第8話  脱出計画と不穏な影

[翌日、学校にて]


<1年生のみなさんは速やかに体育館に集まってください。>


「なんだろう?」

「さあな。」

「また政府から誰か来たのでしょうか?」

「とりあえず行きましょ。」


なんだか嫌な予感がする


[体育館にて]


(ざわざわ)


「みなさん、静かにしてください。」

「今日みなさんに集まってもらったのは、政府から連絡がありまして、明日までに学科を選択してほしいそうです。」


明日までに選択?そんな急に選択させるなんて…


「急なことで驚いてると思いますが、政府も切羽詰まっているそうなんです。内容は以上です。」

「各自の教室に戻ってください。」


[教室にて]


脱出計画を立てている中


「ここはこうするといいんじゃないか?」

「何してるの?」


? 誰だろう?


「なんだっていいだろ?うっとおしいから何処かへ行ってくれないか?」

「何よ!そんなに冷たくあしらうことないじゃない!

何?自分がかっこいいからなんでも許されるとでも思ってるわけ?」


「そんなこと一言も言ってないじゃないですか。そんなこと言っているあなたがそう思ってるんじゃないですか?」

「はぁー?何よ!男のくせに髪も長いし、女っぽいあんたなんかに言われたくないわ!

だいたいなんなのよ?あんた女にでもなりたいわけ?だとしたらキモいわーww」


女はデタラメなことを言っている。

チェスやオスマンはとても気分を害しているようだ。


「っ!オスマンのことをそんな風に言わないで!」


その時、ソレイユが大声をあげた。

普段温厚で、あまり大きな声を上げないソレイユが大きな声で怒ったことで他の3人はびっくりしていた。

中でもオスマンは特に驚いていた。


「あなたに何がわかるの!?それに、あなたはじぶんの言ったことで人がどれだけ傷ついているかも知らないでしょ!

今すぐ謝ってよ!オスマンに謝って!」


3人は呆然とソレイユが怒っているところを見ていた。

ソレイユはオスマンに傷ついて欲しくないがために怒っていたのだ。


「チッ!」


女は去って行った。


「ソレイユ…。」

「あぁ、ごめんなさい。ちょっと頭に血が上ってね。」

「僕のことをそんなに気にかけてくれてありがとうございます。」

「!、当たり前でしょ!大切な親友なんだから!」


この時、オスマンとソレイユはお互いの友情を深めた。

リズとチェスはそれを微笑ましく見ていた。


[先ほどの騒動から時間が経ち]


「はい、昨日親から教えてもらいました。どうやら僕の属性は雷と氷の2つだそうです。」

「属性?」

「なんだ?リズは知らないのか?はぁ、世話が焼ける。」

「知らないものは知らないからしょうがない!」


だって知らないんだもん!


「逆にそうくるか。属性っていうのは1人につき、最低でも2属性はある。多くて5つくらいだな。

自分にあった属性の魔法しか、俺たちは使えないんだ。でも人間以外は一人につき最低でも3つはあるらしいぜ。」


属性って何種類ぐらいあるんだろう?


「ヘぇ〜、私は何属性なんだろう?」

「そういえば私もわからないわ。」

「親に見てもらうか占い師に見てもらうんだな。ちなみに俺の属性は毒と炎だった。」

「脱出までに属性も知っておかないとだね。」


お母さんに聞いてみようかな…


[放課後、チェスト、レオ家にて]


「おぉ、やっときたか!」

「どうした?レオ。」

「ちょうど最善の脱出ルートを見つけたところだ!」


「最短ルートよりかは道が長いが、君たちの学校の近くに森があるだろう?あそこは不気味な森だから、人が近寄らないんだ。ここからなら小生たちが見つかる心配はない。」


「決行の日はいつにする?」

「来年あたりはどう?」

「だめだ!それじゃあ戦争が始まっちまう!」


来年には戦争が始まってしまうのか…


「なら、今年の12月9日ならどう?ちょうどこの国の建国記念日だから政府も浮かれているだろうし、まさかこんな日に脱出する人がいるとは思わないと思うの。」

「そうですね…その日が最適かもしれないですね。」


[その頃、通る場所にて]


「〜♪」


脱出計画が進んでいる間、不穏な影が潜んでいることを、この時は誰も知らなかった。



ーーー



[脱出決行日を決めた日から3週間後、放課後にて]



「ソレイユ、なんだか最近元気がないけどどうしたの?」


「え!なんでもないよ、ちょっと疲れただけなの。」


「そうなんだ…そういえば今日は一緒に帰れる?」



「ごめんね、この後予定があるの。」


「そっか…じゃあまた今度ね!」


「えぇ。」



ソレイユどうしたんだろう…前までは一緒に帰ってたのに。



「ソレイユのやつなんか隠してるな。」


「うわ!いつの間にいたんだ…。」


「ソレイユは溜め込みやすい性格ですから…ちょっと尾行してみましょう。」


「「わかった…/あぁ。」」



溜め込みやすい…何か悩みでもあるのかな?



[ソレイユを見つけ、後をつけていった…そこでは]



「まじなんなの?偉そうにして、なーにが『謝って!』だ!


あんた達に謝る気なんかこれっぽっちもねえんだよ!」


「う、いたっ!」



途端に女は、ソレイユに向かって魔法を発した。


なんの魔法かは正確に分からないが、ソレイユはとても痛そうにしている。



「なんで…ソレイユが…。」


「しっかりしろ!オスマン!」



見るに耐えかねたのか、オスマンは女の前に出た。



「やめてください!」


「は?何w…あ!わかった!私に謝りに来たんでしょ?www許す気なんかありませーん!」



リズは流石にムカついていた。


幾ら何でも酷すぎたのだ。目の前の女は謝罪どころかこちらが下で、まるで自分が女王か何かだと勘違いしているかのようだった。



「おら!くらえ!」



途端に女はオスマンに攻撃してきた。



「っ!」



咄嗟のことにオスマンは反応することができず、攻撃を受けてしまった。



「あははwwよっわw」



女は汚らしい声を上げて笑っていた。


オスマンは我慢ならず反撃をした。



「氷の力の源よ!我が問いに答えよ!アイシクル!」



そこから女とオスマンは魔法を使って攻撃をしていた。


どうやら女はオスマンにとって不利な属性の魔法を使えるようで、オスマンは次第に傷ついて行った。


だがいくら傷ついても、ソレイユのためなのか、攻撃する手をやめなかった。



「っ!チェス!ソレイユの状態を見ないと!」


「あぁ!」



幸い、ソレイユは命に関わるほど深い傷を負ってはいなかったが…



「意識がない…まずいぞ。」



そう、ソレイユには意識がなく、命に関わらなくても障害を負ってしまっている可能性がゼロとは言えなかったのだ。



その時



「ぐぁー!!」



女は奇声を上げて倒れ、オスマンは目の前で起こったことに頭が追いついていなかった。



「え?」



リズは今起こったことに理解が追いついていなかった。



「おい!オスマン!流石にこれはまずいぞ…。これが見つかったら警察が動く、下手したらお前は戦争に出されるか処刑されちまうんだぞ!」



ハッとしたリズは、咄嗟にオスマンに声をかけた。



「オスマン!冷静になって!」


「あれ?…そんな…僕はこんなことする筈じゃ…なん…で?」



どうやら相手が本気で攻撃してきていたので、力加減を謝ったのだろう。


女に瀕死の重傷を与えていたようだ。


当然、オスマンは取り乱し、目の焦点が合っていなかった。



「オスマンはソレイユを傷つけられて相当頭にきたみたいだ…。」


「チェス、どうする?」


「こうなっちまったら12月まで待ってられない…今すぐレオも連れて脱出するしかない。」



状況は深刻だった。


もしこのことがバレたら、オスマンはよくて戦争行き、悪くて死刑という。


いつ死ぬかもわからない、そもそも生きて帰れるかすらわからない不安の中、国のために戦わなければいけない状況に立たされたのだ。



「わかった…。」


「ごめん…なさい…。」


「起こってしまったことは仕方ない。とりあえず行くぞ!」



[チェスト、レオ家にて]



「レオ!」


「どうしたんだ?」


「説明は後だ!付いてきてくれ!」



[学校近くの森にて]



「はぁ、はぁ。」


「急にどうしたんだ!?まだ決行日じゃないぞ!」


「緊急事態なんだ。早く逃げないとやばい状況になってな。実は…。」




そうだよね、急に連れ出されたら驚くもんね。



「そんなことがあったのか…。」


「すみません…僕が取り乱したばかりに…。」


「仕方ない、あいつは本気でかかって来たんだ、もしかするとこっちがやられていた可能性だってあるかもしれないんだ。」


「怒ってしまったことはしょうがないよ。この後どうする?」



「予定より早くなっっちまったが…とりあえずここから離れよう。」


「行くあてはあるの?」


「それに付いては小生が目星をつけておいた。エルフたちが治めている森に行くぞ。」



エルフ達の森?



「どうしてエルフのところなの?」


「エルフたちは中立の立場をとっている。行くとしたらここが一番安全なんだ。」



「だが、エルフの森はここから離れているんだぞ?俺やレオ、オスマンならともかく…リズやソレイユがいるんだぞ?」



そんなに遠い所にあるんだ…。



「そんなの百も承知だ!本来よりも道は長くなるが…見つかる心配が低いところを通ることにしたんだ。途中途中休憩しながら行こう。」



「おっけー。」


「あぁ。」


「…。」



急激に物語は展開し始め、これから先はどうなっていくのか、そんな不安の中5人は家を飛び出した。

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