第27話  共に食事

「俺も最初は今の”リズ”とおんなじように考ええていたんだ。」


「!」




チェスは喧嘩してからリズのことを”お前”と言っていたが、今は”リズ”と言っている。




「最初は熱が篭ったせいで思ってもないことを言ったりしたなって思ったんだ。でも頭の中に色々なことが思い浮かんで…一度は頭から追い払った。でも嫌なことが思い浮かんだんだ。」




考えないようにしようと思えば思うほど、逆にそのことを考えてしまう。


嫌なことを考えないようにしようとしたため、逆に嫌なことがポンポンと思い浮かんだ。




「こっちも頭がパンクしそうになって、話がヒートアップして!いつの間にか、リズと対立してた…。」


「うん。私もおんなじ感じ。頭の中がいっぱいになって口走った。」




二人ともおんなじようなことになっていたようだ。



言おうと思ったことも中にはあったかもしれないが、言いたくなかったことや言う筈じゃなかった言葉まで先走ってしまった。




「お互い焦りすぎたのかもな…。」


「焦りは禁物って言葉もあるもんね。」


「確かに。ことわざってのは役に立つもんなんだな。」




二人の雰囲気が柔らかくなり、自分の気持ちも吐き出せたようだった。



「ごめん。」



柔らかくなった雰囲気の中で急にでた言葉にリズが目をまんまるとさせチェスを見た。



「頑固になって、リズを避け続けてごめん。」



リズはその言葉を聞くと



「私もごめん。私も頑固になってすぐに謝れなくてごめん。」



二人とも相手に謝って、遅めの仲直りの完了だ。



それから二人はその場に留まって話し合った。




メリアたちの所に行ったらどうするか?と言うこともあれば、実はサイネリア?の探してるやつの話を聞いていなくてわからないんだ。など、それまでの間を埋めるように話に没頭した。




話し合いに区切りがついて、二人が洞窟から出た時に初めて今の時刻を知った。


気がつけば太陽は真上に来ていた。




「あれ?もうお昼!?話に没頭して気がつかなかった〜。」


「体内時計狂ったんじゃないのか?いつもなら腹の虫がなってるだろうに。」




クスクスと少し笑うチェス。



二人はいつもの調子に戻ってきていた。



「とにかく果実か木の実を探そうか。」


「魚でもつるか?」


「でも釣竿がないよ?」



釣竿がなければ魚を釣ることはできない。


今すぐ作るって言うこともできない。



「サイネリアにでも聞いてみるか?」


「えー。サイネリアは釣竿なんか持ってないと思うよ?」



そもそもサイネリはドラゴンだ。



道具を使わずに魚を取るだろう。熊みたいにバクッ!と。



「いや、別に釣竿じゃなくても魚を取る方法くらいあるだろ?現物かそれのための材料でもないかって聞きに行くんだよ。」



とっとこと歩いて行ってしまったチェスを追うようにして、リズは歩き出して行った。




サイネリアに一体何を聞くのかと考えていたリズだったが、チェスが聞いたのは網はないか?もしくは魚が取れそうなものはないか?だった。



リズは思った。


最悪オスマンにでも頼めばいいんじゃないか?と。


オスマンの属性は雷と氷なので、魚を見つけてそいつを凍らせれば簡単なのでは?と考えたが、



「あー。確かにできるかもだけど、魚が動き回るかもだし、そう簡単にはいかないだろ。」



と、却下されてしまった。



では雷を使えば!とも思ったが、それでは川にいるものたちすべてに感電してしまうので、流石にそれはダメだと思い、リズはチェスに任せることにした。



「網?流石にそんなものは持ってないよ。魚が取りたいなら魚たちの餌をまいて捕まえれば…流石に無理か。」



そんな芸当はできない。


第一リズは釣竿すら使ったことがないし、チェスだって素手で魚を取ることをしたことがないだろうししたくないだろう。



「うーん……。そうだ!オプティルト達に協力してもらおう。彼らなら魚の一匹や二匹は取れるだろうからね。ただ彼らも自分たちの分の食料を確保しなくてはいけないし、何かと交換するのが妥当じゃないか?」



それは仕方のないことだ。



自分たちの食料を分けてあげるわけだから何かと交換してもらわなければ自分たちの食べる分がなくなってしまう。



体の大きなオプティルトたちだったら尚更だろう。



「協力って言ったって…ここに住んでるオプティルトたちがどこにいるかもわからないし…。」


「僕が手伝ってあげようか?」



サイネリア自身から手伝うと言われるとは思っていなかったリズたちはびっくりした。



「僕もやることが無くて暇なんだ。その代わり、僕に木の実をくれないか?僕の体は大きいからね、木の実がある所に行くと木とかを倒してしまうんだ。」



大きな体では広い場所でしか身動きが取りにくい、森の中の恵みを壊してしまうだなんてあってはならないのだ。



森に住む生き物たちのためにも。



「木の実でいいのか?」


「あぁ、僕は木の実が大好物なんだ。でもなかなか手に入らないからね。お願いできるかな?」


「木の実くらいなら任せてよ!」



リズは自信満々で胸に手を当てた。



「じゃあよろしく頼むよ。僕はその間に魚を取っておくよ。」



そう言うとサイネリアは湖の中に入っていってしまった。



「よし、じゃあ取りに行くか。」


「オーケー。」



二人は木の実がある方に入っていき、落ちている木の実をなるべくたくさん拾い集めた。



ーーー



「まぁこんくらいでいいだろう。」



サイネリアに渡す木の実が集め終わり、サイネリアの所に戻って行った。



「あれ?もう取ってきてくれたのかい?」


「お腹ぺこぺこだよ〜。」


「バテるの早。」



その後木の実と魚を交換し、どう調理するかどうか考えた後、何故かサイネリアが持っている塩を貰い普通に焼いた。

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