第37話  対面



最初は視界もはっきりしていたが、秘境の奥に進んで行くにつれ、だんだんと霧がかかってきた。


景色は大して変わっていないが、霧のせいか少し不気味にも思えてきた。




「なんだ不気味……。ここはいつも霧がかかってるの?」


「晴れてる時もあるぞ。しかし…今日はやけに霧が濃い。」




「いつもこうじゃないのか?」


「いや、前に来た時も霧がかかっておったが、ここまで濃くは無かったはず…。」




いつもより濃いらしい霧に戸惑いながらも、リズたちは奥に進んでいった。




ーーー




「ニックの情報があっておるなら此処のはずなのじゃが…。」




先ほどの景色とは違い、比較的ひらけた場所にリズたちは来ていた。


しかし、霧が濃いためこの場所がひらけているかどうかはリズたちにはわからなかったのだが。




「なぜ此処に居る?確か天界にいたはず…とにかく此処から立ち去れ。」


「随分と酷い挨拶じゃな。妾が折角会いに来てやったと言うのに。」





突然低い声が聞こた。


しばらくすると、霧の中から全身に雷を纏わせた鳥のオプティルトが現れた。




そのオプティルトが纏わせている電気はバチバチと音を響かせている。


リズは思わず体をビクッと震わせた。




「汝随分と苛立っているようだな。妾が特別に悩みを聞いてやっても良いぞ?」


「お前が来たからさらに苛立ちが増したんだが?」




体にまとっている電気が先ほどよりも強い音を響かせた。


相当苛立っているらしい。




こんな相手と話し合うのは可能なのだろうか?


正直、リズは今すぐここから立ち去りたいと思った。




「静まれ、童等が怖がっているであろう。そもそも妾は汝と会うとは思ってなかった故びっくりしているのじゃ。」




「俺には関係ないだろう!」




怒りとも取れるような大きながなり声を出したと同時に、電気を纏わせているオプティルトがラタムに向かって電気を放った。




「此奴にはあまり会いたく無かったのじゃが、パーム!あれを使ってくれんか!」




ラタムは放たれた電気を避けながら、パームに話しかけた。



「え゛………少しはパムを休ませてくれパム!」




リズに抱きかかえられながら、パームは呪文を唱え始めた。


パームが呪文を唱えている間にも、ラタムに放たれる電気は止まらない。




しかし、ラタムが攻撃を避けた時、その先にはチェスがいた。




「チェス!」




リズは思わず叫んだ。


気が動転していた為、自分が声を出したと言うことも築かないほどに、その時のリズは冷静でなかった。




「え?」




チェスに向かってきた攻撃はチェスに当たる前に消えた。


そして、チェスの周りに古代の言葉らしきものが浮かび上がった。




それはチェスの全身を囲っていた。


チェスだけでなく、リズやソレイユ、レオの周りにもその古代語の囲いは浮かび上がった。




「なんだ…これ?」




チェスは自分に起こったことがよくわからず、目をパチクリさせた。


リズたち画面を食らっていると、パームが呪文を唱え終わった。




「風の力の源よ、我が問いに答えかの者にレヴェストの効果を与えよ!」




パームが何かの魔法を使うと、攻撃してきたオプティルトは落ち着き始めた。


最初こそは何かの力に必死に抵抗するようにもがいていたが、段々と大人しくなり、ついにはバタリと倒れてしまった。




「遅いぞ!危うく怪我するところじゃった。」


「パムが過労死する!」




パームとラタムはなんでもないように話し始めたが、リズは突然倒れたオプティルトのことが気になってしょうがなかった。




「あのオプティルト大丈夫かな?」




リズが不安そうな声でチェスたちに尋ねると




「小生にはよくわからんが、多分大丈夫だと思うぞ。」


「あぁ。レオの言う通り、大丈夫だよ。」




大丈夫だと言い切ったチェスに対してリズは不思議に思い




「なんで言い切れるの?」




と、チェスに聞いた。




「さっきパームが言っていたレヴェストというのはある魔法植物の名前なんだ。」


「え?魔法植物?」




リズがチェスの言ったことを繰り返すと、ソレイユが詳しく話してくれた。




「レヴェストっていうのは私たちで言うアロマみたいな物なの。もちろん気分は落ち着くんだけど、その効果の中に強い催眠効果が含まれてるの。」




そこまで説明されて、リズはチェスが大丈夫だと言った意味がわかった。


手をポンと叩いてリズが言った。




「つまりあのオプティルトはその強い催眠効果で寝ちゃったってことか!」


「そうそう!ちなみに言うと、レヴェストは害のある成分があまりないの、ただあまり気分が落ち込んだ時に使ってはいけないらしいわ。」




『あまりない』と言う言葉に、リズは少し引っかかったが、この世の中に完璧なものはないので多少はがいのある成分が含まれていてもおかしくないと、自分の中で納得した。




そんなこんなしている間に、時刻は黄昏時に差し掛かっていた。




「パームの意見は後で聞くわ!そろそろ世界に闇がかかる。今晩の食料も調達しないといけないからの。」


「絶対聞く気ないパムね……もういいパム。」




ラタムの表現方法は変わっているなと、リズは実感した。




ーーー




それぞれが協力し、今夜の食材を集めると、ラタムがスープを作ってくれた。


ラタムが魔法でだした薪にチェスが火をつけ、火を囲みながらリズたちは食事を取り始めた。




「このスープとっても美味しい!」


「それはブイヤベースと言うのじゃ。まぁ、本来の材料はなかったから代用品で作ったのじゃがな。」




どうやら拗ねていたパームが近くにあった川から魚を取ってきてくれたらしい。


リズたちが夕食を食べ終えると、ラタムが話しだした。




「汝らにはちと厳しいことを言うが、正直彼奴…アルフを説得するのは不可能に近い。」

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