第26話  仲直りをしよう!



サイネリアからのアドバイスを受けたリズは、現在幼馴染の姿を求めて自分が眠っていたところに来ていた。



しかし、誰かと話している間も時間は進んでしまうため、すでにみんなは森に散らばっていた。


サイネリアから今は近づかない方がいい場所の目印を教えてもらったのと、森の中にある果物は落ちているものならとっても良いと言われたため、それぞれが好きなことをしているのだろう。



「遅かった〜!」



『くぅぅ!!』と、悔しさを込めた唸り声に似たものを発したのち、悔やんでいても仕方ないので探そう!と、決意した。



しかしまだ胃に何も入れてないため腹の虫がなった。


まずは朝ごはんを食べてからだ。と、考えを改めて果物や食べられる木の実などを探すことにした。



ーーー



先ほどまでチェスとの仲直りのことを頭いっぱいに考えていたからか、早朝とは違った澄んだ空気を、リズは感じていた。




空気が美味しく、オルムの世界にいた時とは全く違った。


戦争が勃発する国があれば、ここのようにのどかで戦争とは微塵も感じさせられないような場所もあるのだな、とリズは思っていた。



森の中を歩いていると、熟れた果実や木の実が落ちていた。



果実はオリスグ、球体で白色。発見された当初は毒でも入ってるんじゃないかと心配されたことがあるらしい。


まあ確かに、自然界でここまで綺麗な白色の果実なんてなかなかないだろうし…



木の実はレグシュ、固い殻が付いているためこのままでは食べられないが、殻を向いてそのまま食べるもよし、スープにするとちょうどいい甘さのスープになるため人気だが、季節が合わないと店に売っていることは少ない。



レグシュはそのまま食べることにして、オリスグを少し多めに貰っていった。



オリスグはサイネリアにおすそ分けする予定だ。



レグシュとオリスグを食べ、サイネリアにおすそ分けをし終わった私はサイネリアオススメの場所に行ってみることにした。



ーーー



リズがサイネリアに勧めてもらったところに行くと、なんとチェスがいた。


チェスはリズを見ると何処かに行こうとしたが…



「待って!話がしたいの…。」



リズが真剣に言ったためだろうか、気まずそうな顔をしながらも渋々話を聞いてくれた。




サイネリアが勧めてくれたところは滝の裏にある小さな洞窟で、中は人が4、5人入れるくらいの広さだった。



二人はそこに入った。


しばらくはお互い無言になってしまった。


しかし、どういう風の吹き回しか知らないがチェスから話しかけてきたのだ。



「話ってなんだ?」



小さな声でチェスが訪ねてきた。


リズはチェスが話しかけてきてくれたことを合図に話し始めた。



「あなたと仲直りがしたい…私の気持ちをちゃんと話そうと思ったから…。」



チェスと同じように小さな声になってしまったが、リズは話し始めた。




「話?今更いうことなんてないだろ……。」



すっかり塞ぎ込んでしまった。


座り込んで俯いてしまっている。


滝の音をBGMに話は進むかと思われたが…やはりうまくいかない。




「違うよ!ちゃんとお互い話をしなきゃ伝わるものも伝わらない!」


「っ!そんな事言ったって!元はと言えばお前が話を聞かなかったことが原因だ!俺だって……。」




最初は勢いよく言葉を紡ぎ出したが、最後に行くにつれて紡いだ言葉はだんだん小さくなっていく。


座り込んで俯いたまま言っているが、目を見なくても感情が伝わってきそうなほどだ。




「俺だってちゃんと話をしたほうがいいことくらい知ってた!ちゃんと話し合おうともした!でも……お前は自分の考えに夢中になって俺の話を聞いちゃくれなかった!俺はお前と一緒に考えようと!」




俯いていた顔をバッとあげてこちらを見ながら爆発的に言葉を発した。


目は怒りと悲しみが混ざっているような、うっすらと涙の跡が見える。



どこにも行き場のない感情を胸一杯に溜め込んでいたのだろう。


リズはここまで溜め込んでいたとは思っていなかったのか、とても驚いていた。



チェスの顔を見た時に、リズは罪悪感がのしかかってきた。



チェスはハッとしたような素振りを見せた後、先ほどとは違って小さな声で呟いた。




「ごめん…ちょっと頭に熱がこもってるんだ。別に攻める気なんかなかったんだ…あはは…ちょっと頭を冷やしてくる。」




チェスが何かと理由を付けて、この場から去ろうとしたが



<パシ>



立ち上がろうとしたチェスの腕を咄嗟に掴み、リズは言葉をかけた。



「待って!逃げないでお願い!」



今チャンスを逃したらもう二度と話す機会がないかもしれないため、今離れられるのは困るのだ。



「わかったよ。」



悲しそうな表情だが、先ほどよりどこか明るい顔になったような気がする。


リズはそれに気づいていないようだ。



チェスは小さな洞窟に座り直した。



「私ね、オルムの国にいた時は思ったの、なんで私の考えをわかってくれないの!ってね。」



リズは続けて話した。




「でもソレイユと二人で話した時にソレイユがこう言ったの、全くおんなじ考えなんてある方が珍しいって。それで私考えたの、本当はチェスと一緒に考え合うべきだったんじゃないか、とか、なんであそこまで頑固になっちゃったんだろう?って。」




リズはソレイユの言葉を聞いて、自分の考えや行動を改めようと思うことができたが……


人によっては自分の考えが最適だと思い、絶対に考えを変えないなどという行動に走ってしまうこともあるのだ。




「だから私はソレイユと話をしてからずっと悩んでたの。自分が頑固だったせいでチェスとの関係が崩れてしまった。私はチェスが嫌いなわけじゃない、むしろチェスがいなくなったことでチェスの大切さを知った。だから私はあなたと仲直りがしたい!」




自分の考えをさらけ出して見せた。



リズが一通り話し終わった後、今度はチェスが口を開いた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る