第33話  情報集め



リズたちがラタムの場所を探して聞き込みをしていた一方、レオたちは戦線の状況やメリアたちの考えなどの情報を集めていた。




リズたちのように話を聞いてもらえてないのではないか?などと思うかもしれないが、なんとも都合のいいことに、情報を集められそうなイベントがあったのだ。




「近年の学会の研究では〜」




「おいレオ、このままじゃただの時間の無駄だぞ?」


「だが普通に声をかけても無視されるだけだ、それに比べればまだマシだろう?」




現在の天界での情報を若いメリアたちに伝えるためのイベントと書いてあったから来たものの、出てくる話は自分たちの欲している情報ではないものばかりだった。




こんなことをしていても時間の無駄、でも普通に聞いても無視される。


この調子じゃあどっちに転んでも意味がない。




「では近々本格的になると予想されている人間達との戦いについてだが…。」




「!おい聞いたか?」


「あぁ…どうやら時間の無駄にはならずに済みそうだ。」




失敗だったか…とチェスが思っていると、遂に自分たちが望んでいた情報を開示してくれた。


なるべく色々なことを話してほしいと期待をしながら、今から話される情報に耳を傾けた。




「この争いについては賛否両論だ。賛成派の意見としては『人間は元から傲慢で散々他の種族に非道を働いてきた。それに、まるで地球が自分たちだけのものとでも思っていたのだ。現に今、地球を独占しようとしている。滅ぼされても当然だ。』とのことだ。」




壇に立って話をしているメリアは、続けて不賛成派の意見を述べた。




「逆に不賛成派の意見はこうだ『人間は確かに傲慢で非道なものもいるけれど、一部の者達のために人類全員を滅ぼすのはおかしい。彼らだって過ちに気づけば改善の道を探し出すはずだ。戦争はせず、非道を働いたものたちだけを罰せれば良いのでは?』とのこと。」




「やっぱりメリアの中でも意見が分かれてるんだな。」


「小生の意見としては前者に似ているがな。」




「まぁ…わからないでもないけどさ…。」




チェスの中でレオの考えてることはだいたい想像がついた。


自分としても思うことはあるが、同じ人類だしなんとも言えないところもあるのだ。




「ちなみに我らメリアの女王の意見はどちらでもないそうだ。女王によれば『彼らが全員悪い者だとは言えないが、間違っていることを指摘する者がいないのも事実。出来るだけ殲滅するという選択はとりたくないものです。』女王は寛大な心を持ってして、人間にも慈悲を与えたいそうだ。」




『これにて本日の談話は終了』と、団に立っていたメリアが言うと、話を聞いていたメリア達から



<パチパチパチパチ>



と、拍手の跡が聞こえた。


しばらく拍手の音がして、その後メリア達はその場から散って行った。




「情報は得られたが…なんだかいい気分ではないな。」


「俺のメリアへの認識はちょっと間違っていたらしい…。」




一部の人を見ただけで決めつけるのは良くないと言うことが肌にしみたチェス。




話を聞いたことで、少なからず天界にも味方になってくれる人がいるかもしれないと言う希望が見えてきた。




もう少し情報を集めることにしたレオとチェス。


集合の時間までに一体どれくらいの情報が集まるのだろうか?


そして、リズとソレイユはラタムに会うことができたのだろうか?




ーーー




レオたちが情報をゲットした同時刻、リズとソレイユはラタムがいると思われしき場所に来ていた。




大きな湖が見える。


周りには比較的大きい木々がたくさんあった。




「ここがオダマキ岬ってところなのかな?」


「空気が澄んでて美味しいわ。休憩場所としてもピッタリね!」




「ソレイユ、私たちは休憩しに来たんじゃなくてラタムを探しに来たんだよ?」


「ごめんね。ついつい。」




本来の目的を忘れてはしゃいでいたソレイユに本来の目的を言うと、苦笑いをした後ラタムを探し始めた。




「リズ、あそこにいる人じゃない?ほら、髪の毛も赤色だし多分ラタムなんじゃないかしら。」




と思えば、探すまもなくすぐにラタムが見つかった。


声には出さなかったが、リズはびっくりしていた。




と言うのも、ラタムはすでにここからいなくなってると思っていたからだ。


念の為ここにも来てみようくらいの気持ちだったのだ。




ラタムに声をかけるため、リズたちはラタムの方まで歩いて行くと、ラタムの声と思われしき声が聞こえた。




「滑稽よのう。なんとも馬鹿らしい。」




何かを馬鹿にした、嘲笑しているような声色をだしている。


ラタムの目の前に広がっているものは湖の水だけのはず…。




とにかく話してみなければ何を馬鹿にしているのかもわからないため、ソレイユが声をかけた。




「すみません。ラタムさんですか?」


「あぁ。妾がラタムじゃ。妾に何か用か?」




「実はお願いがあってきたのですが…さっき何かを見て小馬鹿にしていましたけど…。」


「あぁ、湖の水から現世を見ていたのだ。汝らも覗いてみるか?」




ラタムに勧められ、リズとソレイユは湖を見た。


すると、湖の中に人間界の様子が映っているではないか!




一体どのようにして湖に移しているかはわからないが、大方魔法だろう。




湖の中では政府の偉い者たちが下のものに命令をして踏ん反り返っている。


なんともひどい光景だ。




こんなものが国の上に立っていると思うと気分が悪くなる。


リズとソレイユがそんなことを思っていると、ラタムが独り言とも取れる言葉を漏らし始めた。




「なんとも滑稽でひどい有様ではないか。上の者は苦労もせずに威張り、下の者はそれにより苦しんでいる。一体いつから現世は地獄と化したのか…。」




先ほどとは違い、悲しみを含んだ声色でラタムが語り出した。




一体ラタムは何を思ってこんなに悲しんでいるのだろうか。


果たしてラタムはリズたちに協力してくれるのだろうか。




リズたちが天界にいる頃、地上では深い闇が訪れようとしていた……

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