糀谷 祐希(コウジヤ ユウキ)の場合⑤

あっという間に予定の40分が過ぎて占い部屋を後にした。


しかし、タロットカードこそ使ったが、後半は占いというより、コンサルというか、プロデューサーというか、これからの生活においてやるべきことを導いてくれたという感じで、全く占いぽくなかった。


けれど、とりあえずは言われたことを守ろうと思い、次の朝からリンゴを食べ、化粧はファンデを薄めにチークを入れて、目元は涼しげなシャドウにして、今持っている中では、最も短いスカートを履いて、左手首に紫のシュシュを巻いて出かけた。


自分でも素直過ぎると思ったが、これで運が向かなきゃ諦めもつくし、何よりミリヤさんのことは根拠はないが信じられる気がした。


通勤途中、何となく人に、いや特に男性に見られてる気がした。


スカートが短いからか、いや、このスカートは何度も履いたことはある。


メイクが目立つ?


確かにいつもとは少し違うけど、こんな急激に変化するわけないし。


でも、確かに視線を感じる。


しかも道行く人、電車の中、おまけに会社のエレベーターの中まで、確実に見られている。


「おはよう!ユウキ、昨日占いどうだった?」


美希が早速聞いてきた。


「なんか…効力あるみたい。」


そう言って今朝の男子目線?の話をした。


すると美希は私から少し離れて、私のことを下から上に視線をゆっくり移動させた。


「確かに、ちょっといつもより、可愛い気がする。」

「何その言い方、いつも可愛くなくてすみません!」


「いやいや、まぁ、お世辞じゃなくてユウキは可愛い、ただその可愛さは所謂いわゆる小動物の可愛いさと同義だったんだけど…。」

「はい?なーにそれ!」


「まあ、最後まで聞け、今のユウキはなんかちょっと…色気を感じる。」

「マジ⁈色気、出てる?」


「出てる。」

「わーい!やっぱミリヤさん、あ、占師さんね。すごいわ!」


そして、昨日の占いの一部始終を話した。


「へぇ、コンサルね。確かにユウキがプロデュースされた感じ。」

「でしょ、なんかちょっと自分でもいつもと違うって感じはあったのよ。そしたら世間の反応まで違った。マジすごいよね!」


「うん、すごい、私もミリヤさんに会いたい。」


美希はそのあとすぐ予約を入れようと連絡したが、予約は3カ月後だったと嘆いてた。

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