第45話  採掘不可能



今にもマグマに触れてしまいそうな距離にあるカルセベル。


取ろうにも足場もない。




「どうするか……。」


「流石にあんなところにあったら取れないもんね。」




足場を作ることも考えたが、ここにはオスマンがいない。


オスマンはリズたちの中で唯一氷属性を持っている。




「ストックさんは氷の属性ですか?」




まずソレイユがストックに属性を聞いた。


しかし、ストックから帰ってきた答えはソレイユの予想していなかった答えだった。




「氷属性?あぁ。氷の魔法じゃ無理だぞ。」




驚いて目をパチクリさせるソレイユだが、考えてみればわかることだ。


マグマの温度は低くても600℃、氷の魔法を使ったところで氷が溶かされて周りがちょっと涼しくなればいいな、くらいだ。




ならどうやって足場を作るのか、いや、それよりもカルセベルを採掘することができるかすら怪しくなり始めた。




「本当に大丈夫なの?だって氷の魔法が使えないなら……。」


「水の属性を使えばいいんじゃないか?」




リズが悩み始めた時、レオが案を出した。


しかし




「お前たちは急激に起こる寒暖差によってどんなことが起こるかわかるか?」




ストックから急に質問を投げかけられた。


なぜそんなことを聞いたのかわからないが、リズはとりあえず答えた。




「爆発みたいなことが起こるんでしょ?それが……」


「マグマ水蒸気爆発というのが起こるんだよ。」




マグマ水蒸気爆発?


知らない単語が出てきて、リズたち4人とキキョウは頭に❓を浮かべた。





リズたちが意味を理解していないことがわかったのだろう。


ストックがマグマ水蒸気爆発について説明し始めた。




「水ががマグマと直接触れることにより、マグマ本体も同時に細かく砕かれて、水蒸気といっしょに出てくるもののことだ。例を挙げるとすれば、調理中の料理に急に水滴を落とすと水滴みたいなのがフライパンとかから飛び出してくるだろ?」




料理をしたことがあるリズにはストックの言っていることがわかった。


つまりそれに似たことがマグマと水でも起こるということなのか。




リズはそのように解釈した。




「ただマグマ水蒸気爆発はマグマの破片も一緒に出てくるんだ。爆発の強さも普通の水蒸気爆発よりも強い。こんな狭い場所でマグマに水をぶっかけたらみんな吹っ飛んじまう。」




知らなかったとはいえ、リズたちは自分たちがどれほど危険なことをしようとしていたかを知り、ゾッとした。




「じゃあどうするの?」


「土の魔法を使うんだ。」




土の魔法を使うと言ったが、なぜ土の魔法を使うのか、リズたちには理解できなかった。


訳が分からず、リズはストックに尋ねた。




「なんで土の魔法を使うの?」


「なぜって…土の魔法を使って足場を作るからだよ。」




土の魔法を使って足場を作ろうとしていること自体はリズたちにもわかる。


しかしなぜ土の魔法を使うのかがわからないのだ。





そもそもリズたちの周りには土の魔法を使っている人、もしくは土の属性を持っている人がいなかったのだ。




「土の魔法をどうやって使うの?」


「普通はマグマを覆うようにして地面を作り出すんだが…これだとマグマと一緒に埋まっちまう可能性があるな…。」




マグマすれすれともなればいつものように土の魔法を使うことができないようで、もしかしたらマグマと一緒にカルセベルまで埋めてしまう可能性があるようだ。




たとえ埋まらなかったとしても土の魔法の影響、もしくは作り出した地面にカルセベルが擦れたりしたら使い物にならないか、他の魔力を帯びたカルセベルになってしまう可能性があるんだそう。




「じゃあ採掘できないってこと?」




リズは不安と焦燥感に駆られたままストックに質問した。


ストックは何やら難しい顔をしたが、はっきりと言葉を発した。




「採掘できる。ただ、採掘するための準備が足りない。」


「採掘するための準備?でもそれならストックさんが持っているものの中に入っているはずでしょう?」




ソレイユはストックが持ってきていたリュックサックを指差しながら言ったが、ストックは首を左右に振った。




「俺が持ってきているのは"普段の"採掘セットだ。今回みたいなレアなケースの場合に使うものが一切入ってない。それに…。」


「それに?」




ソレイユが先を促すと、ストックは歯切れの悪い、曖昧な言葉でその先を話した。




「あー、なんというか、道具があるにはある、いやないと言ったほうがいいのか?とにかく今の段階じゃこのカルセベルは諦めるしかない。」




「でもせっかく見つけたんだ。他のカルセベルが見つかるかどうかもわからないぞ?」




レオの言うことはもっともで、この洞窟で2個目の光のカルセベルが見つかるとは限らない。


目に見えるところにあるカルセベルを放っておけるほど、今のリズたちには余裕がない。




早くしなければアルフの気が変わって『やっぱりやめた。』だなんてことになる可能性だってある。




「もっとはっきり説明してくれ。そんな曖昧な言葉じゃわからない。」




チェスにはっきりしろと言われたため、ストックは苦い顔で渋々断言した。




「このカルセベルを取るために必要な魔法道具がない。買うこともできるが、そもそも値段が高くて高価なものなんだ。俺なんかじゃ買えない。」




ストックは続けて




「作ることもできるが、そのために必要な材料が2個足りない。」

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