第41話 王家主催晩餐会(中編)魑魅魍魎の巣
王宮に向かう馬車の中でセバスチャンにエリータは色々注意をしていた
「お兄様、まず会場に着いたら私のエスコートをしながらビアンカお姉様の所に
行き褒めてあげて下さいね。意味は言わなくても分かるはずですお兄様なら。その後、父上様達と王家の皆様にご挨拶に行ってから自分の席に着くのですよ。分かっていますか?」
マナーではないが一つ一つ指示してくる。そんなに頼りないかなセバスチャン?
「エリータ、冗談はそこまでにして父上達から言われている対応に十分気を付けて欲しい。晩餐会の会場で刃物を持ち出す事は無いけど言葉の攻撃が何時もの数倍は
仕掛けて来るのは明らかなのでコレーロス侯爵の派閥には注意してくれよ」
「お兄様心配し過ぎです。エリータが敵わないのは王妃様と母上、ビアンカ様の三人
だけです。あの三人は訓練と言う言葉の地獄に陥れ正気に戻るのに一か月掛かりましたからただの嫌味しか言えないご婦人方は怖くないです」
確かにあの三人に精神的な攻撃を受けたら簡単には立ち直れないのはよく分かる。小さい時に散々遊ばれた記憶がセバスチャンの中に残っていて若干トラウマになっているようだ
そんな話しをしていると王宮の門を潜り玄関前に馬車が到着し、先頭の馬車に乗る父上、母上が降りた後に後ろの馬車に乗るエリータとセバスチャンが降りる。先にセバスチャンが馬車から降りるとエリータに手を差し出しエスコートする
王宮に入ると護衛の騎士が入口の脇を固め周りを警戒しておりその中で貴族たちは派閥内で話していたり、またある貴族は社交界シーズン初日の今日に久し振りに会う他の貴族との挨拶をしたりとホール内に幾つもの輪が出来ていた
「ルイス様!」とルイスに声を掛けて来たのはミソラルの父、フリート・ハイクレア男爵でルイスの前に立つと右腕を胸に掲げ上半身を四十五度の角度に折り礼を行う
「久しいなフリートよ」
「公爵様もお変わりなく」
そこからは砕けて話し出し「フリート、公爵様とか余所行きの言葉を使うな!何時も通りでないと気持ち悪いわ」
「他人の目がありますからねルイス様。これ以上はこの場では譲れませんよ」
「「ハハハハハ」」
二人で大笑いしながら話しだしミカエル、エリータと私はビアンカ様とミソラル嬢
とあいさつ後話しをしていた
「あの二人はいつまで経っても子供のままですねビアンカ?」
「全くです。あの二人だから許されるだけで他の者があれに入って行けませんから仕方ないですお嬢様」
「ビアンカ、貴方こそ昔から変わらないでは無いですか私を幾つだと思っているの?孫もいるお祖母ちゃんですのよ。少しは労って欲しいわ」
「「母上達も父上達と全く変わらないですよ」」
とミソラルとエリータがハモッて言うとミカエルとビアンカは笑い出した
「そうね旦那様達の事を言えないわね」「そうですねミカエル様」
ルイスとフリートは共に学園卒業後、王国最強の騎馬騎士団に所属して敵国との闘いに身を置いていた。お互いの背中を預ける事が出来る間柄で爵位を気にせず派閥
を作る事もしない貴族である。貴族なので横の関係は分かっている為、最低限の付き合いは行い国の為、民の為に与えられた領地を繁栄させる事に力を注いでいる
フリートは騎士団での功績で男爵の位を叙爵された新興の貴族でありその為まだ領地は持たないが王都の管理責任者(都知事みたいな役割)であり一男爵としては
破格の待遇を受けている。それだけの知性も持ち合わせている(決して力だけの人間ではない)
暫く話をしていると晩餐会会場の扉が開き中から宰相のバルト公爵が現れ静寂が
訪れバルト公爵が話し出す「皆の者、今日は晩餐会に集まって頂き誠にありがとう
これから呼び出された者から入場になるので聞き間違いのないようにな」
短い挨拶の後、扉の左隅にバトラーらしき人物が立ち貴族の名前を読み始める
「ゲンサン男爵家よりグース・ゲンサン男爵及びポスト夫人おつきでございます!」
まずは男爵家から入場していき、そこから子爵、伯爵、侯爵、辺境伯、公爵の順番で入場になるのでルクレール家は最後の入場になるので暫くはソファーに座り待つ事になる。現在、キングダム王国には五十の貴族家がおりその内、領地を持つ貴族は
三十五家になり毎年監査があるので取分け不正や経営が上手く行かないと領地没収となるのでどこの貴族もそれなりに力を入れて経営を行っている
しかし真面目に経営をしている貴族もいれば私腹を肥やす貴族も中にはいる。その代表がコレーロス侯爵の派閥で民からギリギリのラインで税を搾取して国に納める
税を最低ラインで納め監査に来た宮廷役人に賄賂を渡して財を成していた。
以前からルイスは調べていて分かっていたが国が傾いたり民が反旗を起こすなどの
行動が見えなかったので王家には報告を行うが処分は注意までで済んでいたのだが
自分の身内に危害を加えられた事でルイスはコレーロスを貴族から追放、処分を計画して動き出していた。
今回の動きは大事になる為、派閥の貴族全てが対象になる見通しで貴族全体の1/4
にあたる十二の貴族が位を剥奪される計算になる。その為にルイスは極秘に動き自ら抱える密偵集団(漆黒)に徹底的な情報収集と証拠を集めさせて纏めた報告書を
坂路コースお披露目時に国王と宰相に提出して国の膿を出し切る算段を行っていた
無論情報を共有しているのはその三人だけであり最も信頼をしている妻のミカエルにも親友でもあるフリートにも伝えていない。それだけ慎重に事を起こす準備を行っていた
呼び出される男爵の最後、フリート・ハイクレア男爵が読み上げられるとフリートはルイスに向かってアイサインをしてビアンカ達と入場していく。子爵の順番になり
読み上げられだした時にルイスの前にコレーロス侯爵が現れた
「ルクレール公爵様、お久しぶりです。相変わらず領地の経営にご熱心でその知識を
少しでも凡庸である私目に享受して頂きたい」
「コレーロス殿も久しいな。其方が言うほど経営が上手くは要っておらんがな買いかぶり過ぎじゃ」
二人は笑って話をしているが目は全く笑っておらず恐怖すら感じる位だとセバスチャンは思っているとコレーロスの隣に問題の人物が現れた。そうメリア・コレーロス侯爵夫人、セバスチャンの女性関係で一番問題がある女性で強かさをもつ美女である
「ミカエル様昨年の舞踏会以来ですね。まぁ今日のお召し物はとても凄いですわ。流石貴族のファッションリーダーであるミカエル様ですわ。そのドレスに使われているのは絹ですか?光沢のある滑らかな美しさは宝石にも決して負けない位の価値がありましょう」
「メリア夫人お久しぶりですね。貴女も相変わらずの美貌で隣にいらっしゃる侯爵
様が心配するのでは」
こちらも笑ってはいるけど氷の微笑と言えばいいのか周りの空気を凍らせる位の迫力が伝わる。
「これはやはり
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