第53話 統括厩舎長の朝

セバスチャンは男爵になったが相変わらず朝早く王城に向かい最初は第三厩舎の放牧作業から一日が始まる


「セバスチャン様おはようございます。放牧作業は俺達がしますから他の仕事をされて下さい」「セバスチャン様は偉くなったのですから遅く出て来ても誰も文句は言わないですぜ」「統括厩舎長様らしく机の前でふんぞり返っていて下さい」等、皆は

早出をするセバスチャンに遠慮する訳でもなく悪態を付いて来たりする。それがセバスチャンにとっても気持ちが良かったりする


二十二頭全ての放牧が終わり飼い葉桶を洗い終わると第三厩舎のスタッフに「改めて皆、おはよう!まずは遅番組からの報告はありますか?」

「特にありません」

「他に報告する事がある人はいますか?」

「・・・・・」

「では厩舎はアイゼンを中心に作業をお願いします。後、今から第一、第二厩舎への巡回に行きますので急用の時は笛を鳴らして下さい。直ぐに駆けつけます」



セバスチャンは朝のミーティングが終えると自分の馬に乗りまずは第一厩舎に向かう。第一厩舎に着くと丁度放牧作業中だったのでスーパァ厩舎長に声を掛ける


「おはようスーパァ殿。第一厩舎は何か報告事項はありましたか?」


「セバスチャン・・・様おはようございます。スタッフには特にありませんが競馬に出た馬の一頭が右前足蹄底に炎症を起こし熱を持っていますので足を付くと痛がる素振りを見せます」


足を負傷している馬の馬房に行くと痛い右足を床に付けたり離したりと落ち着かない様子で足を触る為にスタッフに手綱を抑えてもらい動かない様にして触ると確かに熱を持っている事が確認出来た

「ザ石か・・・」


「スーパァ殿、この馬を洗い場に連れて行き右足を水で冷やすように。一時間位冷やして様子を見る様に。冷やしても問題があるようなら私に報告して下さい」


「畏まりました」


スーパァに指示を出した後、セバスチャンは第二厩舎に向かう。第一厩舎から第二厩舎までの距離は約三キロ程の距離があり歩くには遠いので移動には馬が必要である(因みに第三厩舎から第一厩舎までは約五キロ程あります)


第二厩舎に到着すると馬房の掃除を行っておりスタッフの動きを見ながら執務室に向かいドアをノックすると「入れ」と高圧的な声が聞こえ入室すると「セ・・・セバスチャン様、済みません。スタッフを叱ったので少しイライラしていました」


「ション殿、私なら良いがこれがアーサー様だったりすると反対に叱られるので注意してくれ。そのスタッフを叱った件だが何故、叱る必要があったのかな?」

「セバスチャン様、実は馬房掃除中に三叉を誤って人に向けた所を見たので注意を含めて叱りました。怪我をしてからでは遅いので」


「成程ですね分かりました。でもそのイライラを他の人に向けるのは違いますのでション殿も注意して下さい」


「はい。以後注意します」


執務室を退室したセバスチャンは「雑な仕事をするスタッフは見えなかったけどもしかして別の事でイライラしていたかも知れないな?今度ションが居ない時に来てスタッフに話しを聞いてみるか」


巡回が終わり第三厩舎に戻ったセバスチャンはアーサー様の執務室に向かう


近衛騎士団の執務室のドアをノックする「セバスチャンですよろしいでしょうか」


「どうぞ」


執務室に入るとアーサー様は相変わらず膨大な書類と格闘していた


「何か遭ったかいセバスチャン。少し暗い顔をしているけど」


セバスチャンはションの横柄な態度が気になる事を伝え日を改めてスタッフに話しを聞こうと思うと伝える


「ションか・・・・・今までお前と地位が一緒だったのに抜かれて焦っているのではないかな?あいつは自己顕示欲が強い方だからな。事によっては人事を考えないといけないかもな」


「確かにですね。第三厩舎の新しい厩舎長より先に選んでおくべきかも知れないですね。まずはうちで指導してから移動でもいいかと思うのですがどうでしょうアーサー様」


「確かにその方向で話しを進めた方がいいかも知れないね」


二人はリストアップされている騎士伯をチェックしながら今後の方針を話し合う


「アーサー様、今考えているのはスタッフ間の移動を行う予定にしています。第一、第二厩舎から数名のスタッフを第三厩舎に移動してもらい第三厩舎から二つの厩舎に二名ずつ派遣しようかと考えています。今日の巡回で感じましたが作業効率が悪いので人が多いのに作業が進まないという悪循環に陥っています」


「セバスチャン、その話は直ぐに進められるかな?」

「後、一週間は時間が欲しいです。新規に雇用したスタッフが独り立ちするまでに一週間程掛かります」


「分かった。それでは一週間後から進めて行くぞ」

「畏まりました」


「アーサー様それでは失礼いたします」


「ああ、これからは?」


「今から王妃様の所に新しい施設の建設許可を貰いに行きます」


「気をつけてな」


アーサーに見送られたセバスチャンは王妃宮に向かうのであった


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