逃げ出した先で

第16話  仲間割れ

第2章 Tagesanbruch (ターゲスアンブルフ)




[翌朝]



<コンコン>



「はーい。」



リズが返事をした。



「失礼します。」



使用人の人が入ってきた。



「陛下がお呼びです。


王の間までご案内いたします。」



使用人の人についていき、5人は昨日見たばかりの王の間についた。



<コンコン>



「陛下、お客様をお連れいたしました。」


「あぁ、ご苦労様。」



王がそう言うと、使用人は王の間を出て行った。



「さて、昨日はよく眠れたかな?さっそくで悪いんだが、最近は本当にひどくてね、いつ攻撃を仕掛けられるか分かったものじゃないんだよ。」



王は苦笑いでこう言った。




「私たちオルムから支援できるものは以下の四つだ。


一つ目、旅を続けるにあたって必要な資金。


二つ目、戦争になった時に君達を助けるための軍事力。


三つ目、教えれる限りの情報。


四つ目、私の方からフェード(妖怪)、精霊、ミスリル(亜人)のトップたちに交渉し、君達に協力してもらえるようにする。」




王が言ったことはこちらにとって感謝してもしきれないぐらい良いものだった。


支援をしてもらえるとは言っても、大したことはしてくれないだろうと思っていたチェスやレオはもっと驚いただろう。



「それは本当ですか!?」



興奮した様子でチェスが聞く。



「もちろん本当だとも。私が嘘をつく必要がないし、なんのメリットもない。」



王はにっこりと微笑みながら言った。



「やったわ!オスマン!これで国を止めれる!」



ソレイユが嬉しそうに言った。



「やっと希望が見えてきた!」



対するオスマンも嬉しそうにそう言った。



[5人は部屋に帰った]



4人は喜んでいたが…



「王様がしてくれることはとても嬉しいし、何も文句は無いんだが……


メリア(天使)はどうする?」



レオが言ったことにより、みんなはサッと顔色を変えた。



チェスは少し考えた後、こう言った。



「確かに……メリアたちを説得しないと元も子もないな…。」



ソレイユの情報によると人間はメリアにまで手を出したらしく、そのせいで9割のメリアたちは人間を敵とみなしているらしい。



「もし政府を止めることができたとしても…。


メリアたちが僕たちを滅ぼす可能性もある…と言うことですね?」



オスマンがそう言ったことにリズはびっくりした。



戦争が止まれば全種族が元の形に戻ると思っていたのだ。



「で、でもメリアたちもそんなことはしないんじゃ…。」



思わず、リズは何も考えずに言葉を発したが、



「いや、メリアたちならやる可能性は十分にある。」



そう言ったのはチェスだった。



「メリアたちの考え方には利己主義に似たようなものもある。


人間が自分たちにとって害悪だと判断したら、こちらを滅ぼすつもりで来るかもしれないんだ。」



チェスはその後も現実的にありうる可能性を挙げていった。




「もし滅ぼされないとしても、人間とメリアの関係はぎくしゃくするだろう。


最悪メリア側から何かしら命令されて、政府がそれを突っぱねて戦争につながる可能性もある。


第一命令される内容だってどんなのか分かったもんじゃ無いんだ。


メリアたちを説得するのは正直に言ってメリア可能性が高い。」




チェスはそう言った。


要するに、こちら側だけにメリットがある内容じゃ、メリアを仲間に入れることはできない可能性がほとんどということだ。



「じゃあどうするの?」



リズは不安げに聞いた。



「できるとしたら取引だろうな。


今回戦争の引き金になった主要人物をメリア側に引き渡す代わりにあれたちの味方になってもらうのが、1番現実的だろう。」



チェスはそう言った。



「引き渡した人はどうなるの?」



リズは先ほどよりも不安そうな声色で言った。



チェスはリズの質問に対し、こう答えた。



「良くて天界での取り調べやら、監視官がつくんじゃ無いか?


悪ければ……まぁ、わかるだろ?」



チェスはリズから目を背けこう言った。



リズは心の中でこう考えた。



『チェスの言ったことは正しいけど……なんとか戦争の引き金になった主要人物にも何もして欲しく無い…


でもそれは無理…なら………。』



「……分かった、チェスの言う通りにするよ。」



リズはこう答えた。



「あぁ、じゃあ取引内容は……。」


「ただし!」



リズが大声をあげた。


これにはチェスもびっくりした。



「ただし取引内容は私が考える!」



高らかにリズがそう言った。






「はぁ?」




リズが行ったことに対し、チェスがそうこぼした。




「だから私が決めるの!」




リズはそう返した。




「おいおい、冗談はよしてくれ。」




チェスが苦笑いで言った。




「冗談なんかじゃ無い!」




リズが大声で言った。




「分かった…とりあえずリズの考えた取引内容を話してくれ。」




チェスはリズにそう言った。




リズは自分の考えた取引内容を話し始めた。




「私が考えた取引内容は、戦争の引き金になった人たちをちゃんと捕まえる。でもその人たちは私たちの方で見ることにさせてもらうことにするの!」




リズはそう言った。



リズが説明し終わるとチェスがため息をついた。




「そんなのでメリアたちが納得すると思うか?やっぱりリズの考えは現実的じゃない…。」




チェスがそう言うと、リズはこう言った。




「やってみなきゃわかんないじゃん!」




リズがそう言うと、チェスはこう反撃した。




「やってみなきゃわかんない?仮にやったとしてもそれで失敗したら?全員を助けようとして助けられなくなるか、1部の人を犠牲にしてその他大勢を助けるかのどっちかしかできないんだ。いい加減現実を見ろ。」




チェスは冷たい目をしていた。




そもそも二人の性格は真反対だった。


リズは理想主義者で、チェスは現実主義者だった。




一般的に理想主義と現実主義は対極と言われている。


二人は目指すもの自体は同じでも、細部が全く違った。




「なんで!?チェスの親は政府の人でしょ!?助けたいと思わないの!?」


「血が繋がっているだけの他人だ!お前の理想を俺に押し付けんな!」




リズとチェスはとうとう衝突した。



オスマンとソレイユ、それからレオは驚いていた。



二人がここまで激しく言い合ってるのをみたことがなかったのだ。




「押し付けてない!だって普通自分の親を助けたいと思うでしょ!?」


「それが押し付けてるって言うんだよ!!」




リズとチェスの間に亀裂が入った。




「なんで分かってくれないの!?」




リズは一旦気持ちを落ち着けてこう言った。




「悪い人なんていないと思う、みんな自分のしてしまったことに気づけば…反省してくれるはずだよ。」




リズがそう言うと




「はぁ?やっぱりリズは理想主義だ、現実を見ずに自分の理想を追い求めてるだけだ!」




すかさずチェスが噛み付いた。




「っ!そう言うチェスは現実主義だ!いつも『現実的じゃない。』って言って無理だと決めつける!」




話はどんどんヒートアップしていった。




「二人ともやめなよ!」




ソレイユが仲裁に入ったが…




「ソレイユ!多分今の二人には聞こえていない…離れないとこっちにまで被害が及ぶ可能性がある!」




オスマンがソレイユにそう言い、ソレイユは仕方がなく二人から離れた。




「決めつけてなんかない!合理的な判断をしてるだけだ!」




チェスがそう言った。




「じゃあ私の合理的は全員を助けることだ!」




リズはそう言った。




「はぁ?お前合理的の意味ちゃんと分かってる?そんなのすら分かってない夢見がちの理想主義者さんには俺の考えに口を出さないでほしいね。」




チェスは鼻で笑った。




「………さい。」




リズが小声でそう言った。




「なんだよ…。」




チェスは冷たくそう返した。




「うるさい!チェスはそんなに冷たくない!そんなこと言うのはチェスじゃない!!」




リズが大声で言った。




「っ!なんも分かってないくせに分かったように言うな!!…チッ!もういい……。」




<ガチャ>




チェスは部屋から出ていった。




「リズ!落ち着け!」




レオがリズにそう言った。




「落ち着いてるよ…。」



「いや、落ち着いてなんかない。とりあえずチェストと仲直りをするんだ、今喧嘩してる暇はないんだぞ。」




と、その時




<<<ズババババババババ>>>




銃の乱射音が聞こえてきた。

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