031, 2-07 初めての友達
前回のあらすじ
叱られてや~んの
「そこでそいつは言ったのさ『だってばよ!』ってな」
「異世界斥候ちょーおもしれーな―」
俺はこの世界に来て初めて友達ができた。
俺の異世界話を面白がって聞いている子供。こいつは神様モドキという。
この世界に名前はない。俺が今いる大陸はルービアス大陸と呼ばれている。
そんなルービアス大陸には2千年ほど前まで神様が沢山いたそうだ。
沢山いたというのは信仰されていたというわけではなく、肉体を持ってそのへんをウロウロしていたらしい。
この世界を5千年前に見つけた神様達はちょっと遊んでみたくなった。
「あれ、こんなところに世界あるじゃん。ちょっと降りてみようぜ」
「いや、いきなり降りるのはまずいって。ちゃんと検査しないと。俺たちと似たような魂に、体と力をもたせた生物を何体か作ったからさ、千年ぐらい様子見しよう」
そんな感じで作られた実験生物が神様モドキ。一年ほどしか同じ場所にいられない、という制約だけ持たせて放たれたこの生物。千年特に変化もなく存在できたので神たちは遊びに来た。
まずダンジョンを作った。ダンジョンは神々の遊び場、アトラクション施設だという。
罠がたくさんあるダンジョンや強いモンスターがいるダンジョン、攻略に失敗したらモンスターが溢れてくるという仕組みにして陣取りゲームをしたらしい。
そして遊びに遊んで二千年、飽きた神たちが別の世界に行くときに、後片付けが面倒くさいと作ったのが人間。モンスターの間引き要員として・・・。
この世界の人間は進化論とかではなく、それこそ神がいきなり作り出したそうだ。
そんな遊び心あふれる神々は別の世界へ行ってしまった。さまざまな人間種と神様モドキを残して。
色々酷い。俺はエロシスターとの出会いがあるからビブリチッタ様への信仰心は揺らがないが、他の人が知ったら信仰心に陰りが出そうだな。
残された人間は協力しあって生きていたのだが、神様モドキは人間と価値観が違いすぎて様々な問題を起こしたらしい。
ちょっと体の中見せて、といきなり人の腹を裂いたりしたという。これは神様モドキが残虐な生物というわけではなく、肉体の死が人間の言う死だとは考えていなかったためだ。神様モドキが考える死は魂の死。魂が見えるそうだ。
流石に人間たちの様子が変なことに気づいてやめたそうだがもう手遅れ。この世界の人間は神様モドキには関わらないようにしている。
しかし話をしてみれば、神様モドキもずいぶんと人間の感覚を理解できるようになったみたいで、普通に会話が成立する。
俺は前世の話を気兼ねなく出来るし、この世界の気になったことも教えてもらえる。
神様モドキは異世界の話を聞けるしでWin-Winだ。俺は神様モドキに神モドキという名前をつけて友達になった。
ここは孤児院の裏庭。訓練が始まるまで神モドキとおしゃべりを楽しむ。
ちゃんと許可をもらっている。エロシスターはちょっと心配していたが、神父様は「神様モドキも神様達が作り出したのですから、友になれないことはないでしょう」という信仰心の厚いお言葉を頂いた。俺たち間引き要員らしいですよ。
「お、衛兵の野郎が来たな。今日はここまでだ」
そう言ってトコトコ歩いて帰っていく。どこに帰っているかは知らない。少しするとエロシスターとイケメン師匠が現れる。神モドキは神の力とやらで二人を把握して顔を合わせないように帰っているのだ。
そして剣術訓練、俺の剣術も随分と進歩した。最近はイケメン師匠と勝負がつかなくなってきた。イケメン師匠の動きが読めるようになったのだ。
別に俺が超能力スキルを獲得したとかではなく、イケメン師匠とずっと訓練していたから動きがわかるようになっただけだ。当然イケメン師匠も俺の動きは読めるので、なんだか演舞みたいになってきて、これ訓練の意味あるのかと思い始めている。
結局、この日も勝負はつかずに訓練は終わった。なにか手を考えないとな。金貨10枚の剣を奪うために。
そして俺は、様々な話を神モドキにする。目玉を父と呼ぶおかしな子供の話、ボールを7つ集めて願いを叶える話、巨大な人形に乗って空で戦う話、未来からやってきた青い狸の話には『そりゃちょっと甘やかしすぎだろ。ろくな大人にならねぇぜ』と神モドキも呆れていた。『俺もそう思う』と言って一緒にヘラヘラと笑った。
そんな楽しい時間も長くは続かない。神様モドキは同じ場所に一年しかいられない。そろそろ出会って一年、別れの時間がやってきた。
「なぁジョニー、もしよかったら、お前に神の力をやろうか?」
「神の力?」
「お前、よく言ってるだろ。俺強えぇ!してみてぇってさ。俺は神の力、神力を持ってる。別に使っても減るもんじゃねぇし、お前ならうまく使えると思うんだよ。空を裂き、大地を砕き、海を割る、そんな神の力が。見つめただけで女を魅了する魔眼も面白いかもな。ハーレムってのが作れるんじゃねぇの。なんならモンスターを従える能力とか、お前だけレベルってのを―――」
「そんな力いらないよ」
俺は断った。
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