第43話 カルセベル
「本当か!?」
レオが興奮気味にキキョウに尋ねた。
キキョウはコクリと首を縦に振り、続けて説明し出した。
「君たちにも話しただろ?この街は魔法の霧で包まれているんだけど、別に町長が1人でずっと魔法を使い続けてるわけじゃないんだ。そもそもこの霧の魔法は自動的に発動されてるんだ。」
初めて聞く新情報にリズたちはびっくりした。
自動的に発動されている。
そんなこと思いもしなかったリズたちは、魔法についてまだまだ知らないことがたくさんあるのだなと思った。
「自動的に発動される?どうゆうことだ。」
チェスが何を言っているのか、どうゆうことかわからないとキキョウに聞くと
「魔法機械を使ってるんだ。」
「は?魔法機械ってあの?」
チェスは面食らった様にキキョウの言葉を繰り返した。
キキョウはふざけた様子もなく、本当のことを言っている様だった。
「魔法機械にカルセベルっていう魔法を含んだ宝石を装着して、その宝石の魔法で動いてるんだ。」
「カルセベル?」
リズが頭に❓を浮かべていると、キキョウがわかりやすく教えてくれた。
カルセベルという石は、自然界ではあまり生成されない貴重な石らしく、そもそもなぜカルセベルが生成されるのか、それはいまだにわかっていないそう。
人工的に作ることもできるらしいが、人工的に作られるものは純度が低いものが多く、すぐに石に蓄積されている魔力が切れてしまう様。
自然で生成されるものは貴重な分純度が高いものが多く、透き通る様な色が強いほど純度が高い。
しかし、機械に使うカルセベルはどれでもいいわけではなく、カルセベルにも属性や相性などがあるらしい。
紅葉色は炎、紺色は氷、薄花色は水、黄色は電気、深碧は草、紫苑色は毒、クリーム色は光、薄緑は風、墨色は闇、赤褐色は土、銀色は精神、青磁色は治癒。
中には似ている色のカルセベルもあるらしく、注意が必要なんだとか。
他にも保存方法に気をつけなければいけないとか、取り扱いには注意しないといけないとか、色々と気をつけなければいけないことが多いのでめんどくさいそう。
「そんな石聞いたこともない。本当にあるのか?」
「え?君たちのところにはないの?」
どうやら彼らフェードの中ではカルセベルの存在は普通らしい。
キキョウはポケットの中から何か取り出した。
それは紫色の石だった。
「これもカルセベルなんだけど、これは江戸紫色だろ?こんな石今まで発見されたこともないんだ。」
確かに、今までの説明の中で紫系統のカルセベルは一個も出てこなかった。
本当にキキョウの持っているものがカルセベルかも不安に思う。
「これはおじいちゃんからもらったもので、今までお守りとして肌身離さず持っていたんだ。街の人たちには見せちゃダメって言われていたんだけどね。」
『まぁ、君たちは街の奴らじゃないから見せてもいいと思ってね。』彼は笑ってそういった。
「そんな不思議なものがあるのか…。」
リズたちの暮らしていた人間界では、魔法道具開発学や科目があったが実際にできた道具や機械は数えられるほどしかない。
カルセベルと呼ばれる詰まる所、魔石があれば魔法道具開発はとても楽なものになるし、自分の持っていない属性の魔法を使うことも可能になるし、魔法道具の価格も下がるだろう。
と言っても、リズたちは魔法道具がどれほど高額で高級品なのか、魔法道具の開発にどれほどの面倒や危険か重なっているのかを知らないのだが…。
「でもカルセベルの採掘は色々と面倒くさいらしい。おじいちゃんからいろいろ聞いてたんだ。」
キキョウのお祖父さんの話によると、カルセベルは掘り出した後の扱い方も気をつけなければいけない、そのくせ採掘まで気をつけないといけないことがあるらしい。
雑に掘り出したりしようものならカルセベルはすぐに砕けてしまったり、使い物にならなくなったりするらしい。
ただ砕け散っただけなら装飾に使ったり、カケラだけでも動かせるほど魔力消費量が少ない魔法道具に使ったりするらしい。
しかし、使い物にならなくなったものは色も素鼠色に変色し、変色した素鼠色もくすんでいて装飾に使えるように見栄えのいいものではないため、だいたい捨てられるか石を集めるのが趣味な石マニアなどに売ったりすることもあるらしい。
そもそもなぜ使い物にならなくなってしまうのか?
リズは不思議に思い聞いてみた。
「なんで使えなくなっちゃうの?」
「あぁ、俺も昔おじいちゃんに聞いたなぁ〜。」
どうやらカルセベルにはコア、つまり中心部のような場所があるらしく、それが壊れてしまうと石に蓄積されていた魔力が消失してしまうらしい。
コアはとても繊細らしく、大きな衝撃を与えるとすぐに砕けてしまうらしい。
とは言っても、コアに直接響く場所に当たらない限り使い物にならなくなる状態になることは滅多にないらしい。
「アジュガには採掘師もいるから、町長に直談判するためにも全種類のカルセベルを取ってきてもらおうと思ってるんだ!」
「どうして?」
ソレイユがキキョウに聞くと、キキョウは『話を最初に戻すぞ』といい、説明しだした。
「霧の魔法を出し続けている魔法機械はカルセベルで動いているんだけど、町長たちの話によるとカルセベルの力がなくなり始めているらしいんだ。今、俺たちの手元には光と闇のカルセベルを除く最高品質のカルセベルがある。」
その二つを取りに行くのか?と、チェスが聞くと
「闇のカルセベルは他のみんなが取りに行ってるんだ。」
自分たちが取りに行くのは光のカルセベルらしい。
霧発生に使う機械に使われているのはカルセベルの中でも特に品質が高いものらしく、採掘しようにもそもそも生成されていないらしい。
街にある採掘場所ではの話だが。
「だから俺たちは街の外の鉱山や山に行って最高品質のカルセベルを採掘しようと思ってるんだ。」
果たして本当に最高品質のカルセベルを手に入れることができるのだろうか?
リズたち4人は不安を持ちながらも、カルセベルを採掘師にいく場所をキキョウとともに決め始めた。
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