第一章 枯渇 2
待ち合わせ場所は川内の住んでる街の駅の改札口を出てすぐのコンビニエンスストアの前だ。なので電車に乗らなければならず、今の時間帯はまさに帰宅ラッシュ真っ只中で駅には人が溢れていた。仕事に疲れ帰路へつく人々の顔に生気はなく、今日という日が終わることの感慨など一切感じていない様子だった。そんな人々の中に混じりながら目的地へ向かうに電車に乗り込む。彼らと自分の違いがあるとすれば友人との再会に浮かれているその一点のみだろう。電車の中で揺られながらそんなことを考える。
電車を降り改札口を出て待ち合わせ場所の方向を見ると、川内が待っている姿を確認することができた。だか川内に加え、知らない顔が二つほどあった。離れた場所からでもわかるほど三人は仲良く談笑しているようだった。少し訝しみながら近づいて行くと、どうやら川内はこちらの存在に気付いたらしく手招きしてきた。
「久しぶり!元気してた?」
「まぁまぁかな…そちらは?」
再会の挨拶を手短にすませ気になっていたことを率直に聞く。
「二人とも大学の先輩で、髭を生やしている方が柳井さん。で、もう一人が佐藤さん」
はじめましてとお互いに挨拶をかわし軽い自己紹介をする。どうやら二人は川内のバイト先の先輩で年齢はひとつ上らしい。
「じゃあ、行こうか」
柳井さんの案内で居酒屋に入っていく。どうやら予約していたらしく、すぐに店員にテーブル席まで案内され注文も手早くすませる。今日が金曜日ということもあり店内は仕事終わりの人たちばかりで賑やかしかった。
「へぇー。隣の大学に通ってたんだ。てっきり同じ大学だと」
「えぇ。ですからたまに自分からこっちに出向いて優也と食事するんですよ」
「それは大変だなぁ」
注文が届くまで他愛もない会話を続ける。さきほどの軽い自己紹介に付け足す形で会話を切り盛りしていく。
「いつもは休日とかなんですけど、今日は突然優也から電話がかかってきて…」
「はは…それは災難だったな」
いつも唐突なんですよと軽く口を叩く。当の本人は何か言いたげな顔をするが返す言葉はないらしい。それを苦笑しながら見つめる二人。どうやら経験があるらしい。少し親近感が湧いた気がした。
話しているうちに飲み物や料理が運ばれ、本格的に飲み会が始まっていく。時間が経つにつれお酒の力も相まって会話は盛り上がっていく。会ったばかりのよそよそしさはなくなり、距離感も自然と近づいていった。
そこでふと自分が呼ばれた理由を思い出す。二人のこともあってすっかり頭から抜け落ちていた。
「そういえば話したいことって何だったの?」
川内の方を向くと本人は一瞬キョトンとしたが、すぐになぜそんなことを聞いたのか理解したらしい。
「実はね、来週の土曜日に先輩たちと出かけるんだ」
「出かけるって…どこに?」
「それはね…」
三人とも顔を見合わせ、不敵に笑った。そして川内はこう告げた。
「心霊スポットさ」
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