糀谷 祐希(コウジヤ ユウキ)の場合④
彼女はそれほど化粧も濃くなく(いわゆる占師にありがちな魔女メークではなく)
威圧感もないが、その目力と優しい笑みにとても魅力を感じた。
「出たわ。」
再びタロットをいじっていた彼女が手を止めて言った。
「明日から、必ず紫の物を身に付けるか携帯してください。」
「紫のもの…ですか?」
いきなり占いらしくなってきた。
「そう、紫のもの、なんでもいいんだけど、例えば髪飾りでも、アクセサリーでも、場合によっては腕に紫のゴム紐を巻いててもいいのよ。」
「ゴム紐…ですか。」
ちょっといい加減と感じた。
「次に、朝はパン食?」
「あ、はい、時々ごはんも食べますが、ほとんどパン食です。」
「じゃあ、その時果物は食べる?」
「はい、時々」
「できたら、明日から必ずリンゴを食べて、一切れでもいいから。」
「リンゴ…ですか?」
「嫌い?」
「いえ、どちらでもないです。」
「じゃあ食べられるわね。食べてね。」
結構強引?
「あと、服装はスカート派?パンツ派?」
「私ご覧の通り背が低いので、割と丈の短いスカートを履くことが多いです。」
実はこれにはエピソードがある。
元々スカートを多用していたが、2年前くらいまでは、膝丈の今考えると中途半端な長さのスカートばかり履いていた。
足がそんなに細くはないし、当然長くもないから短いスカートは正直恥ずかしく、かと言ってパンツも長さが出せないためシュッとした感じにはならないから、パンツは一時流行ったバギーパンツ、裾広のフレアパンツも試したがしっくり来ず、ワイドパンツに至っては
そんな時、当時付き合っていた(期間6か月)彼氏に
「ユウキは短めのスカートのほうが似合うよ。」
と言われてその気になって思い切って短めのスカートを履いたところ、周りにも受けが良く、男女問わず褒めてくれた。
それ以来短めスカートを履くようになり、新しく買うものはほぼ短めスカートになった。
「うん、悪くはないわね。でも、あなたが思うほど足は太くないしむしろ綺麗だから、もっと短いスカートでも似合うわよ。」
結構自分では冒険してると思っていたが、さらに短めとなると、もうミニの領域だ。
「あなたの開運ポイントは、脚を出すことよ。」
「えっ?開運ポイントですか?」
「そっ、開運ポイントは脚!」
「えー自信無いです。」
「大丈夫!とにかく1週間でいいから今より少し短めのスカートを履いて、色はなるべくパステル調で、白でもいいわ。黒や茶色の濃い系はダメ。とにかく試してみて。」
ちょっと戸惑ったが、一応メモはした。
「最後はメイクね。」
「はい、どうすれば?」
「あなた色が白いからその素肌を生かしたほうがいいわ。」
「あ、でも、実はそばかすが多くて、結構ファンデは厚塗りしてます。」
「うん、わかる。そこは隠したいと思うけど、下地である程度隠して、パウダーファンデーションは肌に近い色を薄く塗って、頬にはチークも入れて。」
「チークですか…あまりしたことないですし私丸顔なんでオカメにならないですかね。」
「貴方みたいな肌の白さは赤めのチークで仕上げると少し上気したような雰囲気になって色気が増すのよ。」
色気?ほとんど皆無と自覚してる。
「あと、アイシャドウはあまり濃い色や赤っぽい色はやめて薄めにブルー系を入れた方がいいと思う。」
ブルー系なんて持ってない。
「貴方の目は小動物系でクリッとして決して小さくないから膨張系の色は腫れぼったい感じになるので、少し小さく見られるくらいの寒色系がいいのよ。ちょっといい?」
そういうとミリヤさんは奥にある鏡台の前に私を座らせ、メイクを始めた。
素のメイクがあるからあまり出来ないけど、と前置きした上で、手際よく肌と目元のメイクを仕上げた。
「どう?」
鏡の中の私は見違えると言ったら大袈裟だけど、確かに可愛く見えた。
「あなた、元がいいから。」
そう言ってミリヤさんはにっこりと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます