糀谷 祐希(コウジヤ ユウキ)の場合⑨
「正直言うと、最初に声かけられた時、『いきなりなんだこの人』って思って、ちょっと引いてたんです。」
「そりゃそうだよね。逆なら俺も引くもん。」
「ですよね。しかも、顔とか、私どっちかというとシュッとした目元の涼しい感じの人が好みだから、真司さんどっちかというと丸顔でタレ目だから全然好みと違ったし。」
「は、はっきり言うね…。」
「あ、でも、話してると優しいし、紳士だし、男性として色々いいとこあるなぁ、て思って…キスも強引だったし…」
「あ、それは…」
「あっ、悪い意味じゃないんです。むしろ嬉しいって言うか…」
「嬉しい?」
「うん、女性ってあまり強引すぎるのは嫌だけど、決める時は多少強引でも、男性からリードしてほしいって言うか…その意味でよかったんです。」
「そんなもんなんだ。」
「人によって違うかも知れないけど、少なくとも私はそういうタイプだから、今までの恋愛でも、ちょっと強引なほうが、それについてくっていうか…」
「……。」
「だから、初エッチも、最初その気がなかったけど、何回も言われてるうちに受け入れちゃいました。」
「は、初エッチ?」
「はい、初エッチ。え?なんか言い方変ですか?」
「あ、いや、言い方はともかく…。」
「あと、三番目の彼氏の時は顔はタイプだったんですけど、割とシャイで、なかなかこちらの思う通りに動いてくれなくて、やっと一回エッチはしたんですけど、二回目がなかなかできなくて、結局私から誘ったりして、ちょっと恥ずかしかったです。」
「はぁ…。」
「でも、その点真司さんはうまくエスコートしてくれそうだから安心してます。」
「そ、そうなんだ。ありがとう…。」
翌日真司さんにメールをしたが、なかなか返事が来なかった。
昨日のデートでは、夕方になって真司さんが急な用事を思い出したとかで、結局夕食も一緒にせず、帰った。
おまけに次のデートの約束もせず別れたため、今朝からメールをしているのに昼を過ぎても返事が返ってこない。
LINEもしたが、既読にすらならない。
「どう思う?」
昼休み美希に相談した。
「昨日の出来事、話してみ」
言われたので待ち合わせのところから順を追って話した。
茶寮を出た辺りの話から美希の顔が曇りだした。
「はぁぁ」
話し終わると美希が大きなため息をついた。
「ユウキちゃん…あんた、バカ?」
「はあ?!なーにそれ!ちょっと失礼じゃない!」
かなり大声を発したため、定食屋の客全員がこちらを見た。
しかし、頭に血がのぼった私はお構いなく美希に食ってかかった。
「わかった!ちょっと落ち着こう!」
バカと言われて、落ち着こうって言われても落ち着くわけない。
「悪かった、言い過ぎた。いや、言い方が悪かった。」
手を合わせて美希が頭を下げる。
立ち上がっていた私も急に力が抜けて座り込んだ。
「お待ちどうさま」
注文していた唐揚げ定食が二つ来た。
「とりあえず食べよ。はい!いただきます!」
「いただき、ます。」
不本意だが、昼休みの時間は限られてるから、とりあえず食べた。
「あのさ、ユウキ、確か二つ前の彼氏の時も似たようなことあって私、話したよね?」
「えっ?二つ前…田尻さんの時?」
「そう、田尻さんの時。」
「なんだっけ?」
「あー、これだ、このちょー楽天というか、学ばない姿勢が悲劇を繰り返してるのよ。」
「なんだか…悲しい言われかた。」
本気でちょっと泣きそうになった。
「あのさ、あの時なんて言ったか覚えてる?」
「あんまり。」
美希は大きなため息を一つつくと、
「あの時、まだ、あまりお互いを知らない内に赤裸々な話はNGだよって言ったよね。」
「赤裸々?」
「そうよ。田尻さんの時も、まだ、キスもしてない時にセックスの話を持ち出して、その後連絡来なくなったよね。」
「そ、そうだっけ?」
「首、締めていい?」
「ごめんなさい。そうでした。でも、今回はキスした後だよ。」
「いやいや、そこじゃない。真っ昼間の桜並木の下で、いきなり下ネタかます?」
「別に下ネタじゃないし。」
「あのさ、あんた自分が思ってる以上にかわいいのよ。」
「?」
「しかも小動物系の無垢な感じで、男子は勝手に『きっとこのコは何も知らない、
「だから?」
「だから、そんな夢見る少女系の口からいきなりセックスの話とか出たら引くでしょ」
「そっかなぁ」
「そうなの!」
美希が言うには、私は何か普通の女子とは感覚が違うらしい。
私は彼(真司さん)に、将来のことを踏まえて身体の関係とかも大事だから、ちゃんと話しておいた方がいいと思ってたのだが、もっと言えば過去付き合った人にも何度目かのデートの時にはこう言う話はしていた。
美希曰く、それが振られる最大の要因だと言い切られた。
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