第32話  天界到着



「案外学園に着くまでには何もなかったな。」


「でもまだ気は抜けないわ。いつどこで何があるかわかったものじゃないもの。」




リズたちはすでに学園近くまで来ていた。


チェスの言う通り、ここに着くまでにはトラブルもなく、順調にことが進んでいた。



しかし、ソレイユの言う通り、油断は禁物だ。




「そろそろ学園内に入る、今まで以上に言葉や行動に気をつけろ。」




レオが行ったことを胸に刻みつつ、ついにリズたちは学園の敷地内に入った。



正直、オプティルトの姿といえど危険は多少ある。



一番いいのはポータルから出てきたオプティルトと勘違いされることなのだが、そんなことがしょっちゅう起こるわけがない。




「おいチェスト、ここから特別室までの生き方はわかるか?」


「あぁ。ついてこい。」




先頭がレオからチェスに変わり、チェスは特別室に向かって走り出した。




ーーー




一同はチェスについていき、特にアクシデントもなく無事にたどり着いた。



まぁ、アクシデント自体はなかったが、途中学園の先生方におかしなものでも見たかのような目はされたが…




「なんとかついたな。」


「一息してる暇はない。そろそろ粉の効果が切れるぞ。」




どうやら気づかないうちに時間がだいぶ経っていたようだ。


効果が切れた時に学園の人たちに見つかれば大騒ぎだ。




「急ごう!」




リズが声を出した。


それを合図に、4匹は天界へのポータルを探し始めた。




オプティルトたちの世界に繋がっているポータルよりも奥の方に天界へのポータルはあった。




「正に天界って感じのポータルだな。」


「多分これであってるだろう。他にポータルも見当たらないしな。」




チェスがポータルを見ながら言った。


レオも同感のようだ。




ポータルは透き通った金色をしており、どこか神々しい雰囲気を感じた。


天界へのポータルと言われたら疑うこともしなさそうなほど、天界のイメージに合っていた。




「パーム、これで合ってるの?」


「パム。合ってるパム。」




どうやら合っているようだ。




ちなみにオプティルトたちは毎回すぐそばにいるわけではない。


どこかに消えたかと思えば、呼べば出てきてくれる。




一体毎回どこから現れているのだろうか。


まぁ、それもオプティルトたちの使える魔法なのだろうが。




ポータルが天界のものだと確認すると、リズたちはポータルの中に入っていった。




ーーー




天界に着くと同時に、丁度粉の効果が切れた。




「ふぅ。どうやら間に合ったようだな。」


「ここが天界なのね。イメージ通りだわ。」




レオは一安心、ソレイユは自分の思い描いていた通りの天界に感動を覚えていた。




天界はキラキラと光っていて、あたり一面には雲らしきものがたくさんある。


建造物などは神話などで出てくるようなものだ。




人間界が夜だったのに、ここでは太陽が出ている。


天界は地上?と時間の流れが違うのだろうか?




「とにかくサイネリアの探し人と、ついでに何か情報を集めよう。」




チェスが提案し、二人一組で情報とサイネリアの探し人でもあり、自分たちに力を貸してくれるかもしれない人物、ラタムを探すことにした。




探すって言っても…。」


「そもそも相手にしてくれるかわからないもんね。」




ソレイユが苦笑いでそう言う。


チェスの話の通りだと、メリアたちは人間のことを嫌っている可能性がある。




嫌っていなかったとしても、そもそも話を聞いてくれるのかすらわからない状況だ。




「まぁ希望を持とう?誰かしらは話を聞いてくれるよ!」


「そうだね…、こんなところで諦めちゃダメだよね!」




どうにかやる気と元気を取り戻したリズとソレイユは、近くのメリアたちに尋ねてみることにした。




ーーー




「すみません、人を探しているんですが…。」


「悪いけど忙しいの。他を当たってくれる?」




一見用事もなさそうに、呑気に歩いていた金髪のメリアはどこかへ行ってしまった。


大方、人探しと聞いて『めんどくさい』などと思ったのだろう。




不親切なメリアだ。


もっとも、人間界でもよくあることなのだが…。




「またか〜。」


「うーん…一つも手がかりが掴めないね。」




思わずため息をついてしまいそうだ。


まぁ、無意識のうちについてしまっているのだが。




いっそポスターでも貼ってしまおうか?だが、ポスターを作るための紙もなければ印刷するためのお金も、はたまた魔法も持っていない。




「どうしよう?このままじゃ収穫ゼロだよ〜!」


「もう少し聞いてみようよ。次は答えてくれるかもしれないし。」




ソレイユはまだめげていないようで近くを通りかかった、これまた金髪のメリアに話しかけた。




「すみません。私たち人を探しているのですが…。」


「人?人って言っても…どんな特徴?」




「赤い髪をした女性なのですが…。」


「あぁ!それならオダマキ岬にいたよ。まぁ、今行ってもいるかどうかまではわからないがね。」




「ありがとうございます!」


「見つかるといいね。」




そのメリアはソレイユに優しい言葉をかけた後、自身の翼を使ってどこかへ飛んで行ってしまった。



「リズ!やっと場所がわかったよ!」


「ソレイユありがとう!」




「え?」




突然お礼を言われて、ソレイユは意味がわからなかった。


自分は普通に聞き込みをしていただけなのに…と、ソレイユが不思議に思っていると




「ソレイユがいなくて私一人だったらもう諦めてた。ソレイユのおかげでラタムの場所がわかったよ!」




リズはもう一度『ありがとう』とソレイユに言った。


ソレイユはやっと自分がお礼を言われた理由を知った。




「ううん。私一人だったらリズと同じように諦めてたかもしんない。リズが一緒にいてくれたからだよ!」




二人一緒に笑顔になった。


ラタムの居場所がわかったので、ソレイユはリズの手を引いて駆け出した。




少し気分が沈んでいたリズが、心からの笑顔を浮かべた。




果たして、メリアから聞いた場所にラタムはいるのだろうか?


そして、チェスとレオの方は順調に進んでいるのだろか?

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