第83話 序列の戦い

セバスチャンはフューチャーシップを追いかけているライアン達に追いつき坂路コースに向かったと聞きまずは坂路コースに向かう。そして登り口に着くと坂路の頂上にフューチャーシップが仁王立ちしており人を小馬鹿にしているような態度が見えるのでセバスチャンはライアン達に「二人はここと下り道に向かう様にフューチャーシップには私が対応する」


二人は指示を受け動く。そしてセバスチャンは坂路を駆け上り程なくフューチャーシップの前に立つ。お互いに緊張感が漂っておりフューチャーシップは自分が一番強く偉いと思っており対してセバスチャンは馬に舐められる訳には行かないので怒らせない程度に強気の態度に出て距離を詰めている



フューチャーシップはセバスチャンに背を預けているのでまだ信頼関係を構築するまでには至っていないが第三厩舎のスタッフの中では信用している人間である。イルメス馬具商会に居る時も担当する厩務員を決めて作業を行っていた位なので気に入らない人間には馬体を触られたく無いらしく暴れたりして拒否したりしたそうだ。


セバスチャンは慎重に距離を縮めるが決して目を逸らさずにフューチャーシップだけを見ている。同時にフューチャーシップもセバスチャンの動きを観察しており逃げるのは直ぐに出来るが逃げずに警戒をしている。



少しずつ距離を縮めセバスチャンはフューチャーシップに手が届く位置まで行くとズボンのポケットからフルーツビスケットを取り出しフューチャーシップの鼻ずら

に差し伸べる。このビスケットはコックのジョエルに頼みすぐに口に入れられる物を作って貰ったモノで馬が食べても大丈夫なので差し出してみた


フューチャーシップは何度も匂いを嗅ぎ警戒するがセバスチャンが同じ物を食べていたので安全と思ったのかセバスチャンの手のひらにあるフルーツビスケットを食べた。小さな物なので直ぐに無くなるがおかわりをねだる訳でも無くそのまま不動でいるのでセバスチャンは手綱を掴みそしてフューチャーシップの鼻ずらを撫でると最初は神経質な表情でセバスチャンを睨んでいたが少しずつ警戒心が薄れて撫でられる事を許したようだった。



セバスチャンが乗ってきた馬は主人が緊急時に離れると厩舎に戻るので心配はないがフューチャーシップに乗るなら補助が無いと乗れないので手綱を引きながら坂路を下り始めた時、後ろからライアン達が現れて横に並ぶと「流石、セバスチャン様

よくフューチャーシップを捕まえる事が出来ましたね」


「その辺りは他のスタッフよりコミュニケーションを取っているからかな?」


「どうされますか?乗られるなら補助しますが・・・・・」


「いや今日は止めておこう。それにライアン、君にもフューチャーシップの気難しさと利口さを教えていたはずだけど何故、こんな事になったかな?」


「いくら王妃様の命令でもセバスチャン様が居ない時にフューチャーシップに跨ろうとしたのを止めないといけなかったと反省しています」


「王妃様に言われたらスタッフとしては命令に逆らえないから仕方無いけど今日みたいに落馬して打撲で済んだのは幸いだけどもし骨折や頭を打ったりしたら重大な問題になるから考えて行動して欲しい。この件は帰ってから緊急ミーティングを行い皆に十分に落とし込んで行くから」


「「畏まりましたセバスチャン様」」




「その後に王妃様にお説教が必要ですね・・・・・」




セバスチャンは二人を先に帰し、自分はフューチャーシップに話しかける様に独り言を言いながら第三厩舎に戻るのであった

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