第79話 白の衝撃と蒸気機関

今日は能力確認試験最終日。フューチャーシップと残り二頭の試験を行う予定でこれには陛下御一行が視察にお見えになる事が決定しており坂路コース周辺は通常よりも警備体制が厳重になっている



セバスチャンの業務は通常で午前中に巡回を終えるとアーサー近衛騎士団長の所へ報告と打ち合わせを行い午前中が終わる。軽い昼食を終えるとセバスチャンはライアンとミシェルを連れてイルメス馬具商会に向かう。今日はフューチャーシップのお披露目がメインの為なので手短にコースを走らせるのには人数が必要だった



昨日、屋敷に帰る前にイルメスに寄り変更内容の三頭一緒に連れて行く事を伝えている。イルメス馬具商会に着くと準備が出来ていたので乗ってきた馬を預けフューチャーシップにはセバスチャン、芦毛の雌馬にはミシェル、鹿毛の牡馬にはライアンが騎乗する


セバスチャンは二人に「今日はフューチャーシップを陛下達にお披露目するのが目的であるが時間を多く掛ける事が出来ないので三頭一緒に走る。坂路コースの幅は広いのでお互いの馬体が接触する事は無いと思うが気を付けて走らせる様に」


「「はいセバスチャン様」」


注意事項を伝えると早足で王城に戻る。第三厩舎の放牧場に着いたのでロワイヤルにアーサー近衛騎士団長の所に向かい準備が出来た事を報告するように指示して放牧場周りを念入りに周回してから坂路コース入口に向かう


坂路コースに着くと国王陛下御一行が準備された椅子に座り待っており陛下より

「王妃より散々聞かされており漸く見る事が出来たが確かに王者の風格を持った馬であるな。他の馬達もキングダムの馬と比べると少し華奢に見えるが早く走るに適した体形をしているのであろう。早速、走る姿を見せるのだ」


「「「畏まりました国王陛下」」」



陛下のお言葉が済むと早速、坂路コースに三頭で入る。しかしセバスチャンは敢えて二頭の後から走り出してフューチャーシップの凄さを見ている全員に確認して欲しいのであった。だがセバスチャンの思惑とは別にフューチャーシップの一足一足の踏み込みが二頭と別次元であり最初の急坂である五百M地点で二頭を抜かしてしまい鞭こそは入れなかったがセバスチャンは手綱をしごき頂上まで走り切らせた。流石に上り終えた時には息が少し上がっていたがものの十秒程で落ち着き陛下達の前に戻った時にはもう一度坂路コースを走りたそうな表情をしていた。二頭が戻って来たので三人共下馬して陛下の前に跪いて頭を下げる



「予想を超えた走りだったぞセバスチャン。他の二頭もキングダムの馬に比べたら早いのだろうが別の生き物かと思う位の走りだった。これで競馬が盛り上がりそうだな」と陛下が話された後に王妃様から「セバスチャン、私も想像以上の衝撃でしたわ。私、フューチャーシップに乗ってみたいけどいいかしら?」と言われるのでセバスチャンは「王妃様、フューチャーシップに跨りスタッフが手綱を引いた状態なら許可出来ますが単独で乗るのは駄目です。毎日馬に乗っている私達でもフューチャーシップに乗るのにはもっと騎乗技術が必要です。木馬で練習されモンキースタイルでも騎乗は出来る様になられましたがいきなりフューチャーシップに乗せる事は出来ません。もし乗りたいのでしたら毎日プリンセスリンに乗り放牧場周りと坂路コースを走らせて私が許可を出すまでは乗せる事は出来ません。もし落馬されたりしたら陛下や王女様達だけで無く国民が心配しますので王族の方の命令があっても断ります。当面は私が調教をしますが他の者も技術が付いてきたら乗せたいと思いますのでご了解ください王妃様」


「分かったわセバスチャン。では明日から早速、プリンセスリンで練習しますので宜しくね」


「・・・・・」


「済まんがセバスチャン頼んだぞ」


「畏まりました陛下」


リンからも色々なコメントを頂いたが明日からの王妃様の事で頭が一杯になっていた。お披露目会が終わり三人は騎乗してイルメス馬具商会に向かい走ろうとした時に

陛下から「セバスチャン、戻ってきたら私の所まで来るのだ」


「畏まりました陛下」


突然の呼び出しに???マークが並んだが急いで陛下の所に向おうと思いながらフューチャーシップを走らせイルメス馬具商会に戻る。クールダウンと足元のケアをしっかり行う様にお願いをして王城に戻り二人と別れたセバスチャンは陛下の待つ謁見の間に向かう


「セバスチャン・ルクレール男爵おみ~え~」と門番の騎士が号令の様に言うと扉が開き謁見の間に入る。陛下の前五M位手前で止まり片膝を付き頭を下げると。バルト宰相から面を上げたまえと声を掛けられる


人払いが行われ謁見の間には陛下と王妃様、バルト宰相の四人になり陛下が宣言する


「セバスチャンよ以前、お前がアイデアを出した蒸気機関だが遂に小型化の目途がたち自動馬車の製造に乗り出した。だが小型化とは言うが坂路コースに敷き詰めているウッドチップの製造機械より小さいと言うだけであれの四分の一の大きさまで小型化出来たのだ。この先に繋がるアイデアはないかセバスチャン」



「それでしたら荷物や人を沢山乗せる事が出来る自動馬車を作る方向で行くのがいいかと思います。その為に街と街の間に専用の道を作り出来た道を自動馬車に走らせる事が出来たらと思います。私が技術局に行き技術者と話し合いを行いますので結果が出次第、報告します」



「期待しておるぞセバスチャン」



「大体の大きさは見当つくから絵を書いたら技術局の人達なら理解してくれるだろう。蒸気機関車の仕組みを」



この話から五年後、蒸気機関車が走り出す事になる

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