第5-19話 最近のは文字で情報伝えすぎ

 今やっているのはこのあたりのか。もうすぐゴールデンウィークになる。まさに映画産業はこのタイミングに合わせて多くの作品を世に出してくる。ずらりと並んだポスターはそれだけで圧巻だった。

 何をみようか。さっき考えてた恋愛モノでもいいんだが、櫻尾と相談して決めたものじゃないからな。もう何個か候補を考えておこう。恋愛モノを辞めるんならアクション系か。それともアニメ作品にするか。いっそのことホラーもありか。ホラーも定番の一つ。怖がる彼女が彼氏の腕を抱えて画面から目を背ける。映画が終わっても立てなくなっているのを支えながら二人して建物をあとにしていくんだ。……消えればいいのに。いやいや、こんな考えしていては余計モテなくなる。もっと寛容に。嫉妬しても憎んじゃいけない。一回なんで自分がポスターを見ているのか思い出せ。そう、櫻尾と何見るか考えるためだ。そこに立ち戻るんだ。

 んー、どれがいいのか。櫻尾のことは知ってきたつもりだけど、こういう時に何が好きなのかは全く知らないな。所詮まだ一ヶ月程度。分かることなんてたかが知れている。俺一人なら何見ようかな。知らない人より、知っている自分から考えよう。

 まず目の前のポスター。これも恋愛もの。見ない。隣の洋画はどうだ。このシリーズはテレビで何回か見たことがある。カーアクションが派手なんだよな。チャンスがあったら見てみるか。それでとなりの映画はと。

「っ。すみません」

 ポスターに集中していて周りを見ていなかった。そのせいで肩をぶつけてしまった。

「すみません。見ていなかっ」

「辰巳さんじゃないですか」

 肩をぶつけてしまったのは櫻尾だった。

「お前、トイレに行っていたんじゃないのか」

「行ってないですよ。ここにちょっと興味をそそられて」

 だから場内に入ってからすぐにいなくなったのか。一言行ってくれればいいのに。

「お前も何見るか考えているのか」

 櫻尾は首を横に振る。はて、なら何でここに来たのか

「なら次期の映画を」

 これにも櫻尾はノー。

「ならただ単に見てただけ?」

「それが一番近いかもですね。これを見ていたんです」

 指を指したのは夏に公開予定の作品だった。これは知っている。原作の小説は十年程前に出版している。いま話題の作品ではなく、過去の名作の発掘や当時は表に出てこなかったが、コンテンツの増加によって原作か枯渇したことにより一昔前の作品だ映像化されている。その中の一つがこれだ。

「今更感はあるよな」

 こういったものにはどうしても付きまとう意見の一つ、旬を過ぎていないかどうか。俺が十年後に今の嵌っている漫画のアニメ化が来た時に嬉しいだけでいられるのか。当時の熱量でいられるのか分からない。

「でも、嬉しいですよ。どれだけたっても」

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