第78話 意外な馬

昨夜、セバスチャンはダイジンと話し少し蟠りが解けたと思っている。朝のダイジンの表情を見ると元のダイジンに戻っている様に見えた。屋敷を出る前にターシャと話し、移動や暇を貰いたいと言ってきた使用人達とダイジンを見て欲しいとお願いをすると「もう少し堂々として居て下さいませセバスチャン様」と揶揄われるように送り出された



王城に付き第三厩舎に向かうとロワイヤルが張り切って作業を行っていた「おはようございますセバスチャン様。今日も空いた時間でお願いします」


「分かった。後で声を掛けるから」


セバスチャンは放牧作業は手伝うが引継ぎ作業等はロワイヤル達に任せて声を掛けられた時に対応するスタイルに変更した。他の厩舎でも同様に行う事をスーパァ、ションに伝えてからアーサーがいる近衛騎士団執務室に向かう



執務室に入るとアーサーから「表情が良くなったなセバスチャン」


「少し落ち着きました」と話し報告を行う。午後から四頭の能力確認試験を行う事を伝え退室する



イルメス馬具商会に辿り着くと商会の厩務員さんが何時でも走れる様に準備してくれており早速、黒鹿毛の牡馬に跨り早足で王城に向かう。放牧場周りを一周してから坂路コースを走らせると軽やかに走り素直で如何にも長距離に向いている感じがするので坂路調教が終了後、再度放牧場周りを一周させても息の入りも良くスタミナも豊富を確認出来た


イルメス馬具商会に戻り交替で青鹿毛の雌馬に乗り換える。先程の黒鹿毛よりひと回り小さいがスピードも切れ味も大きく上回る能力を感じるのは最初にフューチャーシップに乗った感触が残っているので比べて評価に繋がっている。放牧場周りを一周しているとしっかりした踏み込みを感じキックバックがフューチャーシップと引けを取らないと思いながら坂路コースに入る。最初は順調に走っていたがコースの半分を過ぎた頃からスピードが落ちて来てそのままのスピードで登りきる


「フューチャーシップと互角かと思ったけどスタミナが足りないな。1600Mなら互角の勝負になりそう」と頭にメモをしてコースの下に居るライアンに感想を伝えイルメス馬具商会に並足で戻る



「この馬の足元をしっかり冷やしてケアを行って下さい」


「了解です。セバスチャン様」


下馬して厩務員に手綱を渡してセバスチャンは次の馬、栗毛の雌馬に跨り三度目の王城に向かう。王城の側まで来たら小雨が降りだしたがそのまま試験を続行する



「ピッチ走法で走りおまけに蹄が小さいので道悪も苦にしないな。能力は平均タイプかな。少し雨宿りして戻るからライアンに声を掛けよう」


坂路から降りて来たセバスチャンは第三厩舎にライアンと戻り雨が止むまで雨宿りしながら執務室でレポートを書く。ロワイヤルから雨が止んだと言われたので栗毛に再度跨りイルメス馬具商会に戻る



イルメス馬具商会に戻ると厩務員さんが温かい飲み物を準備してくれておりお互いに感想を話しながら休憩をして最後の栗毛の牡馬に乗る


「のんびり屋さんなんだろうけど馬でなく牛の間違いではないか?」と思いながら王城に向かい走らせると率直な感想は兎に角スタミナの塊で何時までも走っていられるタイプ、ステイヤーだと思いながら坂路コースから降りてライアンにコメントを報告してイルメス馬具商会に戻る



「今日は意外な馬が発見出来て収穫ありだったね。厩務員さん今日もありがとうございました。明日が最終日なので宜しくお願い致します」



「「「ありがとうございましたセバスチャン様」」」




王城に戻ったセバスチャンは笑顔でレポートを書いていた


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