第10話  オプティルトの村

[人間世界から脱走して1週間]


「あれから1週間経ったけど、なんとかなるもんだね。」

「そうですね、最初は食料の問題をどうするか不安でしたが、道中でソレイユが持って来る予定だった果実が見つかってよかったですね。」



脱出した時は食べ物の問題はどうするのかとても不安だったけど、果実のタネが見つかってよかった!



「まさかソレイユの魔法の属性が草だとはな…植物や木の成長速度を速めて食料問題解決か。」

「ふふ、でも果実だけだったらいくら種を多めに持ってきていてもお腹が空いてしまうでしょ?幸いこの森には川があったから魚とかをとって行けばなんとかなるかなって思ってね。」



確かに、川があったから魚を釣って、果実と一緒に食べたからお腹がいっぱいになったからなぁ。

果実だけだったらお腹はいっぱいになってなかったかも。



「今日はもう遅い、今夜の見張りは小生とチェストで行うから君たちは寝ていてくれ。明日は朝早く出発するぞ。」

「ねぇレオ?」

「どうした?リズ。」



「後どれくらいでエルフの森に着くの?」

「明日の昼頃にはオプティルトの村に着く、エルフの森はそこから歩いてそうかからないからな。」

「わかった。」


これから先は大丈夫なんだろうか?お母さんは心配してないだろうか?


[深夜、レオとチェスト以外が寝静まってから]


「おいチェスト。」

「ん?」

「そろそろ話した方がいいんじゃないか?お前の親が「そんなことはどうでもいい!」……。」



「あいつらとはもう縁を切ったんだ。どうせあいつらにとって俺は自分を着飾るだけの道具さ…。」

「奴らを嫌っているのはわかっている。だがこの先旅をする仲間だ、隠し事は少ない方がいいと思うぞ。」

「あぁ…。」



チェストは昔何があったのか?

その時のチェストの目には光が宿っていなかった…



[早朝、出発してから数時間後]



「あれがオプティルトたちの村だ。門の前に着いてからは大人しくしていた方がいいな。」

「どうして?今の人間世界の状況を伝えたらきっと仲間になってくれると思うけど。」



「下手に刺激するとこっちがどうなるかわかったものじゃない。とにかく大人しくして、出された質問に答えるのがいいだろう。」



「おい!そこの5人止れ!」

「お前たちは人間だろう?何をしに来たか言え。嘘をついても無駄だからな、正直に言うんだぞ。」



とても警戒している…



「小生たちは人間世界から逃亡してきた者です。しかし、決して罪人などではなく、今上の役に付いている者たちの意見に賛同しかねた者です。」

「そうか…どうやら嘘をついているわけでは無いらしい。お前たちを村長のもとに連れて行く、付いて来い。」



なんとか信じてもらえたみたい…とりあえず村の中に入れるようで安心した…



[村長の家にて]



「村長、人間世界から逃げたと言う者たちを連れて来ました。」

「わかりました。貴方達は持ち場に戻って下さい。」

「「はっ!」」



門番のオプティルトたちは元の位置に帰っていった。



「さて、自己紹介を致しましょう。私はこの村の長である。ペガサスのグレイです。」

「私はリズです。」

「チェストミールと言います。」

「オスマンと申します。」

「ソレイユと言います。」

「レオと申します。」



それぞれが自己紹介をし終えた時



「あぁ。お久し振りですね。レオ君。」



どうやら村長のグレイはレオと知り合いだったらしい。



「あの時はお世話になりました。」


「知り合いか?」


「あぁ、君と出会う前にお世話になったんだ。久しぶりに会えて嬉しいです。ですが今日はそれを言いに来た訳では無いんです。」



レオは昔村長さんとあっていたのか…



「そうですか…久しぶりに会えて嬉しいのは私もなのですが、今の時期に来たのは運が悪かった…。」



?、なんで今の時期は運が悪いんだろう?



「失礼ですが、なぜ今の時期ではよく無いのですか?」


「実はここの村は最近人間達から宣戦布告を受けてね…ただでさえこの村の住民達は人間に良い印象を持っていないと言うのに…。」



まさか人間が協力関係にあるオプティルトにまで宣戦布告するなんて…


政府は本当に人間が一番偉いと思っているの?



「だから門の見張りの人たちはピリピリしてるの?」


「おいリズ!」


「あぁ、敬語でなくて結構ですよ、レオ君もチェスト君もそんなに固くならなくて良いのに。」



「まさか国がオプティルトと敵対するとは…。」


「僕たちは後に引けなくなった訳ですか…。」



今国に帰っても私たちは裏切り者みたいな立場になってしまっている。


もしも国に帰ったとしたら…。


考えたくもないような恐ろしいことが頭によぎる。



「小生達はエルフの森に行こうと考えているのですが。」


「エルフ達のところだったらまだ大丈夫な方かな。」



「今、他の種族と俺たち人間の関係はどのようになっているんですか?」


「ほとんどがひどい状況だよ、特にメリア(天使)との仲は最悪だね。メリア達はとても怒っているよ。」



メリアまでも怒らせてしまうなんて…今の人間には味方がいないも同然になってしまっているのかも…



「彼らは今の人間は本当に得手勝手だと言っていたね。」


「それはまずいですね。最悪人間は全種族を敵に回すかもしれません。」



「そのために私たちが国から出てきたんじゃない!」



私たちが国の間違えたことを正すんだ!そしたらみんなが幸せになれる!



「そうはいっても他の種族を説得しないとどうにもならないわ。」


「まずはエルフを説得すると良いと思います。その後………。」



[オプティルトの村から出た後]



「しかしエルフの後に説得するのが悪魔だとは…。」


『その後はオルム(悪魔)を説得するのが良いでしょう。彼らの集落はエルフの森からそう遠くはないですし、彼らは比較的に物分りが良く、柔軟な発想を持っていますからね。メリア達の説得は難しいでしょうね。』



人間視点から言えばオルムは忌み嫌われる存在。


中にはオルムが人間の生死を決めているに違いないという、まるでそれが真実かのように言われていた。



「とりあえず行くしかないな…、こっちだ!」



[エルフの森到着]



エルフの森は、まるでおとぎ話に出てくるかのような場所で、今は昼だというのに星空満開の空が広がっている。


綺麗な泉や、緑色の草原。


中心には巨大な大樹が堂々としてその存在を知らせていた。



「ここがエルフの森…なんだか神秘的だね。」


「エルフ達は自然を管理する妖精だからな。この世界の生命の源や、力の根源である世界樹を育てるのもエルフ達の役目らしい。」



「Sind Sie Kunde?(お客さんかな?)」


「エルフだ!…でもなんて言っているのかわからないや…。」



エルフの言葉は聞いたこともない言語で、5人には理解することができなかった。


それもそのはず、彼女らの中にエルフ学を洗濯しているものはいなかったのだから。



「ES ist menschlich!(人間だ!)」


「わかるようにしないとだね。かの者との対話を可能にせよ。ヒリッヒ。」


「ニンゲン!こっち、きて。」


「付いてってみましょう。」



[森中心部]



「女王さま!ニンゲン、連れてきた。」


「ありがとう、人間の皆さん。ようこそ、エルフの森へ、私はこの森のリーダー?っていうのが良いのかしら、まぁ、みんなからは女王と呼ばれています。」



そこには、とても美しい女性が立っていた。


白い肌に白銀の長い髪、身長は大きめだ。


エルフというより、まるでメリアのようにも見えた。

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