第14話  街と教会

手術開始から約2時間30分後


<ガチャ>


「!、レオは大丈夫ですか!?」


取り乱した様子で、チェスがシェリアという女性にレオのことを聞いた。


「あぁ、大丈夫だよ。」


その言葉を聞いた瞬間チェスは安心したようで、ホッとしていた。


「もしレオに何かあったらどうしようかと…。」


肩の力を抜いて、チェスがそう言った。


「ただしばらくは免疫力も弱ってるから絶対安静だね。

あと、今君たちの友達は寝てるからここを通る時は静かにしてあげなよ?」


シェリアはそう言った。

なんでも、魔力暴発症は一度直した後すぐに無茶をするとまたかかってしまうらしい。


「一応発病を止めるための薬は出しておくけど…作り方を知っていた方がいいかもしれないね…。」

「おいシェリア、どうせならこの街を案内してやったらどうだ?」

「そのつもりだよ、ちょうど薬の素材を貰いに行かないとだしね。

おいで、この街を案内するよ。」


私たち4人はシェリアさんについていった。

ラウロさんは用事があるらしく、 どこかへいってしまった。



「さて、改めて自己紹介しよう!あたしの名前はシェリア・リベルフリート、

職業は医者だ。」

「私はリズです!」

「俺はチェストミールと言います。」

「僕はオスマンと言います。」

「ソレイユです。」


「自己紹介も済んだところで、この街について説明しよう。」


この街はキャリオンと言うらしい。

オルムたちの中には神を信じているものもいるらしく、教会などもあるそう。


シェリアさんは神様を信じていないらしいが、シェリアさんは薬なども一から作っているので教会に行くこと自体は多いらしい。


と、シェリアさんの話を聞いているうちに、教会についた。


「ここが教会、ここの人たちはキリスト教のうちの一つ、カトリック教の信者だ。」


シェリアが説明しているとーーー


「あら?シェリアさんではないですか。」


見慣れない服を着た女が現れた。


「あぁ、エミリア枢機卿じゃないか。」

「敬称はいりません。今日は何のご用ですか?」


「聖水を切らしてしまってね。あと、この街にお客さんが来たようだから街の案内も兼ねてね。紹介するよ、左からソレイユ、オスマン、チェストミール、リズだ。」


シェリアは現れた女、エミリアと少しばかり会話をしていた。

そして話がリズたちのことになると、エミリアはリズたちの方を見て


「初めまして、私は教会に努めております。

エミリア・ラグラードと申します。」


エミリアは自己紹介とともに微笑んでいた。


「せっかくこの街へ来てくださったのです。教会の中を案内致しましょう。」


エミリアはそう言い、教会の中へリズたちを迎え入れた。



ーーー



「私たちはこの教会で神のためにお祈りを捧げています。」



エミリアは教会の中を歩きながら説明し始めた。



「私たちはキリスト教のうちの一つ、カトリック教を信仰しています。


カトリック教には教皇や枢機卿がいます。」



「すみませんエミリアさん、枢機卿とはどんなことをしている立場なのですか?」



ソレイユがエミリアに質問をした。



「あぁ、わからないのも無理はありません。


ではまず教皇から説明をしていきましょう。」



エミリアはそう言い薄青色の宝石がついたネックレスを出した。



「カトリックとはいえ私たち以外にもたくさんのカトリック教がいますので、


こうしてネックレスについている宝石によってどこの人かわかるようにしています。」



「その宝石はなんて名前なんですか?」



オスマンがそう聞いた。



「これはセレスタイト、または天青石と言います。」



セレスタイトという宝石には清浄・浄化・博愛という意味があるらしい。



「そして教皇というのは簡単に訳すと、キリストの代理者というものです。」


「キリストの代理者?なぜ代理者を立てるのですか?」



チェスがそう言った。



「すみません…それは私にもわかりません…。」



エミリアがそう言った。


この時リズは不思議に思った。『なぜ代理者を立てる理由を知らないのだろう?』



「あと枢機卿というのは教皇に次ぐ高位聖職者です。」



エミリアはその後も色々な質問に答えていた。



「エミリア、そろそろ聖水をもらってもいいかい?」


「あぁ、そうでしたね。ちょっと待っていてください。」



そう言い、エミリアは奥の方へ去って行った。



「宗教の中にも色々な宗派ってあるんだね。」



リズがそう言った。



「僕が知ってる中ではカトリック以外にもプロテスタントやネストリウス派、正教会、聖公会とかがあるね。」



オスマンが言うには正教会?と言うものにはギリシャ正教などもあるらしい。


元は同じ神様を崇拝しているけど、決まり事などが宗派によって違うらしい。



「お待たせしました。」



エミリアが聖水の入ったガラス瓶を持ってきた。


ガラス瓶を巾着袋のようなものに入れてシェリアに渡した。



「はい、いつもより少し多めに入れておきました。」


「あぁ、助かるよ。それじゃあね。」


「おきおつけて。」



リズたちはシェリアについて教会を去って行った。


シェリアの診療所に帰る最中、ソレイユがシェリアに聞いた。



「どうしてシェリアさんは神様を信じていないの?」


「ん?あぁ、なんで信じていないかね…。」



そう言った時のシェリアは少し悲しそうな目をしていた。



「今戦争が起きそうになっているだろう?エミリアが言うに、『神様は超えられない試練を与えない』だとか、『神様だって本当は苦しんでいる』だといいっていたけど…。」



シェリアはため息をついてこう言った。



「本当に苦しんでるならなんで戦争を止めないのだろうか?


あたしが神を信じていないのは、本当に存在していたとしても…」



この時のシェリアの目は怒りを含んだ色に見えた。


そして吐き捨てるかのようにこう言った。



「そいつはよっぽど最低で、本当は慈悲になんか満ちていない薄情なやつだと思っているからさ。」



シェリアが言い放った言葉は神を信じているものから非難されるような言葉だろう。



「なんでそう思うんだ?」



チェスが聞いた。



「さっきも言った通り戦争を止めないし、人や他の種族がいがみ合ってても何も止めない…。」



間をあけてこう言った。



「あたしは種族同士のいがみ合いのせいで両親を失ったんだ…もし神がそれを止めていたら今頃あたしは親孝行をしながら幸せに暮らしていただろうさ…。」



その後、診療所に帰った後



「リズたちのお友達の目が醒めるまではここにいな、明日は再発病を止めるための薬の作り方を教えるよ。」



と言ってくれ、部屋に案内してくれた。



「今後どうする?」



チェスが言った。



「とりあえずレオくんが起きるまではこの街に残るのがいいんじゃないかな。」


「レオがしばらく起きない可能性もあるぞ?」


「そしたらオルムの王様に僕たち4人で交渉に行きましょう。」



オスマンとチェスが話し合っているとソレイユが言った。



「早めに交渉をしたほうがいいと私は思うわ、そろそろ本当に開戦してしまうかもしれないし…。」



そうだ…こんなに平和そうにしているけど私たちの本来の目的は、回線を止めることなんだ…。



「仕方がない、明後日にはこの街を出るぞ。」



その晩、今後どうするかを話し合い、明後日に王都へ向かいオルムの王と交渉することにした。

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