神の使い

第30話  入国



「お母さんに会うくらいなら何も問題ないんじゃないかしら?」



ソレイユがチェスに聞いた。


それはリズも聞きたいことだった。



「確かにリズの親は政府に俺たちの安否をばらすことはないだろう。しかし仮にリズの親と接触したことが政府にバレればエレンさんに危害が及ぶ可能性があるんだよ。」



「よく知ってるんだね。」


「…まあな。」



オスマンがなんとなく口にしたことはチェスにとって地雷だったらしい。


少し気まずそうな顔になった。



リズも完璧に彼のことを知っているわけではないので、想像することしかできない。



チェスは政府関連で何かあったのだろうか?


チェスの両親は政府の重要役員についていたから特に何もないと思うけど…



ぐるぐると頭を回転させようとするが、やっぱり何も浮かばない。


彼が話してくれるまで待つほかないのだろうか?




「チェスの言う通りだ。小生たちは親にも頼れない状況、だからこそ髪の色を変えたりして国に戻るわけだろ?」



「国にはあまり戻りたくないな…。あそこは嫌な思い出ばかりだから。」


「でも戻らなければ今後の小生たちの安全も保証しきれない。」



「できることならサイネリアの森に居たかった…。」



やはり、オスマンは国に戻ることを嫌がった。



チェスは想定していたが、漫画とかであるような、全員連れて行くと言う展開にしようとは思わなかった。


そもそもしたところで意味がないし、精神不安定なじゃ歌いにさせてしまっては効率的な問題でもよくないし、友達としても行かせたくない。



まぁ、一連のことが終わったら彼は辛いことになるかもしれないが…



「行きたくないなら引き返した方がいい。精神にあまり負担をかけすぎるのはよくないと小生は思うぞ。」



レオはオスマンに引き返せと言った。


彼にとってはそれが一番だろう。



「そうだね。オスマンのためにも行かない方がいいかもしれないわ。」



その後、結局オスマンはサイネリアの森に行くことになった。


1度来た道を引き返し、驚いているサイネリアに事情を話したところ、彼もリズたちの考えには賛成だった。



不安定な状況ではとっさの判断で間違ったことをしてしまうかもしれないしね。



とのことだった。



オスマンはとても申し訳なさそうだったが、彼のせいではない。


人は誰しも恐怖という感情を持っている。それがたまたま母国に対してだっただけだ。



リズたち4人はまた先へ進んでいき、ついに国境のところまで来ていた。



旅をしていると門番にいい、種族を聞かれたので普通に人間だというと、あっさり通してくれた。




「案外すんなり通してくれたね。」


「おかしいな、普通もっと厳しいはずだ。」




あまりにあっさりと通されたため、チェスとレオは疑っていた。




「種族が人間だからあっさり通してくれたんじゃないかしら?」


「いや、オプティルトの中には人間に化けれる奴もいるらしいから、種族関係なく厳しいはずなんだ。」




「何か魔法でもかけてるんじゃないかな?」


「確かにそれなら筋も通る。返信魔法を解く魔法を門の前にかけていれば本当に人間かがわかるからな。」




あまり長く考えていても天界へのポータルを探す時間が短くなるだけなので、一旦このことについては置いておくことになった。




「とにかく学園へ入らなければどうしようもないが……。」




「そんなこと言ったって君たちは今行方不明扱いだぞ?それにオスマンだけいないってことも不自然じゃないか。普通にいれてもらうのは無理だぞ。」




「そしたらどうするの?」


「決まってるだろ、不法侵入だ。」



「ええ!?」


「静かにしろ。小生達は隠密行動を取らなきゃいけないんだぞ?」



「ご、ごめん…。」




隠密行動をすること自体は想像できたが、流石に学園に侵入するとは思っていなかったのだろう。


リズはとても驚いていた。




「でも学園の前は人通りが多い。隠密行動をしようにも昼間じゃ無理だ。どうする?レオ。」


「もちろん。夜に侵入する。」




「それじゃあ夜までどうするか。」


「各自行動でもいいが……絶対厄介ごとを起こすなよ、特にリズ。」




「なんで!?私そんな変な奴じゃないもん!」


「いや、厄介ごとを引きつけそうだから…。」




「流石にひどい…。」




まさかそのように思われていたとは思わなかったため、少し心にきたようだ。


とにかく夜までは各自行動になった。



リズは久しぶりに帰ってきた母国を回ることにした。



ーーー




商店が賑わっている場所に来たリズ。



ここら辺は変わってないなぁ〜などと思っていたら、ある話が聞こえてきた。




「そろそろ本格的に戦争が始まってきたわね。」


「そういえば聞いた?政府公認薬剤師のエレンさん、娘が行方不明になってから日に日に元気が無くなってるらしいわ。」



「まぁ無理もないわ。エレンさんはとても娘のことを大切にしていたから。」




母の話を聞いたリズは今すぐ家に帰って自分が無事ということを知らせたかったが、母に迷惑がかかるかもしれないと言われたことを思い出し、泣く泣く諦めた。




その頃、チェスはレオと一緒にレオの家へ戻っていた。




「これでいいのか?」


「あぁ。これがあれば多少侵入が楽になるだろう。」




「これがあるんだったら昼間に侵入でもいいんじゃないか?」


「念の為だ。夜の方が成功率を考えてもいいしな。」




「そうか。」




果たして二人は何をしようとしているのか?


何かを見つけたようだが、それは一体なんなのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る