第40話 王家主催晩餐会(前編)

よいよ晩餐会当日、ルクレール家全員が参加するのだが結婚、婚約をしていないのはエリータとセバスチャンの二人なので兄弟で入場するのが当然なのだがセバスチャンは憂鬱だった


「エリータにはまだ知らせていないのだが今回の晩餐会でエリータに婚約者

を紹介するので皆は頭に入れておいて欲しい」

父上からの別な意味での爆弾発言でエリータが晩餐会でキレなければ良いのだがと心配になる。

因みにエリータの婚約者はキングダム王国の宰相であるフレコール公爵家の長男リゾートでお互い王立学園の同級生で知った顔なので大丈夫だと思うがリゾートは次期宰相として学生中から王宮に出仕し常に努力する秀才タイプ、エリータは十二歳の社交界デビューから母上による社交界のマナーや駆け引き等を教え込まれ学園卒業と同時にルクレール家の社交担当としてご婦人方の相手を一挙に引き受ける事になりお互いにプレッシャーの中で生活しているので気が合うかも知れないが私がリゾートならエリータが婚約者は嫌だ(決して妹を貶すのでは無い)と思いながら父上の話しを思い出す



晩餐会がある為、厩舎業務も午前中で終了し馬達は以前から試したかった昼夜放牧を行う事にして水場を何時もの三倍に増やし対応する


屋敷は母上とエリータの着付けの為に時間がそれなりに掛かるので昼過ぎから支度を行っていた。男性陣は髪、髭等を整え身綺麗にするだけなので時間が掛からないが女性陣はドレスの為にコルセットを装着するのに最低一人は必要なの母上には

家令のターシャが担当、着付けを三人の母上専属メイド行う。エリータには今回の父上の帰宅時に家事使用人の人事があり大きな所ではハウスメイドだったリズがレディースメイドに昇格し同時にエリータ専属になる事が決定したので当然ながらリズが担当して着付けに二人のハウスメイドが付き行う


しかし母上とエリータにはコルセットは必要ない位の腰のくびれがありドレスを着るからと言ってコルセットが必要なのかは不明だが母上であるミカエルはエリータ、ダーリアに昔から「自分の旦那様の横に立つ者として飾りだけの美しさで無く

内面も飾る為の外見も鍛えなさい!醜く脂肪の付いた生き物にはならない様に常日頃から食べる物に気を付け身体を動かしていれば肌も綺麗になり化粧のノリも良くなりますから。分かりましたか!」

「「はい!!」」

この世界に新陳代謝なんて言葉は無いけど母上は自ら動く方で汗をかく事にも躊躇

が無いので適度に身体を動かす事で老廃物は出て肌が綺麗なのも納得出来る。動きやすい様に服装も創意工夫されスカートの様に見えるズボンを開発したり(現代で言うならワイドパンツ)今回、二人が着用するのマーメイドラインのドレスは今回

が初お披露目で布地もまだキングダム王国では少量しか生産されていない絹を使用し社交界で話題とブームになるのは間違いなさそうだ。これも今回の晩餐会で敵対勢力

であるコレーロス侯爵家に対するアピール、ルクレールの力の誇示だとセバスチャンは考える


「母上、このドレスは常日頃体調管理を行っていないと着れませんね。少しでもサボるとコルセットで腰は誤魔化せても腰より上、腰より下のラインが酷く不格好になります。ダーリアお姉様も私も母上から厳しく言われていた事がお茶会に行けばすぐに解ります。華の役目は見た目も大切ですね」

「そうよエリータ。貴族は常日頃から沢山の方々に見られています。領地の民が私を

見た時にふくよかな姿を見せたらどうでしょう?贅沢をしてたり食べて動かないと思われたりして汗水流して働く民は付いてこないでしょう。だからルクレールの女性は

常に旦那様を立てつつ自らも動き民と同じ目線で物を見る必要もあります。今シーズンの社交界が終わりましたらエリータも領地で勉強をしてもらいます」


「!?」


言葉こそ出さなかったがエリータは自分が結婚する事になると瞬時に悟る。姉の

ダーリアも結婚前に領地で勉強の後に嫁いでいるので遂に自分の番が来たと思う

「リゾートともお別れね・・・・・」

エリータはリゾートに対して好意を持っていた。同級生であるのもあったが学生の間から王宮に出仕してまつりごとを学び、努力の塊の様な人だと思い私なんか考えられない位のプレッシャーに晒されていると思うと何故か胸にチクチクするものを感じていた(本人に気持ちを伝えるのはかなり後の話しになる)


着付けが終了してミカエルとエリータはホールに向かいルイスとセバスチャンに感想を求める


「ミカエル、君は相変わらず私を拉致しに来た時と同じ美しさを保っているね。世の全ての男性を敵に回しても君を放したくない」

父ルイス歯の浮くようなセリフだが母上であるミカエルの若さの秘訣は一体何であるのか男性であるセバスチャンも知りたい位だ


「エリータ、今日の君はおとぎ話に出てくる人魚姫みたいだね。泡になって消えられたら困るのでくれぐれも隣の国の王子様とかに恋をしないでね」

「お兄様、そんなセリフで女性を口説いているのでしょ。私は騙されませんが今日の所は素直に嬉しく思います。確かに今日の晩餐会に隣の国の王子様

が来ますがどんな人物なのか知っていますので恋する事はないですよ!」


逆に言われたので苦笑いするしか無かったけど隣の国の王子様には気を付けていないとと思っているとターシャから「馬車の準備が出来ております」の

声が聞こえセバスチャン達は馬車に乗り込み王宮を目指す







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