた丸い道具を出した。
持ってるなら先に言ってよ!?
リズの心の声は誰にも聞かれることはなかった。
ストックが魔法道具を使うと、薄緑の宝石から同じ薄緑の光の線が出てきて、どこかへ導くかのように線は伸びていった。
「あっちだ。」
ストックは光の線を頼りに歩いて行った。
ーーー
「ここか…。」
チェスが言葉を失ったように言葉を発した。
洞窟の入り口はとても大きく、中をのぞいてみようとしても暗くて奥が見えない。
正直こんな得体の知れない化け物やシャールクが出てきそうな場所に入りたくないと思いながらも、自分たちがアルフを仲間に引き入れるためには入るしかないので、諦めて洞窟へ入って行った。
ーーー
中はとても暗く、リズの光の魔法によってやっと周りが見えるくらいの明るさになった。
「予想以上に暗いな…。」
「ここまでくらいだなんて思ってなかったな。」
チェスは自分の予想していたような洞窟との違いに声を漏らし、キキョウはもっと明るいと思ってたと言葉を発した。
「早めにカルセベルを見つけないと帰れなくなるぞ。」
ストックの脅し文句じみた言葉にソレイユは疑問を持った。
「どうして?クリーム色のカルセベルを使えば光の魔法は使えるんじゃないの?」
「俺たちはクリーム色のカルセベル、つまり光の魔石を持ってない。」
どうやらカルセベルは品質以外にも生成される度合もあるらしい。
光のカルセベルは比較的生成されにくい魔石のようだ。
今、光の属性を持っているのはリズしかいないので、リズの魔力が切れる前に早めに探索してカルセベルを見つけて採掘せねばならない。
しかし焦ったところでカルセベルが出てきてくれるわけではない。
長い時間をかけて根強く探したいところだが、あいにくその時間もない。
「ストックさんの風の魔法は使えないのか?」
レオの純粋な疑問に、ストックは困ったような顔で答えた。
「カルセベルに探し物の魔法を使っても反応してくれないんだ。」
そもそも探し物の魔法は魔力を秘めていない物質にしか反応しないらしく、魔力の籠ったカルセベルは反応されないらしい。
魔法も便利なものではないのだ。
もっと便利でもいいのにとも思うが、そんなことになったら魔力を持っているものは神にでも成れてしまいそうだ。
「とにかく探すしかない。生成される条件とかはないのか?」
「あるにはあるが…。」
チェスは条件を聞いた。
条件はあるにはあるが、必ずしもそこにカルセベルが生成されるとも限らないし、全く条件に当てはまってない場所に生成されることもある。
「光のカルセベルの条件は?」
「マグマの近くに生成されることが多いが、マグマの近くには炎のカルセベルも生成されるからな。」
炎のカルセベルの方が生成される条件のレベルが低いらしく、マグマの近くに行ってもあるのは炎のカルセベルばかり。
「とにかく行ってみるしかないんじゃない?」
「マグマを探すか…。いいか?くれぐれも気をつけるんだよ。」
ストックが真剣な顔でもう一度『ちゃんと気をつけるんだぞ。』と言った。
ちなみにマグマの温度は、玄武岩質マグマは温度が1000-1200℃で流紋岩質マグマの温度は600-900℃。
人が触れたら怪我どころじゃ済まない温度だ。
ストックが2回注意するのもわかる。
正直、2回じゃ足りないくらいだ。
ストックは探し物の魔法を使い、薄緑の光をたどっていった。
ーーー
「熱い…。」
「そりゃマグマ付近だからな。」
マグマ付近に方はいいものの、見つかるのは紅葉色のカルセベル、つまり炎の魔石ばかりだ。
根気強くクリーム色のカルセベルを探していると……
「あった!」
リズがマグマに触れるすれすれの場所にあるクリーム色のカルセベルを見つけた。
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