第13話  オルムの世界

[リズとチェスのところにオスマンとソレイユが帰ってくる]


「!二人とも大丈夫だったか?」


チェスがオスマンとソレイユに尋ねる。


「えぇ、大丈夫。」

「今まで迷惑をかけてごめん。」


リズとチェス、それからレオは驚いた顔をしていた、なんせいつでも誰に対しても敬語を使っていたオスマンが敬語を使っていないのだから。


リズはなぜ敬語でないのかを聞いた。

どうやらオスマンは親友に裏切られたことから、人に一線を引くようになっていたらしい。


それは彼なりの処世術だった。



「よし、オスマンのこともわかったし、オルムたちの住処を目指そう。」


オスマンが敬語を使わなくなったことには驚いたけど、ソレイユとオスマンがとても嬉しそうな顔で笑っているから、きっと何か嬉しいことがあったんだろうな〜



リズは無意識に笑顔になっていた。


「?、リズ、そんな嬉しそうな顔してどうしたんだ?」

「ん?あぁ、オスマンとソレイユが楽しそうにしてるから、なんだかこっちまで楽しい気分?になってきちゃった!」

「はは、リズは昔から変わらないな。」


チェスは笑いながらそう言った。

そんなに変わってないのかな?と、不思議に思っていたリズであった。



しばらくして、エルフクイーンが言っていたオルムたちの住処?にきた。


「なんだこれ、誰もいないじゃないか。」

「僕たち、どこかで道を間違えたのかな?」

「そんなはずないんじゃないかしら?ここまで来るのに分かれ道なんてなかったし、

そこまで入り組んでいるところを通ってきたわけじゃないのよ?」


さっきからレオの様子が変だ…なんだか元気がないような…


「…まさかとは思うが……騙されたか?」

「嘘をつく必要性がないだろ、だいたい小生たちに嘘をついてあちら側になんのメリットがあるっていうんだ。」

「…。」


本当に何もないのかな?

フローラさんが嘘をつくようには見えないんだけど…



リズは辺りを見回した。

ふと、すぐ近くにある森らしきとこを見てみれば…なんと!そこにはポータルがあった!


「みんな見て!あそこにポータルがある!」


リズの言葉を聞いたみんなは、リズの言っていた方向にポータルがあるのを確認すると、ポータルの方へ近づきました。


「……本当にこれに入らないといけないの?」

「…僕、できれば外で待ってたいんですけど…。」


本当に嫌なのか、オスマンは少し敬語が出ていた。


「仕方ないだろう?だいたいここら辺で、オルムたちの住処らしきとこがあるとすればこのポータルの先ぐらいだ、……まぁ、俺も入りたくないけど…。」


チェスまでも嫌がっていた。

それもそのはず、ポータルは凶々しい色をした紫で、いかにもオルムたちのような悪魔の世界につながっていそうな雰囲気が醸し出されていた。


「覚悟決めるしかないか…。」


レオのが入ると同時にみんなが入っていく、考え事をして遅れたリズは、パームによってポータルの中に入って行った。


ポータルをくぐり抜けていた先では、想像していた様な地獄絵図…。



ではなく、あたり一面が闇に覆われて、露草色の大きな満月が、オルムたちの世界に光を灯していた。



?、ここがオルムたちの世界なのかな?

思っていたよりも明るくて、不気味な雰囲気はしないな〜



「みんな大丈夫?一応光があるけど、みんながいるかまでは見えないわ。」


ソレイユが言う


「点呼を取ったほうがいいかもしれない、全員がいるかの確認にもなるからね。」


オスマンがそう言った後、みんなは点呼を取り始めた。


「一人ずつ名前を言っていこう。」

「オスマン。」

「ソレイユ。」

「リズいるよ!」


……

チェスとレオの声が聞こえない。

そう思っていたが、途端


「レオに意識がないんだ!ありえないくらい体が冷たいんだ…きっとここまでの道のりで無茶しすぎたんだ!」


チェスが大声で叫び始めた。

ポータルに入る前までは元気そうだったが、どうやらポーカーフェイスで自分のことを悟られない様にしていた様だ。

そんな風に話をしていると、視界が良く見えるようになってきた。

5人ともすぐ近くにいたようだが…


「とりあえず誰かに助けを求めないと!」

「でもどうやって?」


パニック状態になっていた4人

するとそこに誰かが来た。


「君達どうしたんだい?」


「っ!助けてください!親友が急に倒れたんです!」


突然現れた人だったが、チェスが助けを求めた。


「……事情はわかった。ついておいで。」


そう男は言った。

4人は男について行った。

レオを負ぶっているチェスは、男についていく中、不安に押しつぶされそうな顔をしていた。



ーーー



男について行った先では、一つの街があった。



「ここだ、入れ。」



そう男が行った場所は、看板のようなものに、見慣れない文字と、赤十字のマークが書いてあった。


どうやらここは診療所のようだ。



「いらっしゃい。」



店主らしき人が挨拶をした。



「ん?、また怪我をしたのかい?ラウロ。」



この人はラウロっていう名前なんだ。




リズは目の前の男を見て、そう考えていた。



「いいや、今日は怪我をしていない。それよりこの子を見て欲しいんだ。」



男はレオのことを指差した。


女はレオを見て言った。



「…こりゃひどいね、体がとても冷たいし、何より普通の風邪じゃない…。」



そんなレオは倒れるまで平然を装っていただなんて…


きっと辛かったよね…




リズは気づいてあげられなかった自分にイラっときた。




具合が悪そうだと思った時に言っていればよかった!そしたら倒れなかったかもしれないのに…



「魔力暴発症だね…だけど大丈夫、オゾン療法を使えばまだ治る。」



魔力暴発症とは、本来ある魔力より余分に魔力が作られてしまい、発病すると、余分に作られた魔力が血管に入ってしまい、血管が正常に機能しないため、体が以上に冷たくなるのと同時に、魔力によって体の機能自体が正常に動かなくなり始める病気だ。



直す方法としては、体内の血液中にある赤血球の運搬能力を高め、専用の解毒剤を飲ませる。



最悪の場合オゾン療法では治らず、解毒剤も効かないため、過剰に作られた魔力を絶えず吸い出す装置をつけて生活しなければならなくなる。



「これから治療をするから一回部屋から出ておくれ。」



ラウロとリズたちは部屋から出た。



「あの…ラウロさん。」


「なんだ?」


「オゾン療法ってなんですか?」



オスマンがそう聞いた。


オゾン療法というものはリズたちの故郷では聞いたことがない言葉だった。



「あぁ、オゾン療法というのは…。」



ラウロさんは私たちにオゾン療法という治療法を教えてくれた。


なんでも一回血液を採血し、採血した血液に適切な量のオゾンを正確に投与する治療法らしい。


これをするだけでも脳と目に酸素がいきわたったり、体が温まったりするらしい。



魔力暴発症の他にも、動脈硬化疾患や運動器疾患、がんの治療にまで使われることがあるらしい。



「…レオは治るかな?」



とても怯えた様子でチェスが言った。



「大丈夫だ。シェリアの手にかかればこのくらいなんでもさいさ。」



みんなは不安と希望を持ち、レオの手術が成功するのを祈った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る