おつかい
宮内耀
第1話お兄ちゃん
がちゃん。母が帰ってきた。
「ただいまー。いい子にしてた?」
玄関の方から声がして、次に靴を床に並べている音が響いた。
雅人は自分の周囲を見渡した。遊びに夢中になっていたため、ミニカーや、レゴなどの様々なものが散乱していたことに気づかなかった。
「うん。いい子にしてた」
そう言うと雅人は急いで床に散らかした玩具をかき集め背中の後ろに隠そうとしたが、量も量なので背中の後ろに隠せるはずもなく、母はリビングに来てしまった。
「雅人。何してるの!結愛ちゃんこの辺通るんだからここで遊んじゃいけないって言ってるの。何度言ったらわかるの!」
母は頭に青筋を立て声を荒らげた。
「ごめんなさい」
と短く言うと雅人は泣き始め、母はため息をついた。
「雅人はもうお兄ちゃんなんだからしっかりしないと」
「うん」
雅人は肩を震わせ鼻声混じりの声で答える。
母は肩の力を抜き笑みを浮かべた。
「いい子ね。すぐ謝れて、偉いわ」
母は雅人の頭を優しく撫でる。そして雅人は泣き止むとすぐおもちゃの片付けを始め、母は台所に向かった。しばらく経ちおもちゃの片付けをが終わり暇になると、台所から聞こえる一定のリズムのトントントンという音がリビングまで聞こえてきた。そのリズムに合わせてまさとは踊っていた。すると突然音が消えこちらに向かってくる足音が聞こえた。
「雅人ー。味噌汁に入れる豆腐買うの忘れちゃったから家の近くにある豆腐屋で買ってきてちょうだい。」
雅人はおつかいが初めてだったので一瞬戸惑ったが。
「雅人はもうお兄ちゃんだからおつかいできるよね」
「うん!」
雅人は口角を上げて思いっきり頷いた。
「じゃあ、これお金ね。一応多めに持たせておくから、ほかのことには使わないように、分からなくなったらこの紙に道書いてあるから見てね」
雅人は首に財布をぶら下げさせられた。
「うん!」
雅人は喜々として玄関までドタバタと足音を立てる。靴を急いではき、乱暴にドアを開ける。
「行ってきます」
そう言うと雅人は一目散に目的地へ走った。雅人はよく母と豆腐屋に行っていたので場所はおぼえている。しばらく走っていると豆腐屋の前に着いた。豆腐屋のおじさんが雅人に気づいて、話しかけてきた。
「おや、珍しい。雅人今日はお母さんと一緒じゃないのかい」
「うん。今日はじめておつかい、たのまれたんだ。ぼくもうお兄ちゃんだからさ」
「そうかいそうかい。それは良かったな。それで豆腐何丁いるんだい」
雅人は少し考え、財布の中にメモが入っているのを思い出した。メモを取りだしメモに目をおとす。
「豆腐2丁ください」
雅人は元気よく答えた。
「あいよ。ほれ200円だ。」
雅人は財布からひょいっと1000円札を出しお釣りを貰った。
「毎度あり、もうすぐ暗くなるから早く帰りなよ」
「わかりました」
はじめてのおつかいが終わり気が楽になり、鼻歌を歌いながら家に帰っていると、前から行きたいと思っていた駄菓子屋があった。雅人は引き寄せられるように駄菓子屋に入っていった。駄菓子屋に入るとたくさんのお菓子があった。
「なんか買ったらお母さんにおこられちゃうしなー」
雅人はそう思いそのまま店から出ようとした時、あるものが目に入った。その商品をとり、レジに持って行った。
「これください」
雅人は手を伸ばし台に商品を乗っけた。雅人は商品を買うとすぐに店を出たと同時に走り始めた。
「ただいまー」
雅人は大きな声を出しリビングまで走った。
「おかえりなさい。ちゃんとおつかいできた?」
「うん。お母さんこれみて」
雅人はビニール袋からスタンプ型のお菓子を取りだした。
「雅人は余計な物買わないって約束したよね?」
「うん。でもぼく余計なもの買ってないよ」
「どういうこと?その手に持ってるものはなに?」
「ぼくお兄ちゃんだから結愛に買ってきたの」
「ん?」
「これ結愛いつもくわえてるから、ほかの種類も買ってきたの」
母は突然笑い始めた。
「ふふふ。雅人それはねお菓子よ。おしゃぶりとお菓子を間違えるなんてお父さんに似たのかしらね」
雅人はキョトンとして首を傾げていると母は頭を撫でてきた。
「豆腐は買ってきたの?」
「うん!だってお兄ちゃんだから!」
おつかい 宮内耀 @1706802409
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