第27話-衝突-
キングさんと別れ、俺達はリフトのあるダミーの倉庫に到着した。そこに待ち受けていたのは、例の都市迷彩量産機が三機、シールドを持った部隊が数十人。
「そこをどいてくれないかい? 私達は人間と戦いたくはないんだ」
「そうはいかない! 反逆者を捉え、罰するのも我々の役目だ」
「反逆者? 裏切ったのはお前らだろうが!」
レンジが堪えきれず怒りを露わにする。
「はぁ……だから君達にエイクァの知識を与えるのは嫌だったんだ。私達が門外不出にしていた意味が君達に分かるかい?」
「ふん、技術を、独占すれば地位を守れるとでも考えていたんだろう?」
「不正解だね」
ジャックさんは言い終えた瞬間、俺達に目配せをし、脱兎の如く駆け、敵機の頭部に膝蹴りを放った。意図を汲んだ俺とレンジはすぐさま他の二機の首に武器を突き付ける。同時にハングが、シールド部隊の足元スレスレの地面を薙ぎ払うように、鎖を振るい牽制をおこなった。
「セルをも凌駕する力は、一歩間違えば人間を簡単に殺せる武器になり得る。分かったかな?」
「動かないで下さい。あなた達に危害を加えるのは本意じゃないんです」
「くっ、何が本意じゃない、だ。逃げ切れると思うなよ、反逆者」
「全く、君達と関わるのはこれっきりにしたいね。それじゃ、悪いけどおやすみの時間だ」
ジャックさんは、俺達が武器を突き付けていた二機の背部、電力機器のバックパックに素早く蹴りを放ち破壊した。電力の供給を失った二機はその場に倒れ込んだ。
「随分薄いね、君達の機体は。コスト削減も良いけど、これじゃセルにやられちゃうよ?」
「貴様ら……」
「殺しゃしねぇよ。兄貴みてぇな怪力でも無けりゃ動けねぇんだ。黙って寝てろよ」
「それで? あんた達はどうするの? 勝ち目なんて無いと思うんだけど」
ハングが鎖をクルクルと回しながらシールド部隊に問いかける。彼らは目に見えて戦意を失っている様子だった。ハングは敵の目前まで悠々と歩き、部隊員の一人からシールドを取り上げる。それを地面に放ると踏みつけ、粉々に粉砕した。
「命は惜しいでしょ?」
子供に語り掛けるような優しい物言いに、とうとう戦意を完全に失った部隊員は、我先にと敗走を始めた。
「根性ないっすねぇ」
「都市の人間なんてそんなもんよ」
「無駄な争いを避けられただけ良しとしましょう」
「そうだね。さて、リフトを降ろそうか」
俺達は倉庫に入り、ジャックさんが備え付けの端末を操作すると、リフトがゆっくりと動き出した。
-十分前、ゲート-
俺はジャック達の背中を見送り、奴に向き直った。奴はゆっくりと立ち上がる。
「この野郎ォォォ。よくもやりやがったなァァァ」
「遊ぶ気になったか、エテ公」
「舐めんなよォォォ。俺はなァァこの都市で一番強ぇんだァァ」
「井の中のって奴だな。仲間呼ぶなら今だぜ?」
「はっ! 部下なら今頃逃げたお前の仲間を畳んでるだろうよォォ」
「そうかよ。ならタイマンって訳だな?」
「違ぇなァァ! 蹂躙だァァ!!」
拳を構え、飛び込み気味に放たれた奴の右を、外側に避けながらボディに二発のカウンターを叩き込んだ。
「なんだ? んなもんかよ」
「効いてねぇよォォォ!!」
奴は左足を大きく踏み込み、大ぶりなラッシュを打ち始める。俺はその全てを躱していく。腰は入ってるが、遅ぇな。うんざりしてきたぜ。これならまだレンジの方がマシだな。
「死ねェェ!!」
俺は奴の渾身の右ストレートを左手で受け止めた。
「次は俺の番だな……歯食いしばれよ!」
奴の右拳をしっかり握り込み、俺は右拳でラッシュで叩き込む。片腕を引き込み、奴の懐に潜り込めば反撃の機会は伺えないだろう。最後に抱え込んだ奴の腕を強く引き、体勢を崩させる。その隙に俺は、奴の首筋に軽く飛び込みを駆け、体重を乗せた右拳を振り下ろした。直撃を受けた奴は勢いよく床に叩きつけられる。
「ぐ……野郎ォォ……ぶっ殺……す」
「てめぇ見てるとスラムの頃を思い出して嫌になるぜ……あっ」
のびちまいやがった。ゲート開けさせねぇといけねぇのに。
「オイ、起きろエテ公。ゲート開けやがれ。聞いてんのかオイ!」
参ったな、コイツは当分起きねぇぞ……。向こうはそろそろリフトに着く頃だろうな。
「はぁ……仕方ねぇ、こじ開けっか」
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