第17話  開戦



急に聞こえてきた銃声に、4人はとても驚いた。



「なんだ!?」


「チェス!」



リズは焦った。



先ほどまで喧嘩していた相手だが、やはり幼馴染、無視することはできなかったのだ。



<ガチャ>



少し乱暴に扉が開いた。



「皆さま!早くこちらへ!」



使用人が慌てた様子で掛けてきた。


4人は使用人についていき、避難場所へ向かった。



[避難場所にて]



避難場所にはチェスもいた。


が、先ほどまで喧嘩をしていたので、リズは声をかけることができなかった。



「おい!そっちは大丈夫か!?」



なんとチェスの方からこちらに声をかけてきた。



「あぁ、使用人さんのおかげでなんとか…。」



レオがそう返した。



「さっきの銃声はなんなの?」



ソレイユが怯えた様子で言った。


チェスはこう返した。



「王様によると、こちらの世界に人間が攻撃を仕掛けてきたそうだ。」



リズは驚いた。


なぜなら、まるで先ほどのことがなかったかのようにチェスが振る舞い始めたからだ。



「攻撃!?」



レオは焦っていた。



「おぉ!ここにいたか!」



どこからかきた王がリズ達に話しかけてきた。



「人間達が攻撃を仕掛けてきたんだ!幸いなことに被害はまだないが……。」



王は焦りと不安が入り混じった様子で言葉を発した。



「せめてきた兵の数が尋常じゃない……力で押されてしまうかもしれない…。」



リズ達はナイフを胸元に突きつけられたかのような恐怖が込み上げてきた。


急に攻めてきた兵士たち、しかも数が尋常じゃないときたら誰だって怖いだろう。



「兵力の差が大きいなら……地形などを利用すればいいんじゃないかな?」



オスマンがそうこぼした。



「地形?………!確かにいいかもしれない!」



王は少しの間考えていたが、急に大声を出した。



「5人ともきてくれ!この国の未来のためにも君達の柔軟な考え方を貸して欲しい!!」



王はきっぱりと言った。


少しの間戸惑っていたリズ達だったが、国を守ることが自分たちのためでもあると考え、協力することを決意した。



ーーー



「私たちの国は兵力差で人間達に負けている…何かいい案はないか?」




王はつぶやくような声で言った。




「地形を利用すればいいと思います。」




オスマンがそう言った。




「例えば細い1本道を使う以外に侵略するすべがないとすれば必然的に敵はその道を通る。もしもそこに


巨大な竜巻があったとすれば敵は侵略することができない。」




要は的に侵略不可能と思わせればいいということだ。


侵略することができないならば敵は撤退する他なくなる。




「地形を利用するのは確かにいいな。」




レオが発言した。


地形を利用した戦術は昔から使われてきた方法で、敵の体力を奪ったり、効率的に殲滅することができる。




「それをするのと一緒に、こちらの戦力が敵より多いと誤解させるのもいいかもしれないね。」




ソレイユが悩みながら発した。




「何か使えるものはないんですか?」




チェスがそう言った。




「うーん…。」




王は少し考えるそぶりを見せた後、




「そうだ!確か地下の研究所に防衛設備があったはず!」




王は口走った。




「よし!研究員達に設備のことを聞こう!」



ーーー



[地下研究所]




地下研究所につくと研究員の一人が王に話しかけてきた。




「陛下!どういたしました?」


「あぁ、至急オスカー君を連れてきてくれ。」




王の言ったことを聞いた研究員はどこかへ行った。


しばらくすると、奥の方から王が呼んだと思われる人物が来た。




「陛下、どうしましたか?」




「あぁ、国が攻められてることは知っているな?」


「はい…。」




オスカーは辛そうな顔をして言った。




「確か万が一の時のための防衛設備があったはずだ、それを出して欲しい。」


「わかりました。ちょっと待ってください。」




オスカーはそう言うと、魔法を使い始めた。




「風の力の源よ、我が問いに答えよ、アネモス。」




オスカーがそう唱えると、あたり一帯に風が吹き始め、少し大きめな黒色の箱が出てきた。




黒色の箱?


防衛設備が欲しいのになんで箱を出したのかな……。




「あの…なんで箱を出したんですか?」




リズはそう聞いた。




「あぁ、これは魔法の力が込められてる箱でね。この中に防衛用のものが入っているんだ。」




オスカーは箱の中身を説明し始めた。




「陛下、この中に入っている防衛設備には、風、氷、闇、光の力がこめられたものが入っています。それぞれ遠隔操作用のボタンがあります。」



「あぁ、ありがとう。」




王はオスカーにお礼を言い、背中を向けて出口へ向かって行こうとしたが、




「陛下!………どうかこの国に平和を取り戻してください…。」




オスカーが王に期待を込めた眼差しで言った。




「!…必ず勝って見せる。」




王はオスカーの方を向き、笑顔でそう返した。



そして研究所を後にした。




ーーー




王が城に戻ると使用人のうちの一人が駆け寄ってきた。




「陛下!人間の将軍から伝言を預かってきました!」


「伝言の内容を教えてくれ。」




王がそう言うと、使用人は伝言を伝え始めた。




「『我々人間は全種族を支配すべき種族である。貴様たちに3日間の猶予をやろう。その間に我々の配下になるなら攻撃はしないと約束しよう。』とのことです。」




要は自分たちが1番強いので降伏しろとのことだ。


使用人は不安な声色で言葉を発した。




「陛下…降伏した方がよろしいのではないでしょうか?3日間のうちに降伏すれば誰も傷つくことはありません…。」




だが王はきっぱりと言った。




「いや、それは嘘だ。」




使用人は困惑した様子で、つぶやくような声で言った。




「え?でも攻撃しないって……。」



「君は軍事戦略を知っているかい?」



「へ?」




王はリズたちにもわからないことを言い始めた。




「戦争は特定の政治目的のために実施されているものなんだよ。彼らの目的が全種族を支配下に置くことならば、抵抗したり反乱する恐れのあるものたちは無くしておきたいはず。」




王は続けてこう言った。




「3日間以内に降伏したとしても、間違いなく私や国民の数人はただでは済まない、もしかすると城に勤めているものもただでは済まないかもしれない。」




使用人は青白い顔をしていた。


もし自分の言っていたことが現実になったらどれほど恐ろしいか分かっていなかったのだろう。




「そんなことにはなって欲しくない……今すぐ隊長たちを連れてきてくれ。」



「は、はい!」




使用人は王の言ったことを聞いて、まるで弾かれたかのように隊長たちを呼びに行った。




王はリズたちの方を向きこう言った。




「君達もきてくれ、これから防衛戦の作戦や準備をする。」




リズたちは王に向かって頷き、王について行った。




ーーー




[軍事会議室]




「全員集まったか?」




王は隊長たちに訪ねた。


隊長たちは全員頷いた。




「今日、我が国は宣戦布告をされた。」




王がそう言うと、隊長たちは驚いたり、冷静に何かを考えていたりした。




「オスカー博士から防衛設備を受け取ってきた。これを使って私たちの愛する国を守ろうではないか!」




隊長たちは王の演説に心が温まり始めた。




「国民のため!友のため!愛する家族のため!今、勇気を持ち、戦略を立て、国の脅威を追い払おうではないか!」




隊長たちは心が温まり、全員がやる気に満ち溢れた。


その日の会議では、オスカーからもらった防衛設備の配置を決め、設置や、戦略を立てた。

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