第二章 雨気 2
「…村?」
助手席にいる柳井さんも、後部座席にいる川内と自分も少し疑問が湧いた。
「もしかしてすごい田舎?」
「ううん、電波も通ってるからネットにつなげるし、村といっても規模的には町と変わんないらしいよ。ただホテルがなくて宿を取るハメになったけど」
佐藤さんは安心しろと言わんばかりの笑顔を向ける。ただ自分は心霊スポットと聞いていたから些か拍子抜けしてしまった。
「それで、村と心霊スポットがどう関係あるんだよ?」
柳井さんは佐藤さん以外が疑問に思っていることを代表して聞く。
「村の近くに山があるんだけど、そこが心霊スポットらしいんだ」
佐藤さんは意気揚々と話しだした。
「夜になると山から呻き声や悲鳴が聞こえるんだって。助けてだとか、痛いだとか。その噂を聞いた人たちが山へ肝試しに行ったまま行方不明になるらしいだ」
「よく聞く怪談の内容と同じっすね」
川内が相槌を打つ。ここまで聞いた限りだとよくある怪談と大差はないが。
「ここまではね。重要なことはここからなんだ。あまりにも行方不明になる人が多くて警察が山や村一帯を捜索したんだけど、まったく痕跡とか見つからなかったんだって」
その話を聞いて三人とも硬直する。痕跡が見つからないとかそういうことはあるのか?
「警察も組織的な犯罪の可能性を考えて念入りに捜査したらしいんだけど何も出なかったらしい。今でも度々行方不明者がでるらしいけど、警察もお手上げ状態なんだって。心霊スポットとしてかなり箔のある場所だよ!」
佐藤さんは嬉しそうに語っているが、聞いているこちらは不安が増していく。
「それは少し期待できそうだな…」
「ですね…」
言葉とは裏腹に柳井さんと川内の顔は少し曇っている。だが恐いもの見たさもあるのか満更でもない様子だった。自分の中にも似た感情が芽生えていることに気付いていたので、何も言わなかった。
自分が欲しくてやまなかったものがもうすぐ目の前に現れる。その事実が自分の頭の中で氾濫し、これ以上何も考えることができなかった。
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